つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

桐野夏生さんの小説「残虐記」/小説、性悪説や人間の癖などがデフォルメ

2019-12-02 19:43:30 | 本の感想/読書日記

すっかり冬。イルミネーションはどちらかというと青系が好き。冬はイルミネーションが綺麗にみえるらしい。

桐野夏生さんの小説「残虐記」(新潮文庫)を読んだ。

残虐記 (新潮文庫)
桐野 夏生
新潮社

桐野夏生さんのお名前はかなり前から知っていて、かなり前に読もうとしたことがある。そのとき、当時のあたしにはしっくりこなかったんだとおもう。数ページ読んで「合わなかった」「気持ち悪かった」と読むのをやめてしまった。どの本だったかは覚えていない。

ところがここ数年は気にいって読んでいる。読まず嫌いだったのかもしれない。

今回の「残虐記」は、「顔に降りかかる雨」「グロテスク(上)(下)」「天使に見捨てられた夜」「OUT(上・下)」に次いで5話、7冊目の拝読。

桐野夏生著「天使に見捨てられた夜」 (講談社文庫)、読書感想 女性として
桐野夏生「OUT(アウト)上・下」/小説(講談社文庫)の読書感想 自分のいやなところがみえる


どれも面白くというのとは少し違うかもしれないけれど、ページに引き込まれるようにして読んでいる。やっぱり文章がうまい気がする。文章がうまいと内容はさておき読んでいけてしまう。

桐野さんの小説は、あたしも含めて一般の人が目を背けがちな世界を描いている気がする。たいていの場合、女性が主人公。そして自分だったら見たくない部分、書いてくれている気がする。うん、彼女の小説に登場するような部分はあたしのなかにもあるんだよね。

残虐記の主人公は、かつて1年間くらい誘拐されていた経験を持つ女性。ひとりの男性に監禁されてそこで発見されるまでの1年間暮らしていた。
なんだかそういう事件最近、あったよね。。。現実にありそうなことが怖いし、現実にありそうだからこそ、小説に書いてくれることによって、あたしも含めて人々が考えるきっかけにもなればいいなとおもう。


大人になった主人公が当時を振り返るという形式で書かれている。この小説の驚異的なのは、いい人がひとりも出てこないことだとおもった。

誰もがエゴを持ち、そのエゴが綴られている。他人の不幸は蜜の味だったり、喜んでいてもそれは相手のためではなく自分のゆがみのあらわれだったりする。


誘拐監禁なので、設定されている環境がアブノーマルというのはあるかもしれない。けれどもノーマルな人がみても身につまされるというか、考えさせられる小説だった。(僭越ですが、一応ノーマルに自分を括って書いています。)
何重もの種明かしの連続だから、内容を書くのは控えるー。

アブノーマルな人にしか何かを訴えかけない小説だったら、一般大衆向けに販売されるわけがないので、当たり前かもしれないけれど、なんだかすごい小説だなとおもった。

人間関係がデフォルメされているから、自身の対人関係の癖を振り返るよい題材かもしれない。

詳細は忘れてしまったのだけど、読んでいるとき、「あれ? あたしのあれは単なるあたしの〇〇じゃなきゃという思い込みだなー、それにはまっていたよ」という気づきが何度かあった。

こういうのは自覚して見つめ直せばもちろんそれに越したことはないけれど、そのままスルーしてしまっても、一度気づいたからどこかに引っ掛かってなんらかの形で作用しているとおもっている。だから今回はこれでよしとするのだ。

そしていつの日かまた読み直したい小説のひとつなのだった。

ではまた


東京都豊島区池袋で読書交換会を開催しております。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
東京読書交換会ウェブサイト
※今後の予定は12月21日(土)夜、12月の平日夜はお休みです。

臼村さおり twitter @saori_u
思考していることを投稿しています。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 村山由佳「天翔る」、居場所... | トップ | 立冬は漏れていたものを集大... »
最新の画像もっと見る