"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

“為替介入は本当に必要なのか、円高は本当にNoなのか”

2011-08-07 23:38:38 | 日記

The Wall Street Journal の記事よりです。

“介入は今後も続ける=五十嵐財務副大臣”2011年 8月 7日  11:20 JST

【東京】五十嵐文彦財務副大臣は7日、テレビ・インタビューで、日本による外為市場での円売り・ドル買い介入はまだ終わっていない、市場にかく乱的動きがあれば日本の通貨当局は再び介入する、と述べた。
 また先進7カ国(G7)の政府関係者は常に連絡を取り合っており、財務相・中央銀行総裁の電話会議を開催する方向で調整を進めているが、まだ何も決まっていないと述べた。
(ダウ・ジョーンズ)

しかし、その後に、スペイン、イタリア問題、米国の格下げ問題等の話が出て、先週末にかけて円はじりじりと高くなっています。

口先介入の意味もあるのでしょう。五十嵐さんは、ファイティングポーズを崩しません。

 

為替介入をどんどん続けることが本当に日本の国益になっているのかどうか、それについて、私は疑問を持っています。

以下3点挙げさせて頂きます。

 

1点目は、損益の問題です。

日銀の為替介入によって、2007年からの4年間だけで、なんと約50兆円近い為替損失が出ていると言われています。

国民が汗水たらして利益を積み上げようとしている中で、政府日銀のお金が、どんどん目減りしているのです。

4年間だけで50兆円ですから、1ドル360円だったことを考えると一体いくらの損失が出ているのでしょうか。

しかも、為替介入によって得たドルで、日銀は米国債を買っているのです。

その米国債は、格下げとなり、債権価格の下げ、そしてデフォルトリスクも出て来ています。

日本は輸出国だと言われていますが、GDPにおける輸出依存度は、実は20%しかありません。

実際には、海外から原材料を買ったり、現地で調達して、日本で消費する内需大国なのです。

輸出企業を助けるために何十兆もの損を出すことが本当に国益になっているのかという問題です。

 

2点目は、インフレとの関係です。

今、日本はデフレです。

エネルギーや原材料の価格自体は世界的に上昇しているのに、日本全体ではいまだにデフレになっているのは、企業の自助努力のお蔭ということもありますが、それ以上に円高によって輸入物価が抑えられていることが大きいのです。

 海外旅行のパック旅行の値段が魅力的になっていますが、それも円高のお蔭です。

 

私は、今最も日本が懸念すべきはインフレだと思います。

インフレになると、その上昇を抑えようとするため、金利を上げざるをえなくなります。

今、日本の10年国債の利回りは1%。

もしその金利が4%上がって5%になると、政府債務の残高が1000兆円の場合、それだけで50兆円の負担となります。

今、日本の税収は40兆円しかありません。

歳出100兆円にバランスしないどころか、金利さえも払えなくなるという計算になります。

ん?それではデフォルト?預金封鎖?という話にもなる可能性が出て来ます。

私は、今は、円高でいいのだと思っています。

円高傾向が、円安に転じる時、その時が、日本経済の転換点となるでしょう。

今、米国が、よからぬこと、すなわち、為替を20%位、ある日突然勝手に切り下げてしまうのではないかという噂が出ていますが、そうした人為的な行動は問題外ですが、自然な円高であればそれでいいのだと思います。

 

3点目です。

http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Foreign-Currency-Markets/node_285112

これもThe Wall Street Journal の記事です。タイトルは、“誰もが望まぬ通貨上昇で世界経済に不安”

この中に、「通貨価値引き下げ競争が続いている」とあります。また、

“米国、英国、それに日本といった主要先進国は、内需が弱いため、自国通貨の下落で輸出を拡大させようとしている。カリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン経済学教授は「経済力が弱まった国は当然、輸出を増やそうとする。輸出競争力を高める一つの方法が、より競争力のある為替レートだ」と指摘した。”

ともあります。

日本の円は、米国のドルや英国のポンドとは全く状況が違います。

円はずっと上昇して来ました。

ドルとポンドはずっと下げて来ました。

そこで日銀がやむなく円高を抑えようとドル買い介入していることについて、ドル、ポンドと同じように自国通貨の下落で輸出を拡大させようとしているという認識は、明らかに間違いであり、と同時に海外にはそうした認識しかないと言うことを、私たちも考えた方がいいのだと思います

