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加工貿易経済モデルの限界について

2014-11-16 20:11:12 | 税金・納税者
最近,資本主義が終焉するのではないかと言うことを論述する著作が多数出版されている。

幾つかを例示する。

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
クリエーター情報なし
集英社


じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路 (単行本)
クリエーター情報なし
筑摩書房


Capital in the Twenty-First Century
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Belknap Press


MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
クリエーター情報なし
NHK出版


既読なのは,1番目と4番目のみである。

しかし,2番目と3番目を読まずとも,18世紀以降の西ヨーロッパ圏(北米を含む)が支配する地球が終わりを向かえることが近いことは,少しの想像を働かせば良いだけである。そして,それは,日本の20世紀後半からの経済モデルである『加工貿易国家』の終焉であることも意味する。

未読だが,次の本はそのことを書いてあるのだろうと思う。

人類5万年 文明の興亡(上): なせ西洋が世界を支配しているのか (単行本)
クリエーター情報なし
筑摩書房


日本の愛国者の方々は,日本の歴史の長さを誇りにされている。万世一系の天皇家を象徴としてである。

しかし,世界史を少しでも勉強すれば,日本,と,言うより,今の中国を中心とする東アジア一帯の歴史の浅さを思い知らずにはいられない。

日本が東アジア史に現れるのは,私が習った日本史ならば,魏志倭人伝(キリスト教歴で3世紀後半)からである。古代ローマ帝国が衰退期に入ったカラカラ帝の在位はキリスト教歴において2世紀後半である。つまり,古代ローマ帝国が絶頂期であったキリスト教歴2世紀の頃,日本は,中国から見ても未開の地であったのである。これは,愛国者の皆様には顰蹙買うことは間違いないな。

更に続ければ,西ローマ帝国の滅亡は,キリスト教歴480年である。日本史として信じて良いであろう大化の改新は645年である。西ローマ帝国滅亡後,西ヨーロッパは長い中世になるが,日本の中世は,鎌倉幕府が始まった1192年からである。なんと,550年近い差がある。日本は,魏志倭人伝に記載された頃から明治維新までずうと内乱続きであった。

太平洋戦争と呼ぼうが,日米戦争としようが,日中戦争としようが,第二次世界大戦としようが,日本が直近の戦争を終えてから,70年程度しか経っていない。日本史の時代区分において,短いと感じる鎌倉時代でさえ,148年間有ったのである。日本史において古代とされる奈良時代でさえ,70年以上である。

日本の直近の戦争後,日本が最も繁栄したのは,バブル経済と呼ばれた1980年台後半から1990年台前半の精々10年程度であろう。義務教育から高校への進学率が90%を超えるようになったのは1975年以降のことである。第一石油ショックが1973年であるから,日本の高度成長期は飽和状態になっている状況でさえ,中学卒業生の10人に1人は,高校に進めなかったのである。多くの場合,経済的な理由でである。

日本の戦後の経済モデルは既に述べたように,資材を海外から輸入し,工業的な加工を行い,価値を高めて,輸出し,外貨を得ると言う加工貿易である。しかし,その加工貿易経済モデルは,オイルショックとともに終わっていることを示すデータがある。「鉄は国家也」と言われるほどの経済的に重要な『粗鋼生産量』の長期推移である。データを見ると,日本の粗鋼生産量は,1973年以降増えていない。確かに,私が子どもの頃,幾つもの高炉が廃止されたと言うニュースを聞いた。

粗鋼生産量が増えなくなったのは,所謂造船不況によるが,その後,日本の経済を自動車産業が牽引することにより,バブル経済を向かえることになる。日本の加工貿易の最盛期である。自動車産業は,2014年の今も,日本の経済を支える重要産業であるが,日本国内の自動車生産台数は1990年を最大となり,以降,減少を続けている。

つまり,鉄も自動車も日本で作る量は減ったのである。加工貿易がとうの昔に成立しなくなっている。半導体産業が一時期華やいだことがあったが,ハイテクバブルとして直ぐに萎んだ。

