百醜千拙草

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追いつめられた検察

2010-05-18 | Weblog
小沢氏、秘書の政治資金規正法違反で共謀の疑いの問題、検察が不起訴にした後、正体不明のナゾの市民団体の告発をうけて、(またまた構成人員が匿名化されている「一般市民」からなる)検察審査会が開かれ、驚異の全員一致で「起訴相当」の決定が出、それを受け検察が再捜査を開始、先日、事情聴取を受けたとのこと。
 思い出せば、思い出すほど、ムナクソの悪い話ですけど、今後、この件がどうなるのか、「一番、困っているのは検察だろう」という識者の読みはその通りでしょう。
 そもそもの罪状は、小沢氏の秘書が小沢氏の政治団体の取得した土地の代金の支払日と土地に取得日が2ヶ月ずれて報告したという「罪?」です。土地登記のプロによると、この場合は、土地は農地を宅地として登記する必要があり、その手続きなどで、代金支払い日と登記日がずれることは当たり前のことで、これは罪でさえないそうです。また、何らかの意図をもって、報告書の数字を2ヶ月ずらしたという「犯意」がないのであれば、刑法では「処罰」の対象になりません。検察は、この秘書が「何らかの意図をもって、わざと2ヶ月分、報告書をずらしたのだ」と強弁し、それが小沢氏との共謀であって、小沢氏も犯意を共有しているという、まずあり得ないおとぎ話を語ることで、自らの失敗を隠そうとしたわけです。そのために秘書を起訴せざるを得なかったのです。検察の失敗とは、去年から複数回行われた別件の強制捜査で、不法献金あるいは脱税の証拠を見つけようとしてできなかった(そもそも野党であった小沢氏に不法献金をするという前提に無理があります)ということです。昨年の衆議院選、今年の参院選の時期に合わせて、捜査を入れたというところには、政治的意図があったのは間違いないでしょう。メディアもさんざんその無理筋の捜査を正当化しようと煽りました。思うに「小沢氏ぐらいの政治家であれば、汚いことをやっていないはずがない、叩いてホコリが出ないはずがない」という思い込みがあったのでしょう。とにかく、微罪でも何でもよいから、別件で強制捜査を入れて、叩いてホコリを出して、証拠を押さえれば、全てが正当化できるはずだ、と甘い読みで突っ走ったのだと思います。結果、大山鳴動して鼠一匹という結果となり、本来なら、この大失態で検察特捜は自己批判して責任者は辞職するのが筋です。にもかかわらず、これだけの大捜査をして「見込み捜査で、間違えました、すみません」と言えない連中は、なんとか、秘書を起訴して失敗を隠して体面を保とうとしたわけです。スケープゴートにされた秘書の人は気の毒としかいいようがありません。秘書の起訴でさえ、体面を保つための無理筋で、検察もさすがに有罪になるわけがないことも知っていますけど、とりあえず体面さえ保てたら、人の噂も七十五日で、その内、人も忘れてくれるだろうとタカをくくっていたのでしょうが、ナゾの市民団体(暴力団系右翼団体といわれています)が告発して、検察審査会が開かれ、刀のおさめどころを失いました。検察審査会が起訴相当を出した以上、検察は再捜査をする義務があります。しかし、一年以上にもわたって、隅から隅まで探した挙げ句に何も見つからなかったわけで、いまさら再捜査しても何が見つかる訳でもありません。仕方が無いので、小沢氏を再聴取して形だけでも捜査したことにしよう、というのが先日の聴取でした。
 今後検察はどうするのか、追いつめられています。二つのシナリオがあると思います。一つは、ここで小沢氏を起訴することです。もしも、ここで不起訴という(当然の)決断をした場合、おそらく、検察審査会が再び開かれることになるでしょう。前回は全員一致で起訴相当でした。もしも二回目も検察審査会が起訴相当を出した場合、小沢氏は強制起訴されることになります。ここで強制起訴となった場合に、困るのは検察だと思います。というのは、強制起訴の場合、捜査資料を弁護士に渡して、弁護士が検察の代わりに裁判を行うことになるからです。検察は手の内に何も持っていないのです。報告書の記載をわざとずらして書いたこと(そもそも秘書も犯意は否定しており、犯罪でさえないのです)に対する小沢氏の関与を示唆する証拠は何もありません。捜査資料を弁護士が見た瞬間、ただの言いがかりで、検察の体面をたてるために、秘書をむりやり起訴したことが、ばれてしまい、公判維持不可能となります(検察がその弁護士を抱き込まない限り)。検察はだから強制起訴は避けたいと思っているはずで、その危険をさけるには、検察が自ら起訴するしかない、と思っているでしょう。もちろん起訴しても常識で考えれば小沢氏が有罪になるわけがありません。しかし、なんとか言いがかりで公判を少しでも維持できれば、 誤摩化せるのではないか、と判断する可能性があります。一方、この筋書きは彼らにとって危険でもあります。裁判官が検察の起訴内容を聞いて、即日、「ナンセンス!」と起訴を棄却してしまえば、検察のダメージは大きいでしょう。裁判官を抱き込む勝算がどれだけあるか、その辺を画策しているのかも知れません。この自爆劇を少しでも引き延ばすために、不起訴にするというのが、二つ目のシナリオで、一年延々と捜査をやってシロという結論を出した以上、検察もここで「起訴」としたのでは、かえって不信を招く(とっくの昔に招いていますけど)と、最低限のプライドを持って、不起訴を貫く可能性があります。それを受けて、もし仮に二度目の検察審査会が開かれた場合でも、必ずしも、起訴相当を出してくるとは限らないわけです。審査会では(検察の息のかかった?)弁護士が補助することになっていますから、二度目は、審査員の素人衆の意見を今度はうまく逆の方向に誘導できると思っているかも知れません。とすると、不起訴にして、検察審査会で強制起訴の結論が出ないようになんとか操作を試みるというのが彼らの希望なのではないでしょうか。
 私の予想では、検察は二つ目のシナリオをとるだろうと思います。今回も不起訴を決め、何とか、検察審査会の意見を誘導して、不起訴のままで事件の幕引きを図りたいと思っているだろうと想像します。

ところで、16日には8年前に放送される筈だった検察の裏金作りの告発番組が、 捜査で口封じ逮捕された元大阪地検三井環氏の刑期満了を受けて、放送された由。年間5億以上の税金を調査費という名目で、私的に流用してきた大阪地検を実名での内部告発を決断した三井氏が、告発のテレビ番組収録の当日の3時間前に、同僚の大阪地検特捜によって逮捕、でっちあげ裁判で不当に重い実刑判決となり収監されたのが8年前でした。マスコミは例によって三井氏をあたかも極悪人かのように報道し、巨悪を告発しようとした告発者の方を潰しました。この事件以後、大阪地検の調査費は、一挙に1/5以下に激減。しかし、偽造領収書などの物的証拠は残っています。以前にも、検察のけもの道で三井氏の話に触れましたけど、どうも検察は検察人事のことで、小泉政権に借りを作ってしまい、以後、自民党(というか小泉とその秘書)に政治的に利用されてきたらしいです。結局、そうした自らの罪を自分で断罪して自浄していくという機能が欠如しているためにに、検察は悪事に悪事を積み重ね、どうにもならない所まで来てしまったとうことのようです。彼らもマスコミも自浄作用というものがありません。過ちは小さなうちに正しておかないと、後で大きなツケを払うことになります。検察はおそらく、構造改革、特捜部の廃止の方向に向かうでしょう。マスコミは新聞が売れなくなって倒産していくことになるでしょう。
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