アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

マリーシアと全力

2007年10月22日 19時16分06秒 | サッカーの謎
先日、旧来の友人達と食事をしながら
サッカーの話をしていた。



その中で、「マリーシア」の話題になった。
そもそも、ブラジル人がどういうニュアンスで
「マリーシア」という言葉を使っているか、
日本人には正直なところ、よくわかっていないのが
現実ではないだろか。



このブログにおいて
以下の言葉を引用するのは2回目だと思うが
今、改めて先人の言葉を引用させていただくことにする。



元ブラジル代表キャプテンでジュビロ磐田に在籍していた
ドゥンガ氏は
その著書「セレソン」(NHK出版)において
「マリーシア」の定義を以下のようにしている。



『マリーシアとは、相手よりも早く考えること以外の何物でもない』

『相手の動揺やイライラを誘い、心理的に自分を有利にすること』

『これらのプレーが何を意味するかといえば、
 それは〝インテリジェンス〟にほかならない』
 (強調部分は個人的に付加)

『サッカーはゲーム』

『ゲームは自分に有利になるように進めるのが鉄則』



ドゥンガ氏は
サッカーを『ゲーム』と捉え、
その駆け引きを重視する。



常に『相手よりも早く考える』ことを意識し、
相手に対して優位に立とうとする。



ドゥンガ氏はその著作の中でさらに
PKのとり方やヘディングの競り方においても
マリーシアの有効性を説いている。



ただ、ドゥンガ氏は
見えないところでファールをしろ、とは一言も言っていない。



あくまでも、『ルールの範囲内で許される範囲』で、
マリーシアを意識すべきと言っている。



よくやった鬼ごっこにおいて
ドキドキハラハラした経験のある選手は
少なくないと思う。



単なる「走って逃げる走って追いかける」
というシンプルなゲームの中で、
なぜあれほどハラハラドキドキするのか?



走ることによって心拍数が上がることだけが理由ではない。
鬼ごっこの中で
ドゥンガ氏が言うようなマリーシアがあるからに他ならない。



つまり、お互いに『相手よりも早く考え』、
相手が何を考えているか?
相手が何を狙っているのか?
常に頭を使いながら、
逃げ、また追いかける。



鬼ごっこでハラハラドキドキするのは
『相手とのゲームにおいて』
〝駆け引き〟しているからに他ならない。



プレーする中で、
ハラハラドキドキすることが少なくないのは
サッカーの本質が『ゲーム』であることを示している。



ただ、うちのチームの選手も含めて
どれだけの選手が練習の中で試合の中で
ハラハラドキドキできているのだろうか。



日本人は自虐的に自らを指して
『日本人にはマリーシアが足りない』ということを
よく口にする。



でも、冷静に考えると
日本人はグランド以外で
どれだけマリーシアを意識できているのだろうか?
グランド以外で相手と駆け引きをするような場面が
どれ位あるのだろうか?



自分の世界に入って、
人との会話もない中では、
マリーシアを使う場面すら存在しない。



ラモス・ルイ氏が
『サッカーは遊び』というのは
サッカーが『ゲーム』である、
ということを言いたいのだと思う。



また、サッカーの場面においても
ボールの有る無しにかかわらず
ボールしか見れない。
顔を上げられない。
相手の目線を読めない。
といった状態では
『マリーシア』を使って、
相手と〝駆け引き〟するというレベルまで
たどりつけるはずもない。



10月28日から始まる新人戦(関東大会予選)でも
残っている後期のリーグ戦でも
『ゲーム』の中で『マリーシア』を意識して
思いっきりハラハラドキドキしてほしい。



例えテクニックがなくても
ボールのないところで
ボールウォッチャーにならずに
相手の目線をチェックして
相手の狙いを読むことで
相手と駆け引きしてほしい。



相手の良さを消し、
相手の急所を攻める、
そういった『ゲーム』をしてほしい。



相手との真剣勝負の中でこそ、
相手との『ゲーム』を〝駆け引き〟を
楽しんでほしい。



同時に、
サッカーはある意味『戦い』でもある。



選手達には、全力で戦ってほしい、とも思う。



試合で戦えるようなトレーニングを
大会までやっていきたい。



元サガン鳥栖の松本監督は
『全力に悔いなし』という言葉を
ご自身の信念にされているという。



「全力を出し切れば、
 勝っても負けても後悔しない」
という意味だろうか。



まさに至言である。



私自身、選手ともども
『全力』で新人戦に臨みたい。



ドゥンガ氏は
「セレソン」の中でこんな言葉も紹介してくれている。

『ブラジルには「1日1回ライオンをしとめる」という言葉がある』

それぐらいの集中力で毎回の練習をやるべき、ということ。



水曜日から、試験明けで
本格的に新人戦に向けて練習を再開する。



毎回の練習で、
『ライオンを仕留められる』ように。

試合で「戦える」ように。

試合で『マリーシア』を意識して
『ゲーム』の中で「駆け引き」を楽しめるように。

後悔のない内容で
「ハラハラドキドキ」できるように。



チーム全員でやりきりたいと思う。