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死のワナの地下迷宮 冒険記その4

2006年06月06日 01時24分23秒 | ゲームブック(ファイティングファンタジー)
 社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「死のワナの地下迷宮」をプレイ開始。

 これ以降、かなり「死のワナの地下迷宮」のネタばれを含んでいます。ご注意ください。



 あたしの名は、レイン・デシンセイ。ちょっとお茶目な23歳。まだ小娘だった頃から、剣だけを頼りとして生きてきた。
 ファングの町で開催されている、迷宮探検競技。ファングを治めるサカムビット公が、持てる知恵を全て詰め込んだこの迷宮は、いまだかつて誰の生還も許してはいない。
 生還を果たせば莫大な報酬に多大な名声が得られるだろう。しかし、あたしが欲しいのはそんなものではない。
 あたしはただ、不可能とも思える難題を打ち破りたい、ただそれだけが望みなのだ。
 難攻不落の迷宮に、あたしは今、挑戦する。



<現在の状況>

技術(12):12
体力(23):18
運(10):9

食料:9
金貨:3
宝石:エメラルド
飲み薬:ツキ薬

装備:ロープ、中空の木の管



 通路を行くと、左手に扉があった。その扉に耳をつけて中の様子をうかがうが、何も聞こえない。
 扉を開けてみると、そこは何もない小さな部屋だった。あたしはゆっくりと中へ足を踏み入れる。

 !

 不意に後ろで扉が閉じてしまった。あたしは身をこわばらせる。
 扉に手をかけようとしたそのとき、どこらともなく大きな声が聞こえてきた。

「わが主人の巧妙なる殺人迷路、死のワナの地下迷宮へようこそ。冒険者よ、わが主人の名を叫んで、彼に敬意を表してはいかがかな?」

 ……どういう趣旨の悪戯かはしらないけど、命のやり取りならともかく、あたしを莫迦にしようっていうのなら、こっちもまともに相手をしてやるつもりはない。

「サカムビットのうじ虫野郎!」

 あたしは声をかぎりに怒鳴ってやった。この程度の罵倒しか出てこないのが、あたしの育ちの良さを物語っているわよね。
 すると、今度は先ほどよりもずいぶん和らいだ声で語りかけてきた。

「よくぞ言った。わがご主人は肝っ玉のすわったやつがお好きだ。ほうびをやろう。これはお前の望みを一つ、叶えてくれるだろう。だが、一つだけだ。さらば」

 チリン。

 足元に、どこからか金の指輪が転がり落ちた。あたしはそれを指にはめる。あんなヤツにほうびを貰うのも癪だけど、ここを生き延びるには何でも利用しなくてはならない。
 静かに扉が開いた。あたしは再び通路を北へと進んだ。



 通路は曲がりくねりながらも北へと続いている。
 すると通路の真中に、天井から床まで、薄青い円筒状の光が注いでいるのに出くわした。その筒は揺らめきながら輝いていて、なにより気持ち悪いことに、筒の中に無数の笑い顔が漂っているのだ。
 これ、ちょっとダメだわ。
 あたしはその横を、慎重にすり抜ける。やつらは別に追いかけてくる様子はない。あたしは再び、通路を急いだ。



 やがて、通路の右側にアーチ状の出入口が現れた。そこは重い石の扉で閉じられているが、一応丸い取っ手がついている。
 ここはいかにも意味ありげな感じだ。あたしは力をこめて、その扉を押し開ける。
 その先は広い洞窟だった。暗がりに目が慣れるにつれて、周囲の様子が見えてくる。辺りはじめじめとして、緑色の藻に覆われている。
 あたしは床にしかれている藁を踏みながら、洞窟の隅へと歩いていく。そこには小さなくぼみがあり、中にはうじ虫の大群がうごめいていた。あたしは目をしかめて立ち去ろうとしたけれど、そのうじ虫の真中に一本の短剣が突き刺さっていることに気が付いた。
 その短剣の柄は黒革で覆われていて、オパールが嵌め込まれている。そしてその刃は、赤みがかった不気味な黒光りする金属でできている。ただの品物じゃないことは、一目でわかる。
 あたしは迷うことなく、うじ虫の群れの中に手を差し伸ばす。