すなわち、日本は、もっと自国の立場を主張すべきだと思います。

そして、損失を膨らませながら、ドルや米国債を大事に持っている必要はないのだと思います。

復興資金の調達は、増税頼みだという認識は変えた方がいいのでしょう。


“米国は格下げ、欧州はイタリアとスペインの国債買い入れ”

2011-08-07 01:23:45 | 日記

The Wall Street Journal より2つの記事です。

“S&P、米国の格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げ” http://jp.wsj.com/Economy/node_285569?mod=LatestCoBrand

「格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5日、米国の長期信用格付けを最上級のトリプルA「AAA」からダブルAプラス「AA+」に1段階引き下げたと発表した。米国は格付け開始以来70年間維持してきた最上級の格付けを初めて失った。」

格付け会社にはいずれも米系の大手3社がありますが、今回格下げを発表したのはその1社のS&Pのみです。他の2社は将来的な格下げ可能性について示唆していますが、今回はAAAをキープすると先に発表しています。

「S&Pは政府と議会が先ごろ合意した財政再建策では、中期的に債務状況を安定させるには不十分であると述べた。また、米国の政策決定機関と政治制度の「有効性や安定性、予見可能性」が弱まったとも指摘した。」

今までは、例えば日本で格下げがあっても、マーケットはほとんど影響を受けませんでした。

日本の場合は、95%が日本国内で消化されているからという要素も大きいと思います。

今回は、ドルという基軸通貨を持つ米国の格下げです。

すでにマーケットは、先週あたりからその影響を織り込み始めていたという考え方もありますが、米国一辺倒の時代は終わったという意味で象徴的な出来事であることは間違いないでしょう。

今、世界的に、マーケットがこれからの経済、金融に不安を感じ始めている中で、これが大きな転換点となる可能性は多いにあると思います。

「S&Pによる格下げの可能性は何カ月もの間くすぶっていた。S&Pでは、ベテラン担当者のデビッド・T・ビアーズ氏率いるソブリン債チームは、連邦債務上限引き上げの議論が難航したため、連邦議会が財政赤字の削減を抜本的に進めることに懐疑的な見方を強めていた。S&Pは10年で4兆ドルの赤字を削減すべきとの見解を表明していた。」

確かに財政赤字削減の為には、この位の削減規模がないと意味がないのでしょう。

しかし、私自身は、今、大きな数字を出して削減を求めることはどうなのかなと思っています。

今までの繰り返しになりますが、大きな財政削減をすることは、それが本当に出来るかどうかということ以上に、経済に大きなダメージを与えるため、最終的には財政削減にも繋がらないと思っています。

 

S&P含めた格付け会社は、いずれも一民間企業に過ぎません。

さらに言えば、S&Pはロックフェラーグループに位置づけられる企業です。

個別にリスクの高い物件や商品も、それをたくさん組み合わせればリスクが分散される、というよくわからない理由でAAAの格付けをつけたことがリーマンショックの際に大きな問題となりました。

しかし、格付け会社が思い通りに格付けを決めるという仕組みはその後も全く変わっていません。

私自身は、アメリカの格付けはもっと低くてもいいくらいだと思っていますが、単なる一企業に過ぎない格付け会社が大きな影響力を持つことについては問題だと思っています。(これからのことを考えると、もはやあまり関係ないかも知れませんが)

 

“ECB、イタリア、スペインの国債購入を示唆”

 http://jp.wsj.com/Finance-Markets/node_285688?mod=LatestCoBrand

さすがにそこまでは行かないだろうと言われていた(というか希望されていた)、スペイン、そして特にイタリアという欧州の主要国を支援しなくてはならないというところまで来てしまいました。

この話も難航するでしょう。

「ギリシャ、ポルトガル、アイルランドでさんざんやった。もういい加減にして欲しい。」という感じだと思います。

しかし、その話が進まなければ、またマーケットは失望するのでしょう。(もうしているかも知れませんが)

 

金融機関の支援から、政府や各中央銀行の支援へと問題が大きくなっている中で、お金を出せる人がどんどん少なくなって行き、ついには欧州中央銀行(ECB)のバランスシート問題までになってしまいました。

失業率21%のスペイン、今のところギリシャのように激しいものではありませんが、デモ等の活動が増えて来ています。

 サパテロ首相は、来年3月の予定だった総選挙を今年11月に前倒しにすると言っています。

サパテロさん率いる社会労働党は、2大政党のもう一党である国民党に負ける可能性が濃厚です。

ですので、サパテロさんは、もうレームダック状態となっていますが、11月、そこまでに色々ありそうな感じがします。