ギリギリ探偵白書・265


 ギリギリ探偵白書
 「言われなくても・第4話」


 
 出前持ちを帰すと、私の後ろに頭が二つ並んでいた。
 社員と父親が揃って土下座していたのだ。
 私はこれまでの経緯を説明し、現状を打破する案を講じた。 




私は父親を連れ、法律事務所で法手続きを行うように話を整えた。
法律事務所で法律の話やら、法手続き(裁判)の話を聞いているうちに、
父親の顔つきが変わってきているのがわかった。


阿部    「ところで、騙されたというのは?」

父親    「○×君、いや、先程の社員が、実体の無い会社と取引をしまして
       しかも、その会社からの融資の話にのって、会社と私で多額の融
       資というか、投資をしまして・・・」

阿部    「気が付いたら、騙されていたということですか?」

父親    「新しい事業があるから、次で必ず前回の融資額を取り戻せると
       言われて、それを信じてまたお金を出して・・・」

阿部    「泥沼ですか?」

父親    「ええ、戻ってこないとわかった時には、闇金まで手を出していて」

阿部    「なるほど。相手の会社は実体が無い?」

父親    「登記はされているようですが・・・・。住所に会社が無くて・・」


私は再び、事務所に電話し、サザビーに会社名を告げた。


サザビー  「ちょっと待ってね。あっ、あったぜ」

阿部    「よしっ、そしたら、その会社の資金源を調査するから、準備頼む」

サザビー  「了解!!ところで、電話した?」

阿部    「電話?」

サザビー  「ああ、ブーから、連絡があったぜ。一応、張り込んでいるけどって」

(忘れてた!!)

阿部     「今、電話する」


私は時間を確認した。すでに時間は午後10時を回っている。
携帯電話でブーこと、調査主任の田中に電話をした。


ブー    「・・・おそいっすよ。今、強面の奴らが玄関蹴ってますよ」

阿部    「そうか。画を撮ったか?」

※「画を撮る」・・・撮影する。

ブー    「ええ、そりゃ、バッチリですよ」

阿部    「そうか、それじゃ、所轄に通報してあげなさい」

※「所轄に通報」・・・110番のこと。

ブー    「へっ?」

阿部    「そしたら、弁護士さんから告訴状の準備書面送るから」

ブー    「・・・・はて?」

阿部    「いいから、頼んだぞ」

ブー    「了解です」


ドアを蹴る行為は、少なからず器物破損、そして、大声で叫んで借金を返せと強引に
取立てをすることは、恐喝とも言える。まっ、法律談義は弁護士さんに任せよう。

次の日、借金取りは書類送検されることが決まった。
そして、払い過ぎた借金は父親の口座に振り込まれた。

私は再び、父親の会社に向かった。
会社は明かりがつき、昨日の社員が表玄関で私を待っていた。


社員   「ありがとうございます!!」

阿部   「あっ、いいえ、社長は?」

社員   「はいっ、娘さんと中で待っています」


私が会社の玄関から中に入ると、笑顔で依頼者が待っていた。
なぜか、ゼンまでいる。


ゼン   「すげーな。さすがプロだな」

依頼者  「ありがとうございます。ありがとうございます」

父親   「ありがとうございます。ありがとうございます」

(・・・まだ、終わってないよ)


私は架空の取引をでっち上げ、さらには架空の投資話で多額の金銭を騙し取った
とされる会社のデータが書かれた調査報告書をテーブルに広げた。


阿部   「まだ、終わってないですよ。
      今、この会社を調べているところです。騙されたんでしょ?」

父親   「しかし、そう簡単には・・・、それに借金からは解放されたわけですし」

ゼン   「そ、そうだよ。離婚はなくなったんだぜ」

阿部   「そうか?オレにはこの会社が再建できるようには思えないが?」

父親   「・・・・鋭いですね・・・。今の現状では確かに・・・」

阿部   「ここからがT.I.U.の本領の見せ所ですよ」

父親   「しかし、それまでは・・・」

阿部   「2ヶ月、何とかしてください」

父親   「わかりました。何とか頑張ってみます」


そして、調査は順調に進み、相手の会社の全容が判明。
資金源も判明することに成功した。

わずか3日間。スタッフ総出の緊急の調査は、自分でも驚くほどの結果が出ていた。

私は即座に弁護士に連絡をし、依頼者と依頼者の父親に連絡をした。

そして、すぐに裁判書類が作成され、その会社の資金源の全てに仮差し押さえの
手続きが行われた。

そして、その裁判が始まる前に、父親の口座に和解金が振り込まれた。
騙し取られたとされる全ての金額が戻ってきたのだ。

その後、ゼンから私の携帯にメールが入った。

「今度は仕事じゃなくて、遊びにこいや。・・・ゼン」

・・・言われなくても行くよ。




        完



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 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
 また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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