岩切天平の甍

親愛なる友へ

山の学校

2007年12月25日 | Weblog

 八時半、マーカスとリディアンにくっついて学校訪問。歩いて来るのは近所に住むラップ家と隣のスマッカー家の末っ子、アーヴィンだけで、あとは皆スクール・バスで来る。全学年一部屋の大複式学級だ。

乱射事件があってから、気軽に部外者を入れなくなったらしいが、僕らは毎年来ているので覚えていてくれた。子供達が「テーンペ、テンペ!」と呼ぶ。「結婚式で会ったじゃないの。」と言われて「そうだったね。」と答えるが、なかなか誰が誰だか覚えられない。「なんだか人数が減ったみたいだね。」と言うと。人数が増えすぎたから、別の場所に新しい学校がもう一つ作られたのだと教えられた。

毎朝、先生が聖書の一節を朗読して、みんなで賛美歌を歌う。訪問者があると、さらに数曲、特別に歌ってくれる。広い教室の冷たく張りつめた空気、残響する澄んだ声が窓を抜けて、山々のこだまに包まれているような安らかな気持ちになる。

後ろに座って授業を眺めていると、かわいらしい顔たちがもぐらたたきのようにかわりばんこに振り返って、珍客をしばらくじーっと眺めては、がばと教科書に戻る。誰も見ていない隙にちょっとと、カメラを構えた瞬間に男の子が振り向いて目が会った。 思わず「しーっ!」と人差し指を口に当てて、あんぐりと口を開けてひきつる男の子と見合ったまま、しばらく二人で固まってしまった。

訪問者用のノートが置いてあって、各生徒の自己紹介が書かれている。私の名前はアーヴィン、好きな教科は算数です。将来は大工に成りたいです。
最後にどんな時に幸せを感じるか?と言う設問にアーヴィンは、
“I’m happy When others are.”(僕は他のみんなが幸せな時に幸せ。)と書いていた。

この自己紹介は毎年違った趣向で書かれている。以前来た時にはそれぞれの名前の綴りのアルファベット一文字ごとに一文ずつ作って自己紹介していた。
例えば名前が“Marcus”なら、M-Monkey is my favorite animal. A-Andy is friend of mine. R-Rebecca is my mother.・・・と言ったところ。僕も真似して、T-Tomato is taste of summer. E-Emanuel is friend of mine. M-Marcus doesn’t like milking. P-Picking corn is fun.・・・と書いたら、その夜村中の食卓の話題になったらしい。その後、親達に会う度に「あなたがトマトね。」と言われる。

授業はなかなか厳しくて、教室の前に出された生徒の、質問に答えられた者から自分の席に帰ってよろしい、などという事が行われる。いつも最後に残るのはたいてい小太りののんびりした男の子、これは世界共通かなぁ。
しかしあなどってはいけない。この子が馬を扱っているのを見て、別人の様にきびきびと、誰にも負けないのに嬉しくなったことがあった。

でも女先生ってなんであんなに怖いんだろう。それも世界共通かな。



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