ギリギリ探偵白書・237

 ギリギリ探偵白書
 「メシが美味いという事・第3話」


 
 相談の電話を受け、調査に出向く事になった。
 私はホテルの食べ放題に出かけた田中を連れ戻すためホテルに向かった。
 そこでは、田中とおばちゃん連中の壮絶な戦いが繰り広げられていた。
 なんとか田中を連れ出し、依頼者の元へ向かった。





調査現地は、超高層ビルの高級マンションであった。


阿部   「え~と、この辺でいいだろ。来客用って書いてあるし」

田中   「はい。ここら辺ですね」

阿部   「しかし、すげぇーマンションだな。月いくらするんだ?」

田中   「カレーですね。うん、多分”こくまろ”ですよ」

阿部   「な、なんだ?」

田中   「カレーの匂いがしますよ。ホラッ、多分、2階の角部屋」

阿部   「カレーの匂い?・・・そんなのしないけどな・・・」

田中   「代表。大丈夫ですか?ホラッ、五感をフル活用すれば・・・
      う~ん、やっぱり”こくまろ”だ」

阿部   「こくまろってなんだよ?彦麻呂の仲間か?」

田中   「味の宝石箱やぁ~、じゃなくて、カレールーの種類ですよ」

阿部   「・・・おれは、カレーより彦麻呂の二重顎が気になるけどな。
      ネタにつまってきたとか・・・。」

田中   「僕は、こくまろが気になりますよ。
      僕的には、やっぱり、しょうゆを隠し味にして、一味唐辛子ですかね」

阿部   「ケチャプにあめ色たまねぎだろ」

田中   「しょうゆに一味唐辛子ですよ。ケチャップは反則です」

阿部   「しょうゆは聞いたことあるけど、唐辛子はないだろ」

田中   「いやあ、これが効くんですよ」

(ハッ!!言い争いをしている場合ではない。約束の時間だ!!)

阿部   「・・・わかったから、時間だ。調査の時間」

田中   「一味唐辛子は譲りませんよ」

(はいはい、わかったよ)


我々は5機もあるエレベーターの内、「高速」と書いてあるエレベーターで
依頼者さんの住む階へ向かった。


田中   「このエレベーターって、シンドラー製じゃないですよね」

阿部   「三菱って書いてあるぜ」

田中   「異常に速いですよね」

阿部   「高速って書いてあるだろ」


確かにこのエレベーターの速さは異常だった。体に若干のG(重力)を感じた。

目的の階に着くと、豪華なエレベーターホールのソファに依頼者さんが腰掛けていた。


依頼者さん「探偵さん?」

阿部   「○×さん?」

依頼者さん「早速、お願いします。案内します」

阿部   「ええ。じゃあ、むかいながらお話を。調査の発端は何ですか?」

依頼者さん「・・・強盗ですよ」

阿部   「強盗?」

(そんな強盗とは!!普通、警察だろ・・・。)

よく依頼者さんの話を聞くと、強盗ではなかった。

しかし、盗難の被害は受けたようだ。

そして、その盗難被害は金庫に保管していた数千万の現金の内の一部で
残されていた証券などは手付かずだった。

依頼者さんは、事を大事にする前に自分で解決しようと思ったらしい。
その解決方法が指紋鑑定だった。


阿部   「○×さん、とりあえずなんですが、強盗じゃなくて窃盗ですよ」

依頼者さん「窃盗ですか・・。もしかして、阿部さんは元刑事さんとか?」

阿部   「違いますよ。では、調査を開始します。田中、まずはパタパタしてくれ」

※パタパタ・・・埃を取る作業。

田中   「はい。え~と、この粉末は・・・」

阿部   「これは、このハケにつけて、じゃなくて、こっちのスプレーを
      まず振り掛けるんだろ」

田中   「・・・そうでした。ん?」

阿部   「今度は何だ?」

田中   「今日はビーフストロガノフですね?」

依頼者さん「・・・よくわかりましたね」

田中   「赤ワインと肉の匂い、ん?肉は前沢牛では?」

依頼者さん「・・・すごい!!肉の種類までわかるんですか?」

田中   「まあ。(満面の笑み)」

阿部   「田中、田中く~ん、そろそろ、仕事しようか」

田中   「・・・・匂いが気になって仕事に集中・・・」

阿部   「・・・もし、よろしければなんですが、残りがあれば・・・」

依頼者さん「あっ、お~い、夕飯、一緒に大丈夫か?」

奥さん  「大丈夫よ。それじゃあ、たくさん作るね」

阿部   「すみません。田中、良かったな。さっ、集中、集中!」

田中   「あっ!!タッパを忘れた!!」

阿部   「・・・おいっ、食欲の前に仕事しろ!!」

田中   「はいはい・・・、わかりましたよ」


指紋の採取は無事終了した。確かに金庫周辺には、家族の指紋だけが多く残されていた。


阿部   「ご家族の誰かということか、それともプロの窃盗犯か
      ありきたりですが、そんな結果ですね」

依頼者さん「・・・プロですかね?」

阿部   「息子さんは?」

依頼者さん「一人います」

阿部   「今は?」

依頼者さん「予備校に行っていますが、うちの息子に限って・・・」

阿部   「田中、金庫のダイヤルとキーの指紋は?ん?田中?」


田中がいない。

そう思ったが、田中は夕飯をつまみ食いしていたらしい。
台所で依頼者さんの奥さんが作ったから揚げを頬張りながら、めんどくさそうに
居間へやってきた。


田中   「・・・なんですか・・。え~と、ダイヤルの指紋は二つ
      キーの指紋は二つ、旦那さんと多分、息子さんです」

阿部   「息子さんが金庫に触れる事は?」

依頼者さん「ないです。そもそも、番号も知らないはず・・・」

阿部   「あれは、百万変換ダイヤルですよね?」

依頼者さん「百万円もしませんよ」

(そういうことじゃなくて・・・・)

阿部   「・・・え~と、番号は4つですよね」

依頼者さん「えっ?なぜそれを」

阿部   「私は鍵師なんですよ。探偵であると同時に鍵の専門家なんです」

依頼者さん「・・・」

阿部   「もしかして、息子さんの誕生日は、○月○○日じゃないですか?」

依頼者さん「・・・なぜそれを!!鍵師だからか!!」



        続く



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 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
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