アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

新人戦兼関東大会地区予選が始まる前に・・

2009年11月06日 13時48分09秒 | 指導記録
新人戦がもうすぐ始まる。
毎年、高2の多くの選手は、この大会を最後にクラブを卒業していく。
春に行われるインターハイの地区予選まで続ける選手もいるが、
圧倒的な少数であることは間違いない。
新人戦敗退以降は、新チームとしてチームを作り直すのが通例となっている。
高2の選手達は『最後の大会』という思いは強いと思う。
自分も監督という立場でベストを尽くしたい。



ただ、同時に、冷静に指導することも忘れてはいけないとも思っている。
選手達はもしかしたら、『最後!』という気持ちをもって、
今まで見たこともないようなプレーをするかもしれない・・・。

しかし、反対に
『最後だからこそ、絶対に勝ちたい!』という気持ちが悪い方に回り始め、
ベストを尽くすどころか、空中分解して試合が終わってしまう・・・
ということも充分考えられる。

車の事故でも、冷静に運転できている時はほとんど事故は起こらないもの。
居眠りや飲酒運転でなく、事故を起こす場合のほとんどは
【判断】や【運転技術】そのものよりも、
【認知】自体に問題があるのがほとんど。
つまり、感情的になったりするなどして、
状況の把握が出来ず、注意すべきことに注意できないことによって、
歩行者や自転車、バイクや自動車の動きを見落としてしまい、
その結果、事故というのは不幸にも起こってしまう・・。



サッカーの場合、勝ちたい・・という気持ちや
負けたくない・・という感情は無くすことができないので、
単純に車の運転をしている時の心理と試合におけるプレーヤーの心理を
全く同一に論じることはできないかもしれない。
それでも、似ている部分、共通している部分はあると考えている。

車の運転において、
事故発生の原因は【ヒューマンエラー】であることが多いとされており、
プロフェッショナルなドライバーの場合、
その運転手の個人的な【ヒューマンエラー】をいかに減らすことが出来るか?
ということに予防の重点が置かれる。

具体的には、そのドライバーがどんな性格なのか?
どういう状況でどんな感情を有する傾向があるのか?
そういった自己分析にかなりの時間を使う。

プロフェッショナルなドライバーが事故を起こす場合のほとんどの場合、
そのドライバー特有の付帯状況が存在している。
『つい、カッとなって・・』
『なんかイライラして・・』etc。

自分がどういう状況で注意力散漫になるのか?
自分がどういう状況で冷静でいられないのか?
事故が起こりうる、事故が発生しやすい状況を自分自身で自覚しているだけでも、
事故が発生する確率を減らすことができる。

このことは運転だけでなく、サッカーにおけるプレーヤーの心理にも当てはまる。




サッカーにおける失点はほとんどの場合、ミスから発生している。
FKのように完全に相手の技術によって崩される・・・という場合も存在はするが
それはあくまでも例外中の例外にすぎない。
もちろん、サッカーにおいて、
〝ミス〟という要素を〝ゼロ〟にすることなどできないし、
〝ミス〟自体がサッカーにおける本質的要素でもある。
〝ミス〟を前提に、技術トレーニングや戦術トレーニングがあると解釈すべき。
つまり、〝ミス〟をいかに減らすか?ということが
サッカーのトレーニングにおいて大きな一部分になっているのは間違いない。

ただ、[試合に勝つ]ということを考えた時、
〝ミス〟が発生した場合に、その〝ミス〟をどのように捉えるのか?
ということは直接的に失点に影響してくる、と思っている。

1つの〝ミス〟で、気持ちがキレてしまうのか?
それとも、〝ミス〟をなんとかカバーしようと思えるのか?
その考え方自体で失点の可能性は変わってくる。
サッカーでメンタルが強調されるのは
単なる根性論ではない。
メンタルの強さは、失点の可能性を減らす、という部分で現実的な力になる。



今のチームはバルセロナのようないわゆるスキルフルなチームではない。
実際の試合では、ボールを奪ってからの攻撃においてこそ、
〝ミス〟により、再び相手にボールを奪いかえされ、ピンチになる・・
というシーンも少なくない。
だからこそ、今のチームを指導するにあたっては、
メンタルの重要性を説き続けてきた。
そして、今、高2のほとんどの選手にとって、
最後になりうるであろう大会の前でこそ、
もう一度、メンタルの大切さを伝えたいと思っているし、
また伝えなければならない、と感じている。

特に、今のチームの選手達が
「どういう状況で失点しやすいのか?」
「どういう状況で、失点に繋がる〝ミス〟が発生しやすいのか?」
「どういう状況に弱いのか?」
ということを大会前にしっかりと伝えなければならない、と思っている。

どんな選手にも、どんなチームにも、メンタルに弱点はある。
完全無欠で、鉄のようなメンタルタフネスを
全ての選手、全てのチームが有しているわけではない。

メンタルには、強い部分と同時に、弱い部分も確実に存在する。
相手の上手さに精神的に動揺することは極めて稀。
そういった状況で動揺するとしたら、
相手の実力を過小評価していた場合。

今のチームの場合、相手を過小評価できるようなチームは存在しないが、
チームの総合力が同じくらいのある意味難しい対戦相手に対して、
どうような心理状態で試合に臨むのか?
というのは極めて重要な要素になる。



ミスに動じないためにも、自分達から空中分解しない為にも、
自分達の弱さがどこにあるのか?
自分達はどういう状況でナーバスになってしまうのか?
というメンタル面での課題を自覚しておくことは絶対に必要。

自分達の弱さや課題を自覚できていると、
「ああ、この状況は自分達がやばくなりそうな状況だな・・」
「この展開でいつもやられているな・・」
と考えることができる。

自分達の弱さを自覚することが、
試合中の冷静さにつながる。
そう思っている。

自分の弱点がわかっていれば、それだけでも、
失点という〝事故〟が発生する確率は低くなる。

昔、中国に「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」
という趣旨の言葉があったが、
この「己」という部分には自分達の戦力の把握という部分だけでなく、
「己の弱さ」も含めるべきだと考えている。



サッカージャーナリストの湯浅健二氏は
『サッカーはメンタルのゲームである』と言っているが、
私自身、深く同意できる。

〝ミス〟というサッカーに必ず存在する要素が
自分達のメンタルにどのような影響を及ぼすのか?
それを自覚できているだけでも、試合の結果は変わってくる。

つまり、〝ミス〟という状況をどのように捉えることができるのか?
そもそも、自分達はどういう状況で〝ミス〟が発生しやすいのか?
それだけでも、失点という事故自体の発生確率は減る。

〝ミス〟に対しての考え方、
〝ミス〟が発生した時のメンタルタフネス、
〝ミス〟が発生した場合に、メンタルのコントロールも含めて、
どのようにリスクマネジメントしていくか?
こういった要素は難しい試合に勝つ為には極めて重要な要素。

高2の多くの選手にとって、最後の大会になるだろう新人戦において、
納得できる試合をする為にも、
自分達の弱さを自覚しつつも、冷静に、諦めずに、最後まで集中して戦い、
苦しい状況もお互いに声を掛け合って、チームとして助け合い、
応援している選手や保護者の方々にも気持ちが伝わる試合が出来ればと思う。

その為にも、試合の前日まで、
メンタルに、また自分達の弱さにこだわりたいと思う。
一人一人が弱くてもいい、強くなくてもいい。
一人一人が、自分の弱さやチーム全体の弱さを自覚しつつも、
お互いに助け合い、声を掛け合えれば、それでいい。

頑張りたい。


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