ギリギリ探偵白書・15

田中   「代表、今日はラーメンにしましょうよ」

阿部   「おう、いいな。じゃあ、オレはみそラーメンな!」

田中   「じゃあ、僕はしょうゆ・・・、やっぱ、とんこつ・・・」

ワタボン 「早くしろよ。注文できねぇだろ!」

田中   「うーん、・・・とんこつ!!」

ワタボン 「ファイナルアンサー?」

田中   「イエス!!ファイナルアンサー!!」

(田中がトンコツ・・・共食い?)

そんなわけで、ラーメンが来るまでの間、T.I.U.は一時休息に!

そんな中、サザビーが外出先から帰ってきた。

サザビー 「おっ、あべちゃん、いたいた!!」

阿部   「は?」

サザビー 「こちら、保険屋さんで○○さん、相談があるんだって」

阿部   「あっ、っそう・・・じゃあ、相談室で待っててもらって」

サザビー 「ああ、じゃっ、相談室へどうぞ・・・」

(バタバタバタバタ)

ラーメン屋「ほほーい!!ラーメンお待たせ!!」

田中   「お代は代表ね」

ラーメン屋「2800円よ。釣り、ないからな」

阿部   「はぁ?何だお前?」

ラーメン屋「はじめての人に、お前とは何だ、お前!!」

阿部   「はじめてじゃねぇーだろ。常連だろ!!
      釣りぐらいもってこいよ!」

ラーメン屋「あ~あ、おちゅりは持ってるよ。何言ってる!!」

阿部   「は?そう、じゃあ、3,000円な」

ラーメン屋「毎度ね」

阿部   「おい!!おつり!!」

ラーメン屋「冗談よ。冗談通じないね、お前!!ほら、200円」

阿部   「はいはい、どうも」

ラーメン屋「田中、お前共食いだぞ!!気を付けろ!!」

田中   「・・・・・コラー待てぇー!!」

(バタバタバタバタ・・・・)

(はぁ~、何か疲れるな・・・。まっ、みそラーメンはっ、と・・・)

サザビー「あべちゃん、お待たせだぞ!!早く聞いてやれよ」

阿部  「まて、五分で食べるから!」

サザビー「待てない!!早く行けよ!!」

(タイミング悪っ!!仕方ない、待たせても悪いから行くか・・・)

私は相談室に行った。保険屋さんは深刻そうな顔で私を見た。
そして、話し始めた。

保険屋さん 「私には子供がいます。見えますぅ?」

阿部    「はぁ」

保険屋さん 「その子はどこにいるでしょう?」

阿部    「は?」

保険屋さん 「夫のところです」

阿部    「はぁ」

保険屋さん 「私、子供に一目でいいから会いたいんです!!」

阿部    「はぁ。・・・・・はぁ?」

その保険屋さんには、子供がいた。若くして産んだ子供だった。
しかし、夫との関係は日増しに悪くなった。
経済的にも厳しくなった。

そこで、保険屋さんは働きに出ることにした。
そして、ある男性と知り合い恋に落ちた。

ここまでは、ただの不倫話だが・・・
彼女らは子供を連れて、旦那との離婚を考えた。

しかし、家出当日
子供は、夫の母親によって実家に連れて行かれていた。
そして、子供に会えぬまま、彼女は離婚した。

その後、知り合った男性とも上手くいかなくなった。
そこで、再起を図り、保険屋さんになったという事のようだ。

ようやく落ち着いてきて、どうしても子供に会いたくなった。
しかし、今どこにいるかもわからない。

そこで、保険屋さんは以前、営業をした事のあるサザビーに相談し
私のところにやってきた。

阿部    「で?会ってどうしたいんですか?」

保険屋さん 「わかりません。
       ただ、母親として子供に会いたいという・・・」

阿部    「つまり、面会請求をするにあたり、
       子供の住所が知りたいという事ですか?」

保険屋さん 「そっ、そうです。とにかく会いたい」

阿部    「会うには、前の旦那さんの承諾が必要ですから
       そのあたりはしっかりして下さいね。」

我々は、早速調査にかかった。

こうした場合、やはり基礎情報からペーパーチェイスに入る。
そこで、いくつか検討をつけ、現地に聞き込みに行くのだが・・・。

電調(電話で調査を行う)で子供の所在がわかったのだ。
調査開始から約2時間と経っていなかった。

阿部    「今出れば、夕方には着くだろ」

田中    「まぁ、そうですね」

阿部    「そういえば、オレのみそラーメンは?」

サザビー  「伸びないうちに俺が食っといてやったぜ!!」

(はぁ・・・食われちゃったのね・・・)

阿部    「じゃあ、サザビー、現地に行ってくれ!!」

サザビー  「え?おれ・・・・わかったよ。行ってくるよ」

それから、程なくしてサザビーから連絡が入った。

子供の顔などの一部始終が撮れたと・・・。

サザビー  「一応、確認してもらうためにな」

阿部    「必要ないような気がするけどな・・・
       まっ、確認してもらうか」

次の日、保険屋さんは田中に心筋梗塞などの入院保険を勧めていた。

田中    「えぇぇ、1日あたり100円ぐらいなんですか!!」

保険屋さん 「そうですよ。若いうちから入っとかないと・・・
       結婚する時とか、重要ですよね」

田中    「つまり、保険に入るとモテる?ってことですか!!」

保険屋さん 「・・・そう、女の子はみんなそうですよ・・」

(んなワケねぇーだろ!!)

阿部    「あのぅ、○○さん?これ、わかります?」

保険屋さん 「なんでしょう?メッシュのベスト?」

阿部    「防刃のベストです。ここに傷がありますね?」

保険屋さん 「確かに・・・、何の傷ですか?」

阿部    「ナイフで刺された跡です。
       で?私でも入れる保険はありますか?」

保険屋さん 「え?刺される?ナイフで・・・・。」

阿部    「コイツ(田中)は最前線ですよ。現場の。
       本当に掛け金1日100円程度で良いんですか?」

保険屋さん 「・・・・・あっ、そうそう。今日は報告でしたね」

阿部    「そうです。今日は調査が完了した報告の日ですよ」

田中    「あっ、あのう、モテる保険は?」

阿部    「あるわけねぇーだろ!!バカ!!」

相談室には、ビデオデッキとテレビが設置されている。
その中に私は、サザビーの撮ってきた子供のテープを入れた。

彼女は子供が大きな声で「ただいまー」というシーンを
何度も繰り返して見ていた。

涙を流しながら・・・・。

そして、一言、つぶやいた・・・・。


保険屋さん  「ごめんね、○○ちゃん・・・・」




        完



 メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。

 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
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