ギリギリ探偵白書・358


 ギリギリ探偵白書
 「恐喝男・第3話」


 
 以前、本気で殴り倒した三人組の若造は、今やT.I.U.の調査員となっていた。
 その内の1人と、おじさん扱いをされながら面談に向った。
 依頼者はある企業の社長だった。





社長は穏やかな青年といった感じであった。
そして、大事にしないでくれと言ってきた。

確かに大事にせず、穏便に物事を解決する事はベターな選択だが、
選択肢の中に「大事」という選択を含める事によって交渉事を上手く進める事ができる。

絶対に大事にしないという制約は、問題解決までを請け負った我々には非常に
難しい条件なのである。

依頼者であるこの会社社長は、大事にしないと約束してくれ、と私に迫った。


阿部   「・・・保証はできませんが・・・」

依頼者  「そこをなんとか・・・」

阿部   「できる限りやりますが、最悪の場合も想定して下さい」

依頼者  「とにかく、大事にしないという事で・・・」

(ちっ、堂々巡りだ・・・)


およそ、企業に対して恐喝のような行為を仕掛けてくる団体は
裏に暴力団が控えている事が多い。

本件でもその匂いはプンプンした。

都内ではそうした影響をあまり受けないためか、地方よりこうした圧力に対する
考え方が緩い。

多分、地方ならこの段階で警察に駆け込むだろうし、暴追センターに相談を
持ちかけるはずだ。

「穏便」

そんな言葉はありえない話なのだが・・・いくら説得しても依頼者さんは
ピンとこない様子である。


阿部   「最悪の場合は、とにかく刑事事件として告訴の可能性がある。
      それだけは譲れません。そうでなければ、これで中止を命令します」

依頼者  「・・・報酬は弾みますよ」

阿部   「この解決に関して、報酬ははじめからもらっていません。それに、
      その報酬は受け取れません」

依頼者  「・・・報酬は・・・」


私は依頼者を睨みつけた。


阿部   「・・・では、中止します。後はご勝手に」

依頼者  「ちょ、ちょっと、お金は要らないんですか・・・」

阿部   「いくぞ、カズヤ」

カズヤ  「・・・はい」

依頼者  「ちょっと待って。話します、話しますから・・・」


依頼者は帰ろうとする私の腕を掴んで一方的に話し始めた。
その内容は詳しく話せないのだが、どうやら、恐喝行為をしている人物が
言っている事も、一部、もっともな部分があるようなのだ。


阿部   「では、どうしろと・・・」

依頼者  「ええ、でも、お金を払えばこういう連中がたくさん来るだろうし
      マスコミにも騒がれる。。。もっともな部分は是正するとしても
      彼の団体にお金を払うわけにはいかないんですよ」

カズヤ  「・・・そういうのは、わかるんですけど。
      それは、難しいんじゃないんですか」

依頼者  「だから、プロに頼んでるんじゃないですか・・・」

カズヤ  「プロといっても、僕らは調査のプロであって・・・・」

阿部   「わかった。解決に関しては、御社の顧問弁護士に頼んでください」

依頼者  「いや・・・」

阿部   「そのかわり、必要な情報はこっちで収集します。
      例えば、誰を説得すればいいのかとか、具体的な情報をね」

依頼者  「いや、それは・・・」

阿部   「ようは一部是正しなければいけない部分を押さえればいいんでしょ。
      それには、弁護士が交渉に当たる。我々は、普通は調べられない
      情報を調べる。ものすごく有利な情報をね」

依頼者  「・・・それで、解決しますかね」

阿部   「いいや、させるんです。解決を」

依頼者  「わかりました。私はあなたを信じます」


そういう流れで、私は早速調査の指示を行った。

この調査の担当はカズヤ・リュウ・ナオの3バカトリオ・・・いや、T.I.U.3人衆だ。

しかし、彼だけではテクニカルな調査はまだ難しい。

私は早速、調査主任の田中を呼び出し、内偵調査を行うように指示し、
T.I.U.3人衆には、問題点についての調査を行わせた。

そして、私はこの問題の主格となる部分の情報収集を行った。




        続く



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