今の日本が何を輸出できているのか,調べる気も起きないのであるが,少なくとも,加工貿易と言う,資源を買って来て,工場で付加価値を付けて,輸出するという経済モデルは,終わっているのである。徳川幕府時代,江戸文化が最も華やいだとされる元禄時代でさえ,16年間であった。しかし,その影で,徳川幕府の米蔵は苦しくなり,以降,何度かの倹約令を以てしても立ち直ることが無く,明示維新に至る。日本人ならば,誰でも知っている歴史である。

粗鋼生産の減少は,日本の前に,欧州が先行して経験している。霧の都ロンドンとは,製鉄所の排煙によるスモッグだという話しがあるくらいだ。環境問題が無かった時代であるから,スモッグやPM2.5なんて騒がずに,『霧』で済んだのである。

欧州の資本主義の繁栄は,産業革命によるとする考えがちがであるが,歴史の専門家に言わせると,産業革命前のバスコダガマの喜望峰を周回してのインド到達や,コロンブスの新大陸到達まで遡るらしい。欧州は最初は,インドや明や清との交易により,ポルトガルが先陣を走り,その後,オランダ,フランス,イギリスと続き,交易だけではなく,植民地支配へと進んだ。

徳川幕府は,カトリック教国の植民地支配欲に気付き,鎖国と言う手段を取り,太平の世を築く。今の日本人が美徳とするほとんどのモノは,江戸時代に楚を持つ。日本人が当然と思っている儒教でさえ,江戸時代の武士の官僚化のために,朱子学などの,幕府お抱え学者が作り出したモノである。武士道に至っては,色々な考え方が出来るが,テレビで見る美しき武士道は,新渡戸稲造が,西洋のキリスト教的道徳心に対応するものが,日本の「武士道」であると,英文で西洋人向けに書いた著作を逆輸入したモノである。でなければ,徳川幕府の前の,戦国時代から関ヶ原の戦いまでの,戦と下克上の社会を理解するこが出来ない。


なぜ,徳川幕府時代の元禄時代が豪華絢爛になったか? 家康から家光までの徳川三代により,日本の幕藩体制が確立したことと合わせて,食料増産が可能になったからである。日本各地に何とか新田と言う地名があるが,それらは,ほとんどが,徳川幕府なって以降に開梱された地名の名残である。

直近の高度成長期も,同様であり,1960年台までは,日本は食糧難に苦しんだが,以降,化学肥料と農薬利用により米作が飛躍的に増え,食に困らずに,都会で働く人口が増えたためである。

さて,今,日本は,イギリスやオランダから何を買っているであろうか?

そして,5年後,日本は,何を売っているのであろうか?自動車も半導体も輸出できなくなった日本は,インフラを輸出しようとしているが,それも,一度作ってしまえば,メンテナンス費用しか入らない。しかし,インフラ輸出先は,メンテナンスは自分たちですると言うであろう。だから,一時,潤ったしても,直ぐに,泡は壊れる。

しかし,貿易をしない限り,富を得られない。

貿易立国であった,中世からルネサンスにかけてのヴェネツィアの重要な輸出品は,中欧から仕入れた『木材』と『奴隷』をイスラム諸国に売ることだったと言う。黒海周辺のコーカサスの女性は美人が多く,エジプトなどに人気あったのだと言う。奴隷としてである。男の奴隷は苦役である。千年王国と呼ばれたヴェネチアもナポレオンによって壊され,今は,観光地でしかない。

日本の将来は,本当にエキゾチックジャパンを維持して,着物を着たり,忍者の格好したりして,幼稚なコスプレ服をバッタ値で海外からの観光客に売るくらいしか道はないのではないような気がする。

なぜなら,バブル崩壊後の20年以上にわたって,自動車の次の交易品を真剣に探すことをしてこなったからである。

これから10年は,都会で生きるのではなく,狭くとも「農地」を持つことが,生き残る道のような気がしてならない。食さえあれば,あとは,どうにかなる。

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