ギリギリ探偵白書・２７５

　ギリギリ探偵白書
　「ペヤングとブタ刺し・第１話」


その日の私は、休みの無い状況に疲れきっていた。


阿部　　　「え～と、佐藤・・・いや、田中・・・ん？誰だっけ？」

サザビー　「番号は？」

阿部　　　「0567番・・・ん？この契約の日は5本契約取ったから・・・」

サザビー　「どれ？浮気？行方？詐欺？・・・」

阿部　　　「・・・・四角い顔だった！！」

サザビー　「ぺヤングかよっ！！」


頭の整理ができず、依頼者さんの名前が混同してしまう。
こうした事態がたびたび起こるので、調査番号で管理するようになったのだが
その番号すら思い出せない時がある。

普通、T.I.U.総合探偵社規模の探偵社なら、月に５～８件の依頼があれば、十分
なのだろうが・・・。


そこで、イメージで記憶するようにした。
依頼者さんのイメージや調査のイメージで関連付けて記憶する。

（受験生は一度やってみるといいですよ。関連付け記憶法）


サザビー　「・・・あったよ。ぺヤングって書いてある」

阿部　　　「おお、それだ、それ。そうだ、ストーカーだったな」

サザビー　「・・・調査担当は・・・ブーじゃん。あいつ、今日は直接
　　　　　　調査に行くって言ってたぜ」

阿部　　　「そうか、ブーちゃんだった」

※ブー・・・調査主任田中の愛称

サザビー　「・・・この資料がどうしたの？」

阿部　　　「ああ、どうやら○○さんのところが、ストーカー側の調査を
　　　　　　受けてしまっていたらしいんだ」

サザビー　「・・・犯罪者の手助けをしちゃったの？」

阿部　　　「そうみたいだな。しかし、○○さんのところは、婚姻前調査で
　　　　　　受けていて、写真とか資料とか持っていたらしいんだ」

サザビー　「・・・騙されちゃったってこと」

阿部　　　「ああ、それで総合解決を頼まれたんだよ」

サザビー　「これで、貸しいくつだよ。○○さん」

阿部　　　「調査の世界じゃ、重鎮なんだから仕方ないだろ」

サザビー　「まあ、貸しがあった方がやりやすいってことね」

阿部　　　「すまんな。ってことで、田中はどこだ」

サザビー　「ちょっと待ってね。今、位置確認するから」


T.I.U.総合探偵社は、浮気調査など標準的な調査も行うが、対ストーカー・詐欺師
など危険である言われる調査を得意としている。そのため、調査スタッフの装備品
には、「防刃ベスト・グローブ」「GPS位置情報機器」が含まれている。


サザビー　「・・・自宅だな」

阿部　　　「は？」


私は調査担当のブーこと、調査主任田中に電話連絡をした。


田中　　　「はいっ、今、依頼者さんの会社の前です」

阿部　　　「お前、装備はどうした？」

田中　　　「動きづらいんで、家に置いてきました」

阿部　　　「・・・バカヤロウ！！刺されてもしらねぇーぞ！！」

田中　　　「すみません・・・でも、代表もいつも装備してないじゃないですか」

阿部　　　「オレはいいの！！」

田中　　　「・・・で？何か用ですか？」

阿部　　　「ああ、ストーカーの特定が済んだ」

田中　　　「えっ！！もうですか！！」

阿部　　　「ああ、それで、ちょっと作戦を練るから合流するぞ」

田中　　　「了解です」


私は身元のわかっているストーカーの行動調査をサザビーに任せ、依頼者さんの
身辺警護と身辺調査を行っている田中と合流した。


阿部　　　「・・・というわけで、○○さんのところが依頼者さんを調査して
　　　　　　しまったということなんだよ」

田中　　　「だから、ストーカーの特定ができたってことですね」

阿部　　　「ああ、およそストーカーがやっていることもすでにわかっている
　　　　　　から、次の行為があったら、即確保するぞ」

田中　　　「了解です」


私はこの件を依頼者さんに全て話し、調査をしてしまった探偵社との和解を仲介した。
依頼者さんは和解金に納得し、満面の笑顔で解決を待つという方針を示した。

あとは、ストーカーを確保し、話し合いに持ち込む作業のみだ。

しかし、調査の展開は山の天候のように変わりやすい。


　　　　　　　　続く



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