アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

何のために紅白戦を行うのか

2008年08月14日 10時45分56秒 | コーチングの謎
合宿では午後練習は紅白戦を中心に行った。



合宿に限らず、紅白戦という練習形式ではいろいろなことを考えている。



「紅白戦を何のために行うのか?」という点について
他の指導者の方々がどのように感じ考えていらっしゃるのか?
あまり質問したことはない。



「何のために紅白戦をやるのか?」ということを聞くのは
いまさらな気もするし、単純でもない・・そんな気がしている。



そんな感覚もあって、紅白戦の目的や狙いというのは
他の指導者との会話の中でも
意外と話題に上がらないし、質問しにくいテーマ。



自分の場合には、
同時に幾つかの狙いを持って紅白戦を行うようにしている。



まず、今チームがやろうとしているテーマの徹底と継続。
例えば、サイド攻撃を練習したいのであれば、
チームが狙うところのサイド攻撃の形が引き出せるように
条件設定したり、選手の組み合わせを考えたりする。



次に、適切な競争原理の創出。
頑張っている選手にはどんどんチャンスを与えて、
チーム内の競争意識がいい意味で活性化するようにしていく。



さらに、修正能力の獲得。
これは選手だけでなく、指導者である自分自身にも課しているテーマ。



もちろん、選手には自分達がやりたいこと、やろうとしていることが
なかなか形にならない時にどうしたらいいのか?
どこを修正すれば、形になっていくのか?
そういうことを考えていってほしい、
というのはもちろんだが、
同時に、指導者としての自分自身も
実際の試合を想定しながら
どういう部分を意識させれば、テーマが形になるのか?
ということを考えながら、紅白線をさせるようにしている。



ただ、やみくもに「サイド攻撃を意識しろ」と叫び続けても、
選手のパフォーマンスが改善されないことも多い。
場合によっては、選手達はどうしていいのか、わからない時もある。



そういった場合には、ボールの奪い方に問題があったり、
オフ・ザ・ボールに問題があったり、
センターリングを上げる前やシュートする側の事前の準備に
問題があることが少なくない。



そういった場合に、直接その部分を指摘するのではなく、
選手自らが修正できるように、
可能な限り間接的な形でコーチングするようにする。



選手の修正能力を促すために間接的なコーチングと並行して、
指導者としての自分自身も、
その日の紅白戦で何らかの修正がチームとして行えるように
コーチングしていくべきだと考えている。



この紅白戦が実際のリーグ戦や公式戦だったら、
どの選手に問題があるのか?
それとも、組み合わせの問題なのか?
フォーメーションやコンセプトの問題なのか?



問題点を見極めて、
どこを改善すれば、やろうとしているテーマがその紅白戦において
形になっていくのか?
その日の紅白戦が終了するまでに、
プレーしている選手がテーマを形にすることができたと思えるように、
修正を意識したコーチングを行うようにしている。



ただ、今回の合宿では大会前ということもあって、
テーマを形にしていく、
自分達の形を作り上げていくという作業と並行して、
大会期間中の試合を想定したストレスコントロールも意識して
紅白戦を行った。



つまり、意図的に上手くいかない状況を作り出し、
その状況下で選手達が自分達のメンタリティーを
どのようにコントロールするか?できるのか?
ということを確認していくことも紅白戦を行う過程で意識した。



もちろん、意図的に上手くいかない状況を作り出すといっても、
怪我した場合を想定して新しい選手を試したり、
競争原理を作り出すために、選手を交代させたり、
相手の人数を多くして、プレッシャーを早くするといった程度で
むちゃくちゃなハンデを一方のチームに課すということは
現段階ではしていない。



紅白戦の弊害の典型例として
レギュラー固定によるマンネリ化、という現象がある。



バックアップメンバーとトップチームが勝ったり負けたりしている状況では
まだなんとかなるが、
同じメンバーで固定して紅白戦をやりすぎると、
同じメンバーでないと上手くいかないと選手自身が感じてしまい、
長期的に見るとチームとしてはデメリットの方が大きい。



時には意図的に選手の組み合わせを変えて、
〝上手くいかない〟〝思い通りにできない〟という現象を作り出す。



そのことによって
自分の気持ちの中に発生するストレスをまず受け止め、
(選手のよっては、そのストレスの発生自体で空中分解寸前までいくが)
そのストレス下で冷静な判断をもち続けられるか?



守備で頑張って走りながらも、
選手自身がどこを修正すればいいのか?
味方にどのような声掛けをすればいいのか?



状況や試合の流れを考えながら、
目の前に存在している〝流れが悪い〟という現象によって生み出される
ストレスを自分達でどうコントロールしていくのか?
どう試合の流れを変えていくことができるのか?
〝上手くいかない時間帯や状況〟という
試合で必ず存在する現象をあらかじめ大会前の紅白戦で行っておく。



困難な状況に対する問題解決のための修正には
たぶん正解はない。



これは選手も指導者も同じ。



でも、正解がないからこそ、面白い。
試合の中で発生した困難な状況や局面を
自分達の力だけで修正し、
試合の流れを変え、
試合に勝てたら最高に楽しいはず。



指導者のテキストにタブーは書いてあっても
『こうすれば、あなたのチームは改善されますよ』
ということは書いていない。



チームの指導者に修正のポイントを誰も教えてくれない。
指導者が自分自身で見つけるしかない。



同じように、
試合中の選手達にも目の前の試合に勝つ方法を教えてくれる人など
存在しない。



監督やコーチがベンチからアドバイスすることはあっても
選手11人全ての行動をコントロールできるわけではない。



選手も指導者も自らの試合に勝つ意思と自分達の判断、修正能力で
困難な局面を打開していくしかない。



そのための、もっとも効果的なトレーニングが紅白戦ではないか、
そう考えている。



選手権の地区予選でも、
たぶん上手くいかない時間帯の方が多いはず。



そのような状況でも、暑さに負けずに、キレずに、
自分達で声を掛け合い、困難な局面を打開してほしい。



困難な状況を自分達の力で乗り越えようと感じることのできる試合こそが、
試合に出れずにベンチで応援している選手達にも
何かが伝わる試合になるはず。



勝っても、負けても、試合に出ている選手だけでなく、
ベンチで応援してくれている選手にも何かが伝わる試合ができるように
時間はないが大会に向けて、
いい準備をしていきたい。


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