はな兄の1分で読めるエッセー

ふと脳裏に浮かんだ雑感を気ままに綴った日記

小説『ドンゾコ病院待合室午後9時10分』

2024-01-09 04:28:03 | 世の中

【この物語はフィクションで実在の人物・団体とは関係ありません】

 

 

「今どき消灯が9時なんて」と

眠れるはずがない人々が

薄暗い病院の廊下を歩き

一階総合受付待合室の片隅の席を陣取る。

ここは通称ドンゾコ病院。

社会の底辺に這いつくばって生きる

主に心の病を抱えてやってくる。

なお念を押しておきたいのはあくまでここは

ドンゾコ病院であり

ズンドコ病院ではない。

ドリフターズとは一切関係がないのだ。

 

 

前科持ちの看護師

キンタマの裏が白いアダルト男優

右足の人差し指と中指の接点の

人差し指側にできる角質層を指でつまんで

爪切りで切り落すことが趣味の男

彼は自分の足だけじゃなく

子どもの頃は妹の足も『狙って』いたという。

スベスベになった跡を指で撫でながら

ウットリする変態男。

『令和版・横山ヤスシ』と呼びたくなる

毒舌家であり、みなから面白がられている男。

主に彼が主導権を持って『座』が開催される。

 

ここはそんな

ひとくせもふたくせもある

落ちこぼれ野郎たちの吹き溜まりと化している。

 

「アメリカでは隣の席を確保すれば

ペット同伴もOKですが」

「アメリカだけじゃなくヨーロッパはもちろん

ほとんどの航空会社がOKです」

「なのになんで石田ゆりえは

そんなに日本中から

バッシングされなければならないのかわかりません」

「さあ。あくまで私見ですが、タイミングが悪かったと。つまりですね。

テレビのワイドショーで

能登地方の地震の悲惨な状況が映し出される。

死亡200人に迫り行方不明もそのぐらい。

がれきの下で「家族を頼むと言い残し」命を落とした夫。

寒い中で

配給品に列を作る人々の疲れた表情

それらのシーンを観て

同じ日本人として

人命の大切さ尊さを

全身をわなわなとふるわせつつ痛感して

一方ではまた同時にテレビの前の自分が

被災者に対し

どうにもできないもどかしさ、やるせなさが

フツフツメラメラと湧きおこってるわけです。

「なにかたとえ微力でも彼らの身に寄り添うことをしたい」

切実にこういう義侠心にもえさかるわけです。

と。そんなときに

テレビ画面が切り替わり

石田ゆりえが登場して

「ペットを

ケージに入れて飛行機内に同伴させてほしい」

という若い女性の発言が

石田ゆりえをバッシングするネット民。

倉田真由子。夕刊紙の『肉感ゲンダイ』などにとっては

(この重大な人命の危機が叫ばれている中)

とてつもなく甘っちょろい、能天気な考えのように思えてしまう。

なにせ『人命』に燃える人々だ」

 

日本航空のCAさんは頑張って

乗客の命を救った。

なのにその恩に砂をかけるような発言許すまじ

人命が大事だ

人命を優先だ

人命だ

貴様も能登地方の厳しい状況を知ってるだろう

ペットが大事だなんてしょせん

おんなこどもが考えるようなふぬけたお嬢様の思考だ

なあんてという気持ちになる」

能登地方の人々になり替わって

断固、ワタシは、オレは人命人権を守り

社会正義道徳の戦士になって

その敵、すなわちこの人命軽視能天気お嬢様女優を

言葉のつぶてで血祭りにしてやったろと

うでまくりし、舌なめずりし

ゆりえ嬢にバッシングを繰り返すんだろうと思うんだよね」

「異議ナーシ」

「ナンセンス!」

出席者からは次々に呟きが漏れ出くる。

 

「ネット民も倉田も肉感ゲンダイ編集長も

外国の航空会社では

石田ゆりえのいってることが

なんら常識外れではなく

ペット同伴が施行されていることは知っているんでしょう?」

 

「さあ?」

「すっとぼけているんじゃないですか」

「脱税がバレた時と同じように?

『全然知らなかったですぅ』って」

 

 

「ただひとつ

これだけは声を大にして

言いたいのはですね。

こいつらは信じられないほど

自分に甘く他人に厳しいってことです。

そりゃ誰だって

自分に甘い、他人に厳しい面はありますよ。

私だってもちろんそうです。

 

ですが

脱税漫画家や

嘘八百どころか嘘八百兆の夕刊紙にですよ

えっらそうに

「人命優先じゃないか」

と、大上段に構え

(誰も異を唱えられないような)『人命優先』の言葉を記した

水戸黄門の印籠のごとき印籠を

「ひかえおろう!」

と、ふりかざされたら

俺だったら

 

『フザケルナ!』

 

って映画『ライジングサン』の

ショーン・コネリーの様に発しますよ」

『どんな正義も

アンタにだけは言われたかねえ』ってことありますよねえ」

 

『肉感ゲンダイ・デジタル』の書き方が

ホントむかつくの。

『あらあら。石田のお嬢ちゃんは、いつまでそんな不思議な論理をおっしゃる

不思議ちゃんなのねえ。万年女の子なのねぇ」

みたいな感じの

すっごいバカにした

おちょくった見出しなの」

「何様なんだよ」

「なあ」

「腹立つ~」

「この編集部の粘着性いじめ的なウソ記事を書く記者たちって

ひょっとして子どもの頃、イジメられたタイプなんじゃないの」

 

「念のためにに言うけどさ

石田ゆりえが美人だからって、肩を持ってるわけじゃないよ。

もし、大久保佳代子だったとしても坂本美雨だったとしても

同じように俺は憤然となったぜ」

「『飛行機にペット同伴問題』が

『職場に子ども同伴問題』と同じように盛り上がればいいのに。

あのときは、林真理子対アグネス・チャン。

今回は、倉田真由子対石田ゆりえ」

「前回は結局どちらに軍配が上がったの?」

職場に託児所があるのが普通になってることから

アグネスじゃないの。

でも、オジサンが読む夕刊紙や週刊誌はみんな

林真理子の味方だったでしょ。

その当時の編集部のジジイは

今どういう弁解を言うつもりなんだ」

「だからぁ。いつものすっとぼけに決まってるじゃん」

「今回も同じような結果をたどるんだろう。世論も状況も」

「そのとき、石田ゆりえに彼らは謝るのかな」

「謝るわけないじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「肉感ゲンダイって

これまでの何十年の歴史の中で

一つの記事もウソの内容はありません

って言い張ってるの?」

「まさか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だけどさあ。よく考えれば

羽田の飛行機事故でさあ。

乗客全員の命が救えたのは不幸中の幸いだけど

よくよく考えてみれば

乗客たちは被害者ですよ。被害者。予定通りであれば

到着先で旅行を楽しんだ人もいるでしょう。

引っ越し先で荷物を整理してる人がいるかもしれません

出張先で新しい職場の仲間と飲んでいる人もいるかも

あるいは

大学受験に親子で乗った客もいた。

むろん家族同然どころか家族のだれよりも大事なワンコやニャンコ

それらの人は予定が全く狂ってしまい

所持品はすべて焼失し

かつ

家族同然どころかどんなかぞくより自分の命よりも大事とさえ思っている

愛犬を焼き殺された

正真正銘の大被害者ですよ」

「なのにたった今、能登の映像を観たもんだから

能登の悲惨な状況に比べればまだましな

なにかこの

日本航空の的確な対応によって

九死に一生を得られた

ラッキーな人々みたいに思われる。

はてまたは

「ケージに入れてのペット同伴を認めて」

と述べた石田ゆり子に

人命を軽視した

常識外れの

 

 

 

 

 

 

 



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