ギリギリ探偵白書・287


 ギリギリ探偵白書
 「居眠りにご用心・第1話」




 車の窓に雨が打ち付けられている。
 窓は水滴で埋まり、視界は極めて悪い。
 対象者に動きはないようだ。


サザビー 「う~ん、あと2分」

田中   「今日は空振りですね」

サザビー 「ああ、・・・ん」

田中   「ん、赤い傘・・・まさか」


 田中は、車から飛び出し、赤い傘の人物を追った。
 数分後、私の携帯がなる。


田中   「赤い傘のくせにオッサンでした」

サザビー 「あ、そ。んじゃ、今日は終了だね」

田中   「ラジャー。帰りましょう」


 我々は一路、事務所に向かった。
 雨は、ますます強くなる。
 

田中   「運転しづらいなぁ・・・」

サザビー 「ああ、良く見えないしな」

田中   「ええ、目が疲れますよ」

サザビー 「俺も眠くなってきたよ、ふぁああ」

田中   「晴れてりゃ晴れてたで眠くなるくせに!」


 気付くと、すでに事務所付近についていた。
 時計を確認する。先程より2時間経過していた。


サザビー 「ま、またタイムスリップしてしまった・・・」

田中   「寝ぼけてるんですか?」

サザビー 「これからは俺の事を時空を越える男と呼んでくれ」

田中   「寝言は寝てから言ってください」

サザビー 「冷たい反応だなぁ。食うと肥える男」

田中   「だだ、だ、誰がっ!?」


 事務所では、いつものように、あべちゃんがパソコンに向かっていた。
 手にタバコを持ち、半分意識を失っている。

 (うおっ!危ねっ。寝タバコかよ)

田中   「この会社、寝てばっかですね」

サザビー 「ああ、困ったもんだ」

田中   「あんたもっ!」


 とりあえず、拍手を一つ。
 あべちゃんの体がビクッと震え、ゆっくりと動き出す。
 あべちゃんは、周りを見回し、タバコを口に運ぶ。

 (また、吸うの?)

 何事もなかったかのように、パソコンを打ち始める。
 そして、しばらくして、ようやく我々に気が付いた。


阿部   「あれ、いたの?」

田中   「・・・・・」

サザビー 「俺ら、来なかったら火事になってたかもよ」

阿部   「そお?大丈夫だよ、寝てなかったし・・・」

田中   「ウソつけ!ガン寝でしたよ」

サザビー 「まったく、たださえ火の車なのに・・・」

阿部   「ははは、うまいね」

田中   「うまくないっ!!」

阿部   「よっ!座布団一枚っ!ヤマダク~ン」

田中   「座布団いらない!山田君もいない!!」

阿部   「なにカリカリしてんの?」

サザビー 「さあ?反抗期?」

田中   「違います。もう、今日は帰りますよ!」

サザビー 「どうぞ。バイバイキ~ン」


 田中は、プンプン言いながら、事務所を出て行った。


阿部   「なんだかなあ」

 (アトウカイ!?)

 2分後、田中が血相を変えて事務所に飛び込んできた。


田中   「ちゅ、駐禁が・・・」


 続きは言葉になっていない。


阿部   「最近、多いからね。気をつけなよ」

田中   「罰金は、どうすれば・・・?」

阿部   「うん、ちゃんと払った方が良いと思うよ」

田中   「えっと・・、お金が、その・・・」

阿部   「しょうがねえな、じゃあ会社で」

田中   「だいひょ~う♪」

阿部   「貸してやるよ」

サザビー 「ただし、利息はトイチやでぇ!!」

田中   「お、鬼っ!!」

阿部   「ああ、それから田中、まだ帰るなよ。調査応援だ」

田中   「な、弱り目に祟り目!?」

サザビー 「そういうこった、頼むでぇ」

阿部   「サザビーもだよ」

 (グゲッ!!)




        続く



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