ギリギリ探偵白書・281


 ギリギリ探偵白書
 「スナイパー・第3話」


 
 師匠との組手を終えると体のアチコチから悲鳴が上がっていた。
 痛いところを確認しながら帰る途中に事務所から電話がきた。
 なにやら物騒な相談だったが、田中に任せる事にし、帰路についた。




私は家に帰り、体にシップを貼った。
体中に貼ったためか、体温が下がったような気がする。

次の日、私が事務所に到着すると、狙撃事件調査の担当者になった田中が
泣きそうな顔で私の前にやってきた。


田中   「・・・あのっ、保険に入ってから、いや、結婚するまで
      この依頼待ってもらえないでしょうか!!」

阿部   「は?」

田中   「狙撃ですよっ!!撃たれたら死んじゃうじゃないですか!!
      せめて、死ぬ前に松坂牛を腹いっぱい食べたいです!!」

阿部   「おいおい、狙撃って言っても・・・」

田中   「とにかく、僕はやりません!!」

阿部   「おいっ、よく聞け、BB弾だぞ。本物なわけないだろ」

田中   「BB、BB弾ってあの?おもちゃの?」

阿部   「そうそう、もう一度、資料を読んでみなさい」

田中   「・・・・なんだ、BB弾か、はぁ~、びっくりした」


私は再度、資料に目を通した。


阿部   「ん?依頼者は20歳半ばの女性、犬の散歩が趣味ね・・・
      まっ、田中が受けないなら、他のヤツにやってもらうかな・・・
      誰がいいかな・・・」

田中   「やります!!やります!!僕がやります、僕の仕事です、僕が行きます」


なぜか、若い女性の依頼だと田中の鼻息が荒くなる。


阿部   「そうか、やるか、んじゃ、頼んだぞ」

田中   「はいっ!!」


田中はものすごい勢いで調査現場に向かった。

その日、私はいくつかの調査契約があったため、事務所で契約をこなしていたが
夕方近くになり、時間ができた。


阿部   「そうだ、田中のヤツはどうなってるかな?」

サザビー 「様子見に行ってみれば?」

阿部   「・・・それじゃ、ちょっくら行ってくるか」


私は事務所にあるオンボロスクーターで調査現場に向かった。
調査現場は新興の住宅街である。

大きなマンションが並び、子供が遊んでいたり、犬を散歩している若い女性が目に付く。

私は田中の携帯電話に連絡した。


田中   「・・・・撃たれました。ものすごく痛いです」

阿部   「大丈夫か!!そういえば、資料には缶に穴が開くって書いてあったな」

田中   「それを早く言って下さいよ!!・・・血、が出てます。
      死ぬかも・・・」

阿部   「・・・大丈夫か!!」

田中   「代表、・・・死ぬ前に美人と結婚したかった・・・・」

阿部   「おいっ、田中!!それが最後の言葉になるぞ!!」

田中   「あっ・・・それは格好悪い・・・」


電話をしながら、私は滑り台の上でうずくまっている田中を発見した。


阿部   「最後の言葉は、もういいや、とりあえず、そこで待っとけ」

田中   「・・・・言わせてくださいよ」

阿部   「だめ、BB弾で死んだなんて、笑えねぇーぞ。どっちを撃たれた?」

田中   「・・・え~と、お箸だから、左です」

阿部   「お箸は右だろ?」

田中   「そうじゃなくて、お箸じゃない方です」


周辺はマンション群である。
私はカメラの望遠レンズをとりあえず、田中の左側のマンションに向けた。
そして、レンズを絞り、一つ一つのベランダを見た。

(・・・1つ、2つ、3つ。。。。ん?)



        続く



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