 ニュル。

 うじ虫があたしの手に絡みつく。
 確かに気持ち悪いが、こいつらは無害な存在だ。あたしは何匹かのうじ虫と一緒に、その短剣を引き抜いた。
 短剣は惚れ惚れとするような輝きを見せている。あたしはそれを腰のベルトに挟むと、洞窟を出て元の通路へと戻ろうとする。

 ……ブーン……。

 ん?
 なにか妙な音が聞こえる。
 虫の羽音のようだけど……。

 ブン!

 うわ。
 あたしは頭上から迫ってきた巨大なハエの突進をすんでのところでかわすことができた。
 このハエ、体長はざっと1.5メートルほどもあるだろうか。その足も、羽も、口吻も、その巨大さ故にとてもよく観察することができる。

 ブン。

 再び舞い降りてきたハエから何とか身をかわす。次の突進に備えて、あたしは剣を構えた。

 ボカ、スカ。

 所詮は虫けら。あたしはあっさりとそのハエを斬り捨てる。剣に付着した黄色いネバネバを拭き取ると、あたしは今度こそ通路へと戻った。



 通路は東西2方向へと別れていた。両方を見比べてみるが、どちらも闇の中へと消えていくばかりで、選択のヒントとなるようなものは見当たらない。
 ここは勘に頼るしかないようだ。あたしは通路を東へと進んだ。

 通路を進んでいくと、行く手を大きな穴にさえぎられてしまった。その穴の先は、まだ通路が続いているようだ。
 飛び越えられるかどうか、少し微妙な大きさだ。しかもちょうどおあつらえ向きに、天井からロープがぶら下がっている。
 サカムビット公も、なかなか微妙な選択を突きつけてくれる。このロープは、いかにも怪しい。使ってくれと言わんばかりだけれど、ちょっと使う気にはなれない。
 ここはいちかばちか、自力で飛び越えてみよう。
 あたしは助走をつけて、穴の向こう側へとジャンプした。

 !

 空中を舞いながら、あたしは背中に冷や汗をかく。
 まずい、届かない!
 あたしは穴の淵にぶち当たり、そのまま穴のそこへ向かって転落していった。

 ……、っ痛ー!
 壁と床とで身体をしたたかに打ち付けてしまったが、ザックがクッションになったおかげで、それほど酷い怪我は負わずに済んだ。
 辺りは暗く、何も見えない。あたしは手探りで、少しずつ周囲を探っていく。
 ふと、なにかすべすべとした手触りの物が指に触れた。一瞬びくっとしたが、特に害のあるものではないようだ。何かは確認できないけれど、あたしはそれをとりあえずザックに放り込んだ。
 なおも手探りで進んでいき、どうにか穴の壁にまで達した。その壁は滑りやすく、攀じ登るのは困難だったけれど、剣を使って穴を掘っていけばどうにかなりそうだ。
 ゆっくりと、時間をかけて壁を攀じ登り、どうにかこうにか穴の東側にたどり着いた。あたしは通路にへたり込み、ようやく一息つくことができた。
 座りながら、穴の底で拾った物を調べてみると、それはどうやら血のように赤いルビーの玉のようだ。これは、思わぬ拾い物だったみたい。こんな穴にも、落ちてみるものね。

 あたしは少し元気を取り戻して、通路を東へと進んだ。 


(つづく)



<現在の状況>

技術(12):11
体力(23):16
運(10):7

食料:9
金貨:3
宝石:エメラルド、オパールの短剣、ルビー
飲み薬:ツキ薬

装備:ロープ、中空の木の管、金の指輪


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