たままま生活

子育ての間にこっそりおでかけ・手作り・韓国語・・・。
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まとめ『海辺のカフカ』番外編

2010-10-11 15:04:14 | 海辺のカフカ
「カフカの会」無事に完結しました。
ほっとしたような、寂しいような変な気分です。

カフカの会、実は私は途中で韓国語なんてちょっと横においておいて、お話の謎解きにはまっていました。
村上春樹の小説はストーリーに関係のないエピソードのように見えていて、後できっちり伏線を回収していると思います。
あとから、ああ~こういうことだったのか!と、思わせるところがたくさんありました。
そして話全体の作者のメッセージが何なのか、これは何語で読んでも同じだと思うんですが、すごく考えました。

これは私の考えた仮説です。と前置きをして、断定調で書かせてくださいね。


この本のテーマは「違う種類の人間への寛容」、そして影の主役は大島さんと星野君です。

違う種類の人間、というのは、身近にいる考えの合わない人から人種や宗教まで広い意味で考えられますね。「カフカ」の中ではあちらの世界にいける人といけない人、という2種類の人間が描かれています。


あちらの世界に行ける人は、
あちらの世界に行ってすんなり帰ってきた、岡持先生、大島さんの兄。
あちらの世界に行って、現実世界にすんなり帰って来れなかった、中田さんと佐伯さん。
あちらの世界に行ったきり帰ってこない、森で出会った兵隊たち。
カフカ君はあちらの世界に行ってすんなり帰ってきたけど、かえって来れなかったかもしれないし、影を半分残して来たかもしれません。佐伯さんが強く願ったから、すんなり帰ることができたのでしょう。



あちらの世界に行けない人は、大多数だと思いますが、代表がジョニー・ウォーカー、カフカ君の父です。
あちらの世界には行けないけれども、行きたくてたまらない。
それが、あちらの世界に行ける人に対する不寛容、ここではカフカ君に対する呪いになっています。
中田さんに殺してもらったのもあちらに行く手段と考えてのことでしょう。
星野君と大島さんはあちらの世界に行くことはできませんが、行ける人を理解し力になろうとします。


カラスと呼ばれる少年はカフカ君の心の中の別の声です。
ただ、46章の次のカラスと呼ばれる少年は、カフカ君の意識のすごく深いところにいるような気がします。ジョニー・ウォーカーはカフカ君の父親だけど、カフカくんの目には父親がジョニー・ウォーカーとして映るとは思えません。
むしろここは、48章の星野君と白いものとの死闘に対応しているのでは?
カフカ君と中田さんがあちらの世界を通って力を合わせて父親を殺したように、カフカ君の深層心理と星野君が力を合わせているように感じました。

そして、こじつけかもしれませんが、高知の森でであった兵隊さんの一人は岡持先生のだんなさんではないでしょうか?夢の中で再会したというのも、「あちらの世界」で再会したのだと思います。戦争中の長野県でもあちらの世界への入口が開いていて、中田少年はそこに入ってすんなりと戻って来れなかったのでしょう。



45章に出てくる、「あちらの世界」なのですが、これは実在するどこかではなくカフカ君の意識のなかの世界だと思います。テラさんのところにも書いたことがありますが、カフカ君の既知のものだけで破綻なく構成されている世界だから。
テレビで『サウンド・オブ・ミュージック』の見覚えのある場面だけが流れている、というのが象徴的です。

ここがどこかと言うと、集団的無意識の世界に近いと思います。
個人の意識の下に無意識があって、そのもっと奥の方は他の人にも繋がっていると言う考え方ですね。1Q84に少しこの話が出てきます。


ネコ・犬・死・セックス・血は「あちらの世界」に近いものとして登場しています。
例えば野方の自宅で流れた血が「あちらの世界」をとおって四国にいるカフカ君のTシャツについてしまいます。


途中で一度、登場人物とストーリーを図に書き出して、自分なりの解釈をしました。それから「カフカの会」のアプローチも変わったかな?

発売当時に読んだときには「難解だなぁ」くらいにしか思わなかったのですが、韓国語で少しずつ読んでいくうちに、こんなテーマが見えてきました。

作家は全てをわかるように書くわけではないし、読者の想像力にゆだねているところもたくさんあると思いますが、作家の伝えたい意図がわからなかったらこれだけ長い文章を翻訳することはできないと思います。
それが正解であってもなくてもいったん、あるいはとにかく、作家の言いたいことにできるだけ近づく、そんな読者の姿勢が必要なのだと感じました。




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9 コメント

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Unknown (★honeybee★)
2010-10-11 15:56:05
終わっちゃいましたね~ㅜㅜ
カフカの会始動当初は実はよく知らなかったメンバーの人とも仲良くなれて
色々教えてもらったりして
本当に「いい会参加したなぁ」と感謝してます

この本自体の魅力で続けてこれたところも大きいです
なるほど図に書き出すともっと理解できそうですね
私はたまさんほど理路整然と理解していないけど
確かに何層も重なっている世界(深層心理)を感じました
それから、男と女とか、生と死とか、善と悪とか、親と子とか、、
何だか深いテーマにもつながっていましたよね

経験も職業も年齢もそれぞれ違う皆さんと
それらについて語り合うなんて
ほんと貴重な体験でした^^

ありがとうございました~♪
ははぁ (ハーちゃん)
2010-10-11 17:57:26
兵隊さんの一人が岡持先生の旦那さん、かぁ。なるほど。あそこで兵隊さんを出すのもそういう意味があったのかも知れませんねぇ。
村上春樹の作品はこれしか読んでいないのですが、すべてこんな風に読者に委ねられている感じなのでしょうか。
たまさんもお疲れさまでした。そしてありがとうございました(^^)。
スゴヘッスムニダ~! (たま)
2010-10-11 19:03:31
>honeybeeさん

各章のあらすじと登場人物の関係図くらいは書いた方がいいわね。と恩師に言われて気になる本(あと、読んでよくわかんない本)は書くことにしてます。

>ハーちゃん
無理やりこじつけなくてもいいと思うんだけどね~、真相は村上さんに聞かないとわからないけど。
村上春樹は高校生の頃たくさん読んで、というか当時の高校生はみんな『ノルウェイの森』と『キッチン』を読んでいたものですが、当時読んだ内容って覚えてないんです。
今回久しぶりにカフカを読んで、1Q84を読んだところです。1Q84も???がたくさん残りました。でもちょっとハッピーな感じもあるかな。
職場の図書館にアフターダークがあったから借りてこようっと。
Unknown (まろ)
2010-10-11 20:46:34
お疲れ様でしたー

あちらの世界の話興味深く読みました。
いろんな話がちりばめられているけど、それを見事につなげている(暗示になっている)ところが、すばらしいなぁと読んでて感じました。

なかなか言外を感じ取るところまでには至らないのですが、ずっと読書を通じて少しづつ感じ取れるようになればと思います。
仮説なので (たま)
2010-10-13 20:29:35
あくまでも私の仮説なので、受け取り方は自由だと思います。
日本語だけ読んでいるとわからないなりに読めてしまうので、今回韓国語で読んで「わかりたい」ってすごく思ったんですよね。恩師に言われたこともあったし。

カフカの会を通じて自分の読書スタイルが変わった気がします。
수고하셨습니다. 감사합니다.
深いな~ (テラ)
2010-10-14 18:38:31
やっぱり文学している人は違いますね。。。私も大変興味深く読みました。
なるほどこういうふうに読むと、作者の考えはどれでしょうという問いに正解できるのでしょうね。

それにしても、いろいろ想像させる、想像したい気持ちにさせるハルキさん、さすがです。
また韓国語で読んでみたくなりました。

文学・・・ (たま)
2010-10-14 19:48:02
文学やってないですよ~。

文学の先生がいなくて・・放牧ですから、私。

死とセックスが「あちらの世界」に近いというのは1Q84でも感じたんですが、ハルキさんの世界観なのかも。

今とっている宗教の授業で、現実に見えないもの(死後の世界とか集団的無意識とか)に対する世界観、という話を聞いてやっぱり村上春樹を思い出しました。
昔は… (nikka)
2010-10-20 23:19:52
昔は、村上春樹ってなんだかまどろっこしくて好きじゃなかったんだけど、また読みなおすと、いろんな発見がありました。
ゼミや研究会で、自分なりの「読み」を追求していた頃のように、あれこれ考えたりするのも楽しかったです。
私もいくつかまだよくわからない点があるので、時間があるときにまた読み返せたらいいなあと思っています。
ありがとうございました!
わかります~。 (たま)
2010-10-21 00:00:25
本当!まどろっこしいってわかります。
私も今になってこんなに村上春樹がおもしろいとは~。

ちょうど文学の授業で

繰り返し読みたくなるようないいテクストを読むと書かれていないことも見えてくる。読者の中でだけ見えてくる読解があり、正解とか不正解とかは別としてそこに批評の面白さがある。

という話を聞いて、とっても納得!

宗教の授業聞いて村上春樹を思い出して、文学の授業を聞いてまた思い出して・・・高校生の頃って全然読めてなかったんだな~^^; と思いました。

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