週に一回行く和食店で昼食を終え、会社のビルの前をゆっくりと一階のロビー方面に向かっていると、斜め前方からスススーっと初老の自転車男が近づいてきた。
「いやあ、久しぶりです。今、東急ハンズに行って来た帰りなんです。ぼく今、西口で一人でやってるんですよ」
――久しぶりも何も、西口でもどこでもいいけど、こいつ、知・ら・な・い――見たこともないし、見覚えすらない。誰かと間違えているのだろう。もしかして、見知らぬ人でも誰にでも話しかける人か?
「ここを通れば、いつかバッタリと会うんじゃないかと、いつも思ってたんです。だけど意外と会わないもんですね」
「誰?」と、相手を見据え「……だっけ?」と訊いた瞬間、固く結ばれていた紐が、手品の種明かしのように、ぱらりとほどけた。
ニヤけた口調で軽そうに話すところと、なぜかカラダをくにゃくにゃする仕草。そして、決定的だったのは目。白と黒の比率というのか? 瞳孔なのか? 目はウソをつかない。
玉手箱を開いた浦島太郎が、そこにいるように思えた。
彼は、かつてうちの会社にいた末永という社員だった。イラストレーターだったのだが、うちではデザインを担当していた。もう、26~7年ほどになる。謎は解けたが、悲しいかな若いころの面影が全くない。
しかし彼は、よく僕のことがわかったと思う。すぐ判るくらいだから、僕は当時とほとんど変わっていないのだろう^^
ふむふむ。そうやって、話も終わりかけたときに、また稀有なことが起こった。
「こんにちは」と、僕の後ろから若い男が声をかけて来た。振り返ると知らない男だった。はあ? といった顔をすると、かしこまって「こんにちは」と言う。
「知り合い?」と、彼に訊くと、「いいえ、知らないです」と答える。
「ところで、だれ?」「野村証券の○○です」「初めてお目にかかります。ご挨拶を……」
――こんな屋外で、それも、初対面の人に営業?――もう証券会社はコリゴリと思っている僕は、「あ、この人がいいと思うよ。個人事業主だから、金持ってる」と、末永を若者に紹介する。すると彼は、「いやいや、代表だから。一応」と紹介のキャッチボールを始める。
一応? しかし、悲しいかな、全く異論のつけようのない一言だった!^ ^;;(苦笑)
結局、誰? と思った二人と、この会社のビル前で別れたのだが、一体なんという一日だったのだ、と不思議な気持ちになったのは言うまでもない。、、、、、、じゃんじゃん^^
さて、そろそろ帰り支度をするか^^