アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

自分の中で時間軸が揺らいでしまう・・・

2009年11月27日 09時42分04秒 | メンタルの謎
先日、久しぶりに完全なオフがあった。
仕事もサッカーも休み。
平日だったので子供は学校もあり、たまたまカミさんも外出していて、
完全に家で一人で過ごしていた。
時間があったこともあり、
今のチームに移ってからのスコアや指導記録を何年分も振り返っていた。

不思議なもので、スコアや指導記録を見ていると、
その時のことをはっきりと思い出す。
選手達の顔はもちろん、自分が選手達に言った言葉やその時の天気等・・。



心理学を深く勉強していたわけではないので、詳しいことはわからないが、
記憶というのは自分の中の感情と深く結びついているのだろうか?
一般的に、人間の記憶は時間の経過と共に曖昧になっていくような印象があるが、
感情が時間軸を不安定にさせるような気がしてならない。

強く感情的になっていた試合や場面は
どんなに以前のことであっても、驚くほど明確に記憶が蘇る。
ただ、感情的になった試合は、ディテールまではっきりと覚えている半面、
なんだかものすごく遠い記憶のように感じる。

この間終わったばかりの新人戦のことも
試合前や終わった後のことはもちろん、
試合中の選手の表情や自分自身の感覚や感情を明確に思い出せるが、
なんだかもう1年以上の前のことのようにも感じてしまう。

感情的になった試合、特に〝悲しい〟という感情は
自分の中で無意識的に遠ざけたくなってしまうのだろうか。
感傷的な試合を自分の中で受け入れることができないのだろうか。

〝悲しい〟〝辛い〟という記憶や感情が、
自分の中の時間軸を揺らがせている・・
正直、今はそんな気がしている。



今のチームに来て、もう3年以上経つが、
どの年代の試合も、トップチームの試合だけでなく、
バックアップの試合も、チャレンジャーズチームの試合も、
しっかりと覚えている。

「選手の素晴らしいゴール」や「成長した姿」も覚えているが、
忘れられないのは「大切な試合で勝てなかった・・」という記憶。
悲しいかなその記憶にはいつも大きな傷跡が伴ってしまう。

特に「負けたら、選手達がクラブを卒業してしまう・・」という試合で、
采配や監督として自分の行動には、
後悔の念が常に付きまとう。
「なんでこうしなかったんだろう・・」
「こうすべきだったかもしれない・・」

その時なりに、自分の感覚を信じ、自分の責任で判断してきたとはいえ、
選手達の涙を思い出す度に、どうしても自分自身を責めてしまう。
特に、試合に出れなかった選手達の涙は自分の胸に突き刺さる。
必死に応援してくれた選手達のやりきれない表情を見る度に
自分の未熟さが歯がゆく、そして、情けない。

サッカーでも、人生でも
「・・してたら・・」「・・していれば・・」ということを
考えることが無意味であるというのは自分でもわかってはいる。
わかりきっていることではあるのだが、
自分が弱い人間のせいなのか、
どうしてもあり得もしない状況に思いを廻らせてしまう。

「同じようなミスや過ちをしない為に、自分自身がどうしていくべきか?」
ということが大切なのだ!ということは
それこそ〝頭〟ではわかってはいる。

自分から辞めない限り、また何らかの事情で突然終わりが来ない限りは
サッカーも人生も続いていくもの。

楽しいこと、悲しいこと、辛いこと、嬉しいこと・・
サッカーでも人生でも、人は全てを背負いながら、前に進んでいくしかない。

当たり前の真実が、弱い自分には時として、とてつもなく重い。



自分自身が
「指導者として成長したい・・」
「一人の人間として強くなりたい・・」
と思い続けることができているとしたら、
それは間違いなく、選手達の涙によっても支えられている。

「選手には笑ってクラブを卒業させたい」
「選手を泣き顔でクラブを卒業させてはいけない」
20年近く、そう思い続けている。

それでも、自分の理想にはまるで届かない。
自分自身の悔しさと情けなさと選手達への申し訳なさが
自分自身の背中を押し続けている。

体力的に、無理するのは、厳しい年齢になってきているし、
夏休みのほとんどを3時間位の睡眠で過ごすのは
無理を通り越して、無茶とすら言えるのかもしれない。

ただ、楽して指導しようとすることを目指すのは
自分には出来ないし、したくもない。

もし、自分が楽したいと思ってしまったら、
泣いてクラブを卒業していった選手達に顔向けできないし、
彼らの涙を踏みにじってしまうような気さえしてしまう。

「もう無理は出来ない・・」と考えてしまったら、
その時はグランドを去る時、
そう思っている。

人間は「楽をしたい・・」と思った時から、
どんどん〝坂を落ちていく〟ような気がする。
自分のような弱くてだらしない人間は、特にそうだと思っている。



指導するチームや指導環境は今後変わるかもしれないが、
指導者でいる限りは、
泣きながらクラブを卒業していった選手達に
「あの時の悔しさは忘れていないよ」
「同じ悔しさを味わないように、俺は今も頑張っているよ」
胸を張って堂々と言えるように、
これからも、今、目の前にいる選手達と頑張っていきたい。