「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

広島での平成20年「日本の誇り連続セミナー」始まる

2008-03-26 10:24:27 | 【連載】 実践 陽明学
平成20年第一回広島日本の誇りセミナー

陽 明 学 入 門 ― 迷いを許さぬ行動の哲学

一、道の学問・心の学問

①学問とは何か 「知」「徳」「体」
  祖国・学問・人生
  知育偏重 
  生き方を求める学問→学道

②道の学問
  武道 剣道・柔道・合気道・空手道・弓道……
     『「ベースボール」と野球は違う』球道
  文化 茶道・華道・書道……

③武士道
  文武両道・文武二道
  新渡戸稲造『武士道』
   義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義
  三島由紀夫「武士道と軍国主義」
   セルフ・リスペクト(自尊心)
   セルフ・レスポンシビリティー(自己責任)
   セルフ・サクリファイス(自己犠牲)

④論語と日本人
  『論語道場』岡崎久彦・葛西敬之・渡部昇一・山谷えり子など
  仁・義・礼・知・信

二、陽明学とは何か
①儒教とは
  孔子(前551~前479)・子思(前483?~前402?)・孟子(前372~前289)
  四書 大学・中庸・論語・孟子
  五経 易経・書経・詩経・礼記・春秋
  諸子百家 
  漢代に国学に  隋・唐から科挙制度

②宋学と心学
  朱子(1130~1200)
  陸象山(1139~1192)


③明代に誕生した陽明学
  王陽明(1472~1528)

「学は須(すべから)く己に反(かえ)るべし。若し徒(いたずら)に人を責むれば、只だ人の不是を見得るのみにして、自己の非を見ず。」【自反の学】

「樹を種(う)うる者は必ずその根を培い、徳を種うる者は必ずその心を養う。」【培根の学】

「その数頃(すうけい)の源(みなもと)なきの塘水(とうすい)とならんよりは、数尺(すうせき)の源あるの井水(せいすい)の生意窮まらざるものとならんには若かず。」【有源の学】

④自由の哲学・平等の哲学・行動の哲学

三、王陽明の生涯(別紙 略年譜参照)

①五溺(ごでき)
  任侠・騎射・辞誦・神仙・仏氏

②2回の会試落第
「世間では落第するのを恥と思っているが、私はそのために心が動揺するのを恥とする。」

③肺の病

④決死の上奏・左遷

⑤竜場の大悟(りゅうじょうのたいご)

⑥諸族の討伐と講学

⑦宸濠の乱(しんごうのらん)平定と陽明の受難

⑧叛族平定の帰路に歿す


四、陽明学のキーワード

①心即理(しんそくり)
  「聖人の道は、吾が性に自づから足る。向の理を事物に求めしは誤りなりき。」
  「心は即ち理なり。天下また心外の事、心外の理あらんや。」

②四箇教条 立志・勤学・改過・責善(りっし・きんがく・かいか・せきぜん)
  「志、立たざれば、天下に成すべきの事なし。」
  「志、立たざれば、舵なきの舟のごとく、銜(くつわ)なきの馬のごとく、漂蕩奔逸(ひょうとうほんいつ)して、つひにまた何の底(いた)るところかあらん。」

③天理を存して人欲を去る(てんりをそんしてじんよくをさる)

 「学とは、これ人欲を去り天理を存するを学ぶなり。必ず此の心の天理に純にして、一毫も人欲の私なからんことを欲す。これ聖と作(な)るの功なり。」

④知行合一(ちこうごういつ)

 「真知は即ち行たる所以なり。行はざれば、これを知といふに足りず。
  未だ知りて行はざるものあらず。知りて行はざるは、只だ是れ未だ知らざるなり。」
 「知は行の始め、行は知の成れるなり。聖学は只だ一箇の功夫。知行は分かちて両事と作すべからず。」
 「心を外にして以て理を求む、此れ知行の二となる所以なり。理を吾が心に求む、此れ聖門知行合一の教なり。吾子またなんぞ疑はんや。」
 「今の人は卻(かえ)つてすなはち知行をもつて分つて両件と作(な)して去(ゆ)き做(な)す。おもへらく、必ず先づ知り了(おわ)りて然る後に能く行はん。我いましばらく去きて講習討論して知の工夫を做さんと。故に遂に身を終るまで行はず。また遂に身を終るまで知らざるなり。これはこれ小病通にあらず。その来たることすでに一日にあらず。某(それがし)いま箇の知行合一を説くは、正にこれ病に対するの薬なり。」

⑤事上磨錬(じじょうまれん)

 「人はすべからく事上に在りて磨錬し、功夫(くふう)を做すべし。すなはち益あらん。もし只だ静を好まば、事に遇ひてすなはち乱れ、ついに長進なく、静時の工夫もまた差(たが)はん。」
 「山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し。区々、鼠竊(そせつ)を翦除(せんじょ)するは、なんぞ異と為すにたらん。もし諸賢、心腹の寇を掃蕩し、以て廓清(かくせい)平定の功を収めば、これ誠に大丈夫不世の偉績なり。」

⑥致良知(ちりょうち・りょうちをいたす)

 「其れ良知は、即ちいはゆる是非の心、人みなこれあり。学ぶを待たずして有り、慮(おもんばか)るを待た    ずして得る者なり。人たれかこの良知なからんや。独りこれを致すことあたはざるあるのみ。聖人より以て愚人に至るまで、一人の心より以て四海の遠きに達するまで、千古の前より以て万代の後に至るまで、同じからざることあるなし。」
 「蓋(けだ)し良知は只だ是れ一箇の天理の自然に明覚発見する処。只だ是れ一箇の真誠惻怛(しんせいそくだつ)、便ち是れ他(かれ)の本体なり。」
 「我がこの良知の二字は、実に千古聖々相伝(せんこせいせいそうでん)の一点の滴骨血(てつこつけつ)なり。」
 「夫れ学はこれを心に得るを貴ぶ。これを心に求めて非なれば、その言の孔子に出づるといへども、敢へて以て是と為さざるなり。しかるをいはんやそのいまだ孔子に及ばざる者をや。これを心に求めて是なるや、その言の庸常(ようじょう)に出づるといへども、敢へて以て非と為さざるなり。しかるをいはんやその孔子に出づる者をや。」

⑦万物一体の仁(ばんぶついったいのじん)

 「世の君子、ただその良知を致すを務むれば、すなはちおのづから能く是非を公にし、好悪を同じくし、人を視ることなほ家のごとく、而して天地万物を以て一体と為さん。天下の治まるなからんことを求むるも、得べからざるなり。」

⑧抜本塞源論(ばっぽんそくげんろん)

「蓋(けだ)し今に至つては、功利の毒、人の心髄に淪浹(りんしょう)し、習もつて性と成ること、ほとんど千年なり。相矜(ほこ)るに智を以てし、相軋(きし)るに勢を以てし、相争うに利を以てし、相高ぶるに技能を以てし、相取るに声誉を以てす。」
「嗚呼(ああ)、士、斯(か)かる世に生れて、しかもなほ何を以て聖人の学を求めんとするか。なほ何を以て聖人の学を論ぜんとするか。士、斯かる世に生れて、しかも以て学を為さんと欲する者は、また労苦にして繁難ならずや。また拘滞(こうたい)にして険艱(けんかん)ならずや。嗚呼、悲しむべきのみ、幸いとするところは、天理の人心に在るや、終(つい)に泯(ほろ)ぼすべからざるところありて、良知の明らかなること、万古一日なれば、則ちそれ吾が抜本塞源(ばっぽんそくげん)の論を聞けば、必ず惻然(そくぜん)として悲しみ、戚然(せきぜん)として痛み、憤然として起ち、沛然(はいぜん)として江河を決するがごとく、禦(ふせ)ぐべからざる所ある者あらん。」

五、日本人と陽明学

①日本文化の重層性
    神道【美】 仏教【聖】 儒教【善】 科学【真】

②基盤としての神道精神・清明心の伝統

③日本儒教の独自展開

④明治維新を生み出した国学・史学(水戸学)・陽明学

⑤日本陽明学の流れ

1、中江藤樹  ○◎△▲(1608~1648)
2、淵岡山   ○▲  (1617~1686)
     江西学派・大阪学派・美作学派・伊勢学派・江戸学派・会津学派・熊本学派
3、熊沢蕃山  ○◎△▲(1619~1691)
4、北嶋雪山  △▲  (1636~1697)
5、三宅石庵  △▲  (1665~1730)
6、三輪執斎  ○◎△▲(1669~1744)
7、三重松庵  △▲  (1674~1734)
8、石田梅岩  △   (1685~1744)
9、中根東里  ◎△▲ (1694~1765)
10、川田雄琴  △▲  (?)
11、鎌田柳泓  △
12、竹村悔斎  △   (  ? ~1829)
13、富永仲基  ◎   (1715~1746)
14、林子平   ◎▲  (1738~1793)
15、佐藤一斎  ○◎△▲(1772~1859)
16、梁川星巖  ◎△▲ (1789~1858)
17、大塩中斎  ○●◎□△▲(1793~1837)
18、吉村秋陽  ○◎△▲(1797~1866)
19、山田方谷  ○◎△▲(1805~1877)
20、林良斎   ○◎△▲(1807~1849)
21、宇津木静区 ▲   (1809~1837)
22、横井小楠  ◎▲  (1809~1869)
23、奥宮慥斎  ◎△▲ (1811~1877)
24、尾崎愚明  △
25、中尾水哉  △
26、春日潜庵  ○◎△▲(1811~1878)
27、佐久間象山 ●▲  (1811~1864)
28、真木保臣  ▲   (1812~1864)
29、池田草庵  ○◎△▲(1813~1878)
30、鍋島閑叟  △▲  (1814~1871)
31、大橋訥庵  ●   (1815~1862)
32、柳沢芝陵  ▲   (1816~1845)
33、中島操存斎 △   (1822生れ )
34、島義勇   △   (1822~1874)
35、川尻寶岑  △
36、金子与三郎 ◎△  (1823~1867)
37、河井継之助 ◎□△ (1827~1868)
38、西郷南洲  ○●◎△▲(1828~1877)
39、吉田松陰  ○●◎□▲(1830~1859)
40、三島中洲  ○   (1830~1919)
41、東沢潟   ○△▲ (1832~1891)
42、海江田信義 △   (1832~1906)
43、富岡鉄斎  ◎   (1836~1924)
44、高杉晋作  ○◎△▲(1839~1867)
45、雲井龍雄  ◎□△ (1844~1870)
46、中江兆民  ◎△  (1847~1901)
47、末広鉄腸  ◎   (1849~1896)
48、乃木希典  ●   (1849~1912)
49、植木枝盛  ◎   (1857~1892)
50、新渡戸稲造     (1862~1933)
51、山田準       (1867~1952)
52、西田幾太郎 ◎   (1870~1945)
53、伊藤右衛門 △
54、中野正剛  ◎   (1886~1943)
55、安岡正篤  ◎   (1898~1983)
56、岡田武彦      (1908~2004)
57、団藤重光  ◎   (1913~    )
58、三島由紀夫     (1925~1970)
 
  ○「シリーズ陽明学」(明徳出版社)●『陽明学入門』(後藤基巳・青春出版社)◎『日本陽明学奇跡の系譜』(大橋健二・叢文社)□『日本における陽明学の系譜』(安藤英男・新人物往来社)△『日本之陽明学』(高瀬武次郎)▲『日本陽明学派之哲学』(井上哲次郎)
 
〔現在出されている陽明学学習文献〕
【陽明学に関する書籍を出版している会社】 明徳出版  致知出版  MOKU出版
【王陽明】芝豪『小説王陽明』(上・下) 岡田武彦『王陽明小伝』 松川健二『王陽明のことば』(以上明徳出版)
【伝習録】中公クラシックス『王陽明 伝習録』 タチバナ教養文庫『伝習録「陽明学」の心髄』
【陽明学全般】小林日出夫編『陽明学・一〇〇のことば』(明徳出版) 安岡正篤『王陽明』(現代活学選集4・MOKU出版) 安岡正篤『王陽明』『人生と陽明学』(両書ともPHP文庫)
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