ギリギリ探偵白書・２４０

　ギリギリ探偵白書
　「お一人様１回・第１話」



その日、私は都内の巨大なターミナル駅に向かった。
この駅で相談者の女性と待ち合わせることになっている。

それは、3日前の電話相談から始まった。
相談の内容はストーカーについてであった。

しかし、この女性は10代の学生であったため、単独での契約ができない。

（民法で未成年の契約には親権者の同意が必要となっているのだ！！）

被害の内容は元彼氏とその仲間からの執拗な待ち伏せや付きまとい行為であった。

そして、それは緊急を要する内容であった。

後日、母親と一緒にこの日、契約をすることになったのだ。

20分前に現地に着いた私は、そのターミナルが見える歩道橋に立っていた。

（ここなら良く見えるな）

そして、時間ピッタリに女性から電話がかかってきた。
その様子は歩道橋にいる私からは、よく見えている。

私は女性と母親を確認し、少し、ターミナルを歩いてもらう事にした。
こうして、グルグルと不自然に歩いてもらう事で、尾行者を割り出す事ができる。
案の定、一人の若い男性が付いてきていた。

私はその男の写真を撮り、高級なホテルの最上階にある喫茶店に向かった。
ちなみにこのホテルはロビーで行き先を聞かれる。
しかも、高級なため、あまりにラフな格好では入る事ができない。

ストーカーの若い男性は、パンツが見えるくらいの位置でジーパンを履くような
超ラフな格好をしているため、多分、このホテルには入る事ができないだろう。

ホテルの喫茶店で待つこと5分。
ホテルのスタッフに連れられて、女性と母親がやってきた。


母親　　　「あなたが阿部さんですか？」

阿部　　　「はい、相談の前にまず、これを見てください」


私は先ほど撮った若い男性の写真を差し出した。


女性　　　「はぁ～！！これ・・・は、どうして？」

阿部　　　「ストーカーですか？」

女性　　　「はい。これは、元彼の仲間の人です。でも、どうして・・・」

阿部　　　「いつもの事ですから。歩き回ってもらったのは、こういうことです」

母親　　　「契約します！！」

阿部　　　「え？」

女性　　　「契約します！！」

阿部　　　「え？・・・・あっ、ありがとうございます」


私は持参してきた契約書を渡し、契約条項の説明をした。


母親　　　「あなたなら、大丈夫。今、プロの仕事を見せてもらいましたから！！」

阿部　　　「・・・それほどでも・・・」

母親　　　「娘が元の生活に戻れるためなら、私は何でもします！！とにかく
　　　　　　あいつらを退治してください！！」

阿部　　　「退治って・・・まぁ、元の生活に戻れるようにがんばります。
　　　　　　それで、まずは、今日、あなた方を尾行してきた男は多分、ホテルの
　　　　　　前で待っているでしょうから、タクシーに乗って、撒いちゃって下さい」

母親　　　「タクシーに乗るんですね」

阿部　　　「ええ、タクシー乗り場がありますから」

女性　　　「それで撒けます？」

阿部　　　「私が見てますから、その時はその指示をします。大丈夫」

母親　　　「じゃあ、早速、タクシーに乗らないとね！！行くわよ！！」

（妙に気合入ってるな・・・。大丈夫か？）


女性と母親は無事にタクシーで若い男を撒いた。
しかし、ここからが私の仕事である。
まず、私はこの若い男を尾行して、身元を判明した。
そして、軽く聞き込みをして、勤め先を判明した。

私はこの日の調査をここまでにして、事務所に戻った。
このストーカー調査に必要なスタッフを招集しなければならない。
ストーカー調査は一人ではできないのだ。

事務所に戻ると、田中が大盛焼きそばを必死で食べていた。

※田中・・・T.I.U.総合探偵社調査主任、通称「ブー」、体脂肪率３０％越え！


田中　　　「どうでした？ストーカー？」

阿部　　　「身元が一人、判明したよ。一応、一部始終は撮ったし」

田中　　　「・・・契約に行って、早速ですか・・・」

阿部　　　「それより、ブー！！お前、この焼きそば、全部一人で食うつもりか？」


焼きそばは大盛りビックサイズが、5つ積み上げられている。
総カロリー約4500カロリーである。


田中　　　「ええ、応募してそのＭＰ３プレイヤーを当てるんです！！」

阿部　　　「・・・もしかして、１日１回応募するつもりか？」

田中　　　「イエス！！そしたら、応募期限までに90回応募できるでしょ！」

（１日３食、３０日×３回応募＝９０回ということ？？）

阿部　　　「・・・まぁ、がんばれ」

田中　　　「オッス！！がんばります！！」


しかし、田中は気が付いているのだろうか？


「応募はお一人様1回とさせていただきます」

の注意書きに・・・。


阿部　　　「そういえば、サザビーはきてるか？」



　　　　　　　　続く



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