ギリギリ探偵白書・16

その日は、調査明けだった。
あまりに長時間の調査だったため、自宅で夕方まで休むことにした。

こういう時は、いくら寝ても寝たりない・・・。

夕方になり、事務所へ電車で向かっていると、乗換駅で電話が鳴った。


阿部    「はい」

サザビー  「おう、いまどこよ?」

阿部    「○○駅だけど」

サザビー  「んじゃあ、あと10分くらいだな」

阿部    「まあ、そうだな。なんかあったのか?」

サザビー  「ああ、実は松本に連絡がつかないんだ・・・」

阿部    「デートでもしてるんじゃないか?」

サザビー  「それはないな!!
       状況は着いてから説明するから急いでくれ!」

阿部    「ああ、わかった。」


私はとりあえず、急いで事務所へ向かった。

松本は今現在、私の補佐をしながら、単独で調査を行っている。
成長株であり、幹部候補の一人だ。

しかし、彼が現在、何の調査をしているかまでは私にはわからない。

駅から急ぎ足で事務所へ向かうと
10名以上の調査員が事務所へ集結していた。

サザビーは電話で手の空いている調査員を事務所へ集めていた。
普段、そうした連絡をしたがらないサザビーだけに
何らかのトラブルが起こった事は予想がついた。

私が相談室へ入ると、ホワイトボードが用意され、
松本の行動や調査中に確認の取れた経路などが貼りだされていた。

私はハンバーガーを食べながら
そのホワイトボードに書き込みをしている田中に状況を聞いた。

阿部   「田中、どうしたんだ?」

田中   「マッツンがいなくなったみたいで・・・」

阿部   「それは知ってる。何の調査だ?」

田中   「行方ですよ。多重債務の・・・」

阿部   「あん?それで行方不明か?」

田中   「まあ、そうなんですけど・・・」

阿部   「ん?この関係者って?」

田中   「ええ、他にも追ってたヤツがいるみたいですね。」

阿部   「ラチられたとでも?(さらわれた?)」

田中   「サザビーさん曰く、その可能性が強いみたいで・・・」

サザビー 「あべちゃん、早かったな!!」

阿部   「大げさすぎねぇ?(連絡が)キレてからどのくらいよ?」

サザビー 「まあ、丸1日ってトコだな。」

(まずいな・・・
 もしラチられたならタイムリミットは長くて3日程度・・・)

阿部   「吉○をオレにつけろ。いいな!!」

サザビー 「そのつもりで、待機させてる」

私は元○○○という経歴を持つ吉○ともに、松本救出作戦に出発した。

事務所のそばには、吉○の車が止めてあった。
彼は、携帯電話でその筋の情報を収集していた。

阿部   「吉○、運転は俺がする。お前は、情報とってくれ!!」

吉○   「わかりました」

私と吉○は約5時間ほど、車で都内を回り情報収集を行った。

その結果
松本の追っていた対象者に追い込みをかけている業者が判明した。

吉○   「代表。○○会って知っていますか?」

阿部   「いいや、知らん。オレは一般人だからな」

吉○   「そうですか・・・。松本、大丈夫かな・・・」

阿部   「やばいのか?」

吉○   「まあ・・・、今、場所がわかるはずですから・・・」

阿部   「わかった。オレの携帯でサザビーに連絡してくれ。
      アタマ(人数)を揃えろって。」

吉○   「・・・代表。・・・・わかりました」

吉○は、サザビーに連絡を取り
都内某所に調査員を集結させるように連絡を取った。

続々と調査車両が集合場所に集まってくる。
全員、緊張した面持ちであった。

田中がフルボディ防刃ベストを配り始めた。
しかし、全員分の数はない。

田中   「代表。これ」

阿部   「お前が着とけ」

田中   「しかし・・・・」

阿部   「オレは大丈夫だから、お前らが着ろ。
      見習いから着せていけ、わかったな」

田中   「ってことは、僕のは・・・わかりました」

まだ全員が集まっていないが
吉○の携帯は無常にも松本の居場所を告げた。

我々は車両に乗り込み、その場所へ向かった。

首都高速から約1時間半、あたりはすでに真っ暗になっている。

車を走らせながら、私は松本の無事を祈っていた。

(松本の運次第・・・、無事でいてくれ・・・・)

峠道からわき道に入る。
わき道に入ると同時に、車のヘッドライトを消した。

少し走ると、大きなフェンスが目の前に見えてきた。
フェンスから50メートル程度手前で車を止めた。

田中が赤外線スコープを持ち
暗闇の中に停めてある車のナンバーを確認した。

田中   「代表、あの車です」

阿部   「わかった。吉○、相手の人数は何人だ?」

吉○   「二人だと聞いています」

阿部   「オレが行くから、お前らは待機しろ」

サザビー 「あべちゃん!!そりゃ無理だろ」

阿部   「全員、無線。オレのはオープンにしておくから
      ヤバくなったら全員来てくれ」

サザビー 「お~い!!人の話し聞けよぉ!!」

阿部   「行ってくる・・」

私は身を沈め、フェンスの切れ間から、車両の方へ向かった。
イヤホンから、田中の指示が聞こえる。

田中   「こっちのスコープでは、確認できません」

さすがに冷や汗が吹く出してくる・・・。


「あべさん?」


後方から松本の声がした。

田中   「代表、後ろです。後ろ!!」

(ちっ、エンジン音でバレタか!!)

私は振り向き、身構えた。

そこには・・・・

松本が立っていた。しかも、一人で・・・。

(無事だったか!!)

阿部   「まずは逃げるぞ」

松本   「何かあったんですか?」

阿部   「は?・・・・どういうこと?」

松本   「アッチの川岸で提供(情報提供者)がク○たれてますよ」

阿部   「提供?・・・お前、ラチられたんじゃ・・・」

松本   「そんなヘマはしませんよ。
      ここを越えた産廃場にいるらしいんで・・」

阿部   「だれが?」

松本   「マルタイ(調査対象者の事)ですよ」

阿部   「ちょっと待て・・・、整理させてくれ・・・」

松本は調査中に何度も
ちょっとヤバ目の連中(後に提供者となる)と鉢合わせた。

その度に、文句を言われていたようだ。
そのことは、逐一、調査指揮についていたサザビーに連絡していた。

しかし、松本と彼らは共通の目的から、お互いの利益を考え、
少しづつ情報を共有するようになった。

そして、互いにマルタイが産廃場に隠れている事を掴んだ。
この段階では、場所までの特定は大まかにしか掴めていなかった。

そこで、その地域に行き共同して聞き込み調査を行った。
もちろん、山奥のため、携帯電話が圏外になっていたのだ。

通常であれば、どこかで現在位置や定時連絡を調査指揮にするのであるが、松本にとって、探偵としてのプロの意地が協力者より早く情報をつかもうという焦りとなり、連絡する猶予すら与えなかった。

見事、場所を特定したが、連絡しようにも圏外になっていた。
明日、連絡すればいいや!!と思ったのだそうだ。


阿部   「はぁ~・・・。馬鹿馬鹿しい。心配かけんなよ」

松本   「代表、もしかして僕の事が心配で・・・」

阿部   「お前は一度、死んどけ!!バカたれ!!
      おーい、みんな出て来いよ」

(ダッダッダッダッ!!ドーン!!)

サザビーの走りこみキックが松本に炸裂した!!

田中   「プっ、今回はサザビーさんの勇み足っ!ですね(爆笑)」

松本   「タップタップ!!痛いって!!誰かぁ~!!」

サザビー 「うりゃぁ、俺の休みを返せ」

(まあ、なんであっても、無事だった・・・初歩的ミスだな・・・)

その日の内に行方不明者は、見つかった。

え?取立てしたのかって?
いいえ、そんなことは他の人にやってもらって下さい。
例えば、弁護士さんとかね・・・。

我々の受けた依頼は、淡い初恋の手紙を渡す事。
そして、返事の手紙をもらう事・・・。

それにしても長い1日であった。



        完



 メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。

 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
 また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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無事保護?

不明の女児、小田原で無事保護 男を誘拐容疑で逮捕(朝日新聞) - goo ニュース


21日から行方不明になっていた長野県小諸市の小6の女児が無事保護されたようです。

家出?
連れ去り?
誘拐?
失踪?

理由はわかりませんが、無事に保護されたと言う事で両親も一安心といったところではないでしょうか。

テレビで自分の顔が出ているのを見て出頭したとの事ですが
一緒にいた31歳の男性が逮捕されたようです。

さて、この二人、出会いはインターネットだそうで
ま、出会い系って奴ですか。

こりゃ本当に大きな事件にならずによかったですね。
一歩間違えれば・・・。

しかし、この事件、もし出頭してこなかった場合
警察は発見する事が出来たのでしょうか?



(代表代理サザビー)

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