百醜千拙草

何とかやっています

God don't like ugly

2014-04-04 | Weblog
エープリル フールに受け取った実験用イメージスキャナーを作っている会社からの広告メールが愉快だったので、紹介します。

WARNING: URGENT MESSAGE
APRIL 1, 2014
Global pixel manufacturers report that a pixel shortage has reached crisis proportions
Sensel Raster, of the International Pixel Coalition (IPC), blames an increase in demand from biotech imaging applications. "These fancy scientists think pixels grow on trees," laments Raster.
Learn more about this crisis.

世界のピクセル製造会社はピクセル不足が危機的状況に達したと報告している。国際ピクセル協会(IPC)のセンセル ラスター氏は、バイオテクノロジーイメージング応用への需要の増加に責任があると言う。「あのファンシーな科学者どもはピクセルは木にでもなるとでも思っているのだろう」

(因みに、Sensel - Blend of sensor and cell or sensor and element, by analogy to pixel; Raster graphics - graphical techniques using arrays of pixel valuesということです)

エープリル フールと言えば、もう一つ。香港大学のKen Leeの研究室で、細胞に圧をかけるストレスでOct4とNanogの発現が増加したというデータを4/1にWebで紹介しているのを見ました。これを受けて、中国メディアはもとより、LAタイムス、Nature blogなどのメディアが、「STAPに希望」という記事を配信。彼らは最初に理研の方法では成功しないことを確認し(そのデータを)Natureに論文を投稿したがリジェクトされ、その後、STAP作成方法をハーバードのプロトコールに変えたということらしいです。「ステムセル研究者、研究不正で有罪」というNatureの記事によると、Kenneth Leeは、理研の実験方法にできるだけ忠実に、4回やってみたが、STAP細胞は再現できなかったそうです。「理研が一年かけてSTAP細胞を作るべきか」との問いに、「それが理にかなっている、しかし、彼女の方法ではダメだ」と答えた)という話。

それで圧をかけるやり方にしたら、Oct4とNanogが上がったといデータを示したわけですが、さらにその後、ウェッブ上でKeio大のSrav Gopa氏が次のような指摘。

Dr. Lee - あなたの図では、死にかけの細胞だけがOct4を弱く発現しているだけのようです。、、

これに対して、Ken Lee氏は下のようなメッセージを残して立ち去りました。多分、Oct4とNanog上昇のデータがSTAPを再現したものではないと確信したのでしょう。

Kenneth Ka-Ho Lee · The Chinese University of Hong Kong
個人的には、STAP細胞は存在するとは思っていないし、これ以上の実験は労力とカネのムダだろう。
私のデータの場合、Oct4とNanogが10倍増えた位では(リプログラミングには)十分ではない。iPSの場合のように少なくとも百倍に増える必要がある。Sox2に至っては二倍しか増えなかった。私はこれ以上このページでブログはしない。自分の興味のある研究に戻りたい)

エープリルフールに行われた理研のSTAP論文調査報告会見も、ちょっと酷いなあ、と思いました。
日本語でどういうべきか、英語だと、Ugly という言葉がピッタリです。理研の発表と、それに対する筆頭著者の人の反応のことです。
理研は、この筆頭著者の人に全てを被せて、シッポを切り、組織とシニア研究者を守ろうとしているのが見え見えでした。筆頭著者の人は(もとは身から出た錆ながら)ピンクの壁紙のフェイク実験室に割烹着を着せられて、理研の利権、政治利用に使われた自分も被害者だ、しくじった以上は一蓮托生だろう、どうして自分だけが全ての責任を被せられて抹殺されないといけないのか、と怒り心頭の様子。本人は、捏造ではなく、悪意のないミスだと言っているそうです。それでは、今回の理研の調査項目に含まれていない、TCR再構成のデータの矛盾、若山さんに渡した細胞がすり替わっていたこと、ゲルバンドのコピべ、さらに過去の複数の論文での不正の証拠と疑惑の数々は、どう説明するのでしょう?全部、悪意のないミスで押し通すのでしょうか?
TBS Newsによると、STAP細胞の存在を検証する再現実験について「できると信じたい」と述べているそうです。微妙な表現ですね。STAP細胞は我がごとながら、確信しているわけではないような感じです。

もう一人のちょっと困った人、ハーバードの共著者の人は「STAP細胞の存在自体を否定する決定的な証拠がない以上、論文撤回に応じるべきではない」という科学者とは思えない、ぶっとんだ発言をしたそうです。「存在を否定する証拠がなければOK」なら、何でもアリです。だいたい、どうやって、誰も再現できず現物がない状態で「ない」ものの存在を否定するのか教えてもらいたいです。「論文は存在する証拠がしっかりしていないとダメ」なのであり、その証拠が捏造であった証拠が上がってきているのですから、不正論文は撤回されないといけません。撤回して、それでも存在する証拠が示せるのであれば、もう一度、マトモな証拠を示して投稿しなおせばよいだけのことです。またこの人は「香港の大学が、我々の示した手順で多能性細胞の再現に期待が持てる結果を得たとの報告を聞き、喜んでいる」「時がたてば、科学が答えを証明してくれる」と改めて自信を示したそうですが、その香港チームが上のように、STAPが存在するとは信じていない、これ以上は労力と時間のムダだ、と言って立ち去ったのですから、すくなくとも、STAP細胞が「存在することを証明できない」証拠は、今の所、もう十分と言えるでしょう。

それにしても、理研のやりかたは稚拙過ぎます。こういう発表をするのなら、しっかりと筆頭者の人に根回しして、落としどころを決めてからやらないと、本人不在の欠席裁判、しかも、ほとんど一人に罪をなすり付けて、もっと責任の大きいシニアの人は実質お咎めなし。これでは泥沼にならない方がおかしいです。痴話ゲンカのレベルになってきました。弁護士が入っていますから、長引くかも知れません。こういうと弁護士の人に悪いですけど、こういうケースの場合、裁判になって相手方から大金がとれるというワケではないでしょうから、弁護士の収入源は基本的にクライアントの相談/弁護料ということでしょう。揉め事は長引けば長引くほど、弁護士の収入が増えます。理研は組織を守るために一人を生け贄にすることに決めたのですからこれ以上引くことはないでしょう。最悪、筆頭著者の人が何を訴えようとも、ノラリクラリとかわしている間に、著者側は弁護士を雇い続ける財力が尽きて揉め事は自然消滅するだろうとでも踏んでいるのでしょうね。理研にとっては消してしまいたい黒い過去、そういうことなのでしょう。

しかし、不正論文をネタに使って、資金調達をしたセルシード関係の共著者の人々の責任はどうなるのでしょうか。こちらもUglyになりそうです。この一件、理研にしてもセルシードにしても「子供のずるさ」を利用しようとした「大人の汚さ」を感じて、イヤーな感じです。

因みに、アメリカの黒人社会では、己の利益のために仲間を利用するだけして見返りを与えない行為を非難する言葉があります。

God don't like ugly   

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