百醜千拙草

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危機と機会

2008-11-14 | Weblog
今回の経済危機について、会計士、山根治さんは、自身のブログで、その解釈を公表されています。その中に次のようにまとめられておられ、なるほど、と思ったので、書き留めておきます。

 これまでの話をまとめてみますと、-

1. アメリカが中心となって引き起こした、2つのトラブル、イラク戦争と金融危機をお金の側面から見た場合、それぞれが500兆円、合わせて1,000兆円の損害を全世界に与えた、
2. この1,000兆円の損害の内訳を見てみますと、イラク戦争によって、破壊するためだけに費消された「モノ」を300兆円とすれば残りの200兆円は、誰かが不当な利益として既にフトコロに入れた勘定になり、金融危機については、損害額500兆円の全てが誰かのフトコロに不当な利益として入っている、

このように、集約することができます。

 つまり、
イラク戦争の費用500兆円のうちの200兆円と、金融危機の損害500兆円とを合わせた700兆円は、その大半をアメリカをはじめとするアングロサクソンの人達がフトコロにし、それだけ不当な利益を享受した
ということです。

このたびの、リーマン・ブラザーズの経営破綻を引き金にして顕在化した、世界的な経済危機は、イラク戦争で濫費された300兆円の「モノ」と、2つのトラブルのドサクサに紛れて不当に他人の富を奪いとった700兆円の「カネ」の跡始末をめぐるもので、モノとカネ、合わせて1,000兆円のいわば反作用とでも言えるでしょう。なかでも、不当な富の移転である700兆円については、正当な富の所有者に向けて再移転される動きがこれから活発になることでしょうし、このたびの金融危機といわれるものの正体は、まさにこの不当な富である700兆円の再移転のプロセスであると見てもいいでしょう。所詮、経済合理性に反する偽りの行為とその結果は、いつの日か必ず是正される宿命を持っているようです。


フームと唸ってしまいました。私が漠然とおかしいと感じていた様々な現象を、整合的に説明する、その鮮やかな謎解きを読んだようです。経済の面だけを切り取って見ても、社会全体を現していて、しかもその動きがより良く見えるのですね。まさに今回の金融危機とは「不当な富の移転」をやりすぎたための破綻といえるでしょう。
アメリカ政府の今回の金融機関への資金投入は、投資家を含む人々は一概にその効果に懐疑的なようで、冷ややかな目で見られています。受けて、市場からの資金の引き上げは続き、一般の人の消費はグンと落ちんでいます。経済活動の2/3は消費活動によるものですから、これは一段とビジネスを圧迫し、ますます負の螺旋を下っていくようです。30年代の大恐慌と比べると、アメリカでの失業率は大恐慌時の25%に対し、現時点で6%、GDPもそれほど落ちているわけではないので、数字的には楽観視している人もいるようですが、一寸先は闇ですからわかりません。これまでの経緯を見ていると、金融機関の破綻は氷山の一角で、実は、この金融工学とかいう名前のインチキが金融機関以外の大企業にも蔓延していて、そのインチキがきかなくなってくると、多くの企業でもその実体は結構やせ細ってきていることが、一つ一つ明るみに出てきているというような感じを受けます。アメリカの企業の旗印、自動車産業も崩壊寸前で、公的資金の注入は不可欠のようです。山根さんは、「100年に一度のチャンス」というタイトルで今回の金融危機について述べられていますが、確かに今回、100年に一度の1930年代の大恐慌以来の大惨事となる可能性があると思います。社会の経済システムは大幅な修正と再構築を余儀なくされるでしょうし、その過程で「不正な富の移転」で甘い汁を吸い続けてきた階層の清掃が行われ、その結果、より効率的なシステムに生まれ変わるはずです。それは非既得者層へのチャンスを拡げると思います。現時点で、溜まった膿を排出するための手術が行われようとしているわけで、その手術侵襲は、一時的には多くの人に苦しみを与えることになるでしょうが、それは、必要な作業であろうと思われます。
 日本を振り返って見ますと、政治の面で、小泉政権がやったことは、金融機関がもっともらしい名前のインチキを繰り返したことと同様に、インチキに「改革」とか適当な名前をつけて、堂々と国民に売りつけたことではないかと思います。そのインチキがきかなくなることは自身はとっくの昔にわかっていたはずで、首相交代以後、するすると政界から逃げていったのも当初からの計算のうちだったのでしょう。いずれにせよ、政官財の癒着を促進し、国民の富を不当に移動させていた張本人の自民党もいよいよ崩壊へと秒読みに入ったようです。この際、膿は徹底的に出し切ってもらいたいものです。
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