"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

“日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか” 竹田恒秦著

2011-02-23 08:40:53 | 日記
著者の竹田さんは、いわゆる旧皇族で明治天皇の玄孫にあたる方です。

以前、“皇室典範に関する有識者会議”が、女性及び女系天皇容認のコメントを出した際、旧竹田宮家の子孫である竹田さんは、「男系でない天皇の誕生は『万世一系の天皇家』の断絶」としてそれに反対しました。

そして、「旧皇族の男系男子は、皇籍復帰の覚悟を持つべき」とおっしゃっています。

この本では、そのことについて触れていませんが、こうした背景については押さえておいた方がいいかと思います。

1月16日の日記でも書きましたが、私自身は、旧皇族復帰がいいとは思っていません。


この本で、著者は、世界から見た日本及び日本人に対する評価の高さについて、豊富な例を挙げながら説明をしています。

その中からいくつか紹介させて頂きます。

英国BBCの世論調査“世界に良い影響を与えている国”の第一位はどこでしょうか?

2006年は、なんと日本でした。
そこから三年連続一位、2009年は四位、2010年はドイツに次いで二位となっています。

私にも思い当たることがあります。

スペインから、お客様やスタッフと一緒に日本に行くと、皆一様に驚くのです。

街が清潔であること、人々がとても親切であること、景観も含めて、伝統と近代が調和していること、ヒロシマ、ナガサキ・・・。

文房具店での品揃えの豊富さ、そのクオリティの高さにも感激していました。(笑)


日本の『食』についても触れています。

栄えあるミシュランが☆をつけた日本のレストラン数が、フランスより断然多かったこと。

にも拘わらず、日本では、リストに出ていないレストランがまだまだあると受けとめられていること。

日本に行くと、おいしくて手頃な店がいかに多いかということにいつもビックリします。

著者もおっしゃっていますが、日本では、料理が、その種類毎に専門化されていることも素晴らしいと思います。

ラーメンを食べに行くのか、そばなのか、しゃぶしゃぶなのか、鰻なのか、それによって行く店が異なるということは、世界的には普通のことではないのです。

まだイギリス等に比べると、スペインでは、魚がおいしい店とか、肉料理がおいしい店とか、バルでのタパスであったり、タベルナ(笑)と呼ばれる庶民的な店でのプルポ(タコのぶつ切り)であったりと、比較的店の種類はある方です。

それでも、日本のレベルにまで細分化されている訳でありません。


ホテルに宿泊する顧客の国別評価、日本人は、3年連続世界のベストツーリストに選ばれているそうです。

行儀の良さ、礼儀正しさ、部屋をきれいに使う、騒がしくない等がその理由だそうです。

さもありなんですね。

「来た時よりも美しく」、「立つ鳥跡を濁さず」という言葉は、素晴らしい言葉であり、習慣だと思います。


では、国民の自国に対する評価はどうでしょうか。

なぜか、日本を評価する日本人の比率は43%と、大変低い数字になってしまいます。

中国や韓国の約80%と比べてももちろん、米国の60%、英国62%と比較しても低い数字です。

世界から評価されている日本が、なぜか日本人には評価されていないのです。

著者は、これは、戦後日本が占領政策によって植え付けられた“自虐史観”によるものだと言います。

私も全く同感で、著者がこの本を出されたのも、その認識を変えて行こうという目的からだと思います。


この本では、ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんの言葉、「もったいない」にも触れています。

マータイさんは、「もったいない」という言葉は、“経費削減(リドュース)、再使用(リユース)、資源再利用(リサイクル)、修理(リペア)という四つの『R』”の意味が全て含まれた素晴らしい言葉だとおっしゃいます。

考えてみるとその通りですね。

これら全ての意味を同時に含んだ言葉は、他の国にはないようなのです。

この言葉があるということは、その思いが日本に昔からあったという証明でもありますね。


私たちが何気なく使っている、「いただきます」、「ごちそうさま」という言葉。

「いただきます」は、“「あなたの命を頂きます」という意味で、食材そのものに対する感謝の気持ちを表す言葉”、

「ごちそうさまでした」は、“食材を作ってくれた人と食材を生産した人に対する感謝の言葉”なのだそうです。

あまり意識せずに使っていました。

そして、その言葉には、そうした機会を与えて頂いた様々な方々への感謝の気持ちも入っているような気もします。

それは、その料理を食べさせてくれた両親やご先祖様への感謝でもあり、八百万の神々への御礼でもあるのかも知れないと思います。

著者は、日本の歴史が、その長い間、皇室とともにあったことに大きな意味があると説明します。

私もその通りだと思います。

他の国々では、力や権力で征した者が、その国の王となりました。

しばらくすると、それを倒すものが出て来て、別の王、その家系に移って行きました。

世界の歴史とは、その変遷の歴史だったとも言えるでしょう。

日本では、皇室が、権力の側にいつもいらした訳ではありません。

にもかかわらず、その長きに渡って万世一系のシステムが引き継がれて行きました。

世界のどこを見渡しても例を見ない、大変ユニークな様式なのです。

そしてそれは、日本に引き継がれてきた「和」の精神を象徴しているのだと思います。


著者は、孔子の言葉、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」を使って、「和」と「同」の違いを説明します。

“「和」とは、自らの主体性を維持しながら他と協調すること”

“「同」とは、自らの主体性を失って他に妥協すること”

「和」という言葉、そしてその意味するところは、私たちにとっても、とても大切なものなのではないかと思います。


この本の中には、海外の人々の心に長く刻まれて来た日本人の話も出て来ます。

八田與一さんは、台湾の歴史の教科書にも出ている日本人です。

日本統治時代の台湾で、当時世界最大の『烏山頭ダム』の指揮を執られた方です。

そして、張り巡された水路は実に1万6000キロ。

著者は、その建設工事の慰霊碑を見て、“日本人と台湾人の名前が交互に分け隔てなく表示されていた”ことに感動します。

“八田は台湾人のみならず、日本人をも危険な作業に従事させ、自らも率先してそれを行った”のだと。


旧ソビエト連邦だったウズベキスタンには、『ナヴォィ劇場』という、中央アジア最大のオペラ劇場があります。

その建物は、ソ連によって強制連行されてしまった日本人によって建設されたものです。

後年、震度8の大地震が起き、市内三分の二の建物が倒壊する中、このナヴォイ劇場は、

“まったくの無傷で、見渡す限りの瓦礫の山のなかで、凛と輝いていた”

と言います。

劇場の建設には、500人の抑留者が充てられ、そのうち60人が事故などで亡くなってしまいました。

本来でしたら、敗戦後の日本に戻る筈だったのに、理不尽で過酷な仕事でした。しかし、

“そのような理不尽かつ非人道的な状況のなかにあっても、手抜き一つすることはなかった。”

自分の生命がおびやかされるような環境下においても、

“完成度の高い仕事を成し遂げることを美徳としてきた”日本人の姿を、そこに見るのです。

日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか (PHP新書)
竹田 恒泰
PHP研究所

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