一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

五家原岳 ……多良山系の山々や植物に優しく包まれている自分を感じた……

2010年04月08日 | 多良山系
多良山系には今年になってからすでに3度ほど足を踏み入れている。
早朝だと、我が家から車で1時間もかからずに黒木登山口に着く。
だから、自然と、多良山系に行く回数が多くなる。
からつ労山の3月の月例山行は多良山系だったが、諸事情で参加できなかった。
ちょっと残念な気分が残っていたので、近いうちにまた多良山系を訪れたいと思っていた。
今日の休みは何をしようかといろいろと考えていたのだが、あまりに天気が良かったので、山に行くことにした。
そうと決まったら、行き先はやはり多良山系が好い。
〈今日は、春の景色や花を楽しみながら、のんびり山歩きをすることにしよう!〉
ということで、黒木から五家原岳に登り、中岳を通り、西野越を経て、黒木に下りてくるコースを考えた。
佐世保に行く日はいつも朝駆け登山をするのだが、今日は佐世保に行かなくてもよくなったので、陽が昇ってからゆっくり家を出た。
黒木郷に着くと、まずは経ヶ岳に御挨拶。
いつ見てもカッコイイ!


五家原岳登山口の方へ移動する。
道沿いに、フウロケマンや、


ジロボウエンゴサクが咲いていて、楽しい気分にさせてくれる。


サツマイナモリは今がピーク。
森の中はスノーマンがいっぱい!


いったん林道へ出る。


それまでほとんど視界が得られなかったので、パッと明るくなった感じ。
この林道からは、対面する山並みと蒼空が見えた。


上を見ると、蒼空と新緑。
ただそれだけなのに、なぜこんなにも美しいんだろう。


横峰越を通過。
太陽に照らされていても、高度が上がるにつれて、肌寒く感じた。


下を見ると、霜柱が……


山頂が近づくにつれ、若葉はなくなり、裸木ばかりになった。
やはり標高1000m付近には、まだ春は来ていないようだ。


五家原岳山頂に着いた。
ものすごく眺めが良い。
雲仙もすぐ傍にあるような気がする。


長崎方面もバッチリ!
岩屋山などを眺めていたら、1月31日の「岩屋山~稲佐山~女神大橋」を歩いた記憶が蘇ってきた。
懐かしかった。


反対側を見ると、多良山系の山々が一望のもとに見渡せる。
郡岳から経ヶ岳へと続く稜線。


ここから見る経ヶ岳は、黒木郷から見る経ヶ岳とはまったく違う。


経ヶ岳から五家原岳へ続く稜線。
こうして見ていたら、やはり昨年5月31日の「多良山系大縦走」を思い出さずにはいられない。
ヘミングウェイに『何を見ても何かを思いだす』というタイトルの小説があるが、今日の私もその小説のタイトルそのままに、「何を見ても何かを思いだす」旅人であった。
何かを見て何かを思い出せるということは、けっこう幸福なことだと思った。


五家原岳から西野越までの縦走路は、アップダウンはあるものの、いろんな植物に出逢える「花の散歩道」だ。
まずはエイザンスミレ。
このスミレに逢えると、私は本当に嬉しい。
私にとっては別格のスミレだ。


三つの葉があるミツバテンナンショウ。
マムシグサではありません。


ヤマルリソウ。


ホソバナコバイモもまだ咲いていた。


山犬岩を通過。
本当に犬が遠吠えしているようだ。


写真を撮っていたら、後ろから話し声がしてきます。
誰かの声に似ているな~と思って待っていたら……そよかぜさんでした。
登山口で偶然会ったというUさんと御一緒でした。
旅は道づれということで、西野越から黒木登山口まで御一緒することにしました。


オオキツネノカミソリの群生地は、現在は「葉」のみだが、こんなにも美しい。
夏に咲く「花」も楽しみ。


そよかぜさんお気に入りの場所でパチリ。
この西野越から黒木に至る登山道には、素敵な風景が連続する。


太陽に照らされ、木々の葉が光り輝く。


自然はなぜにこんなにも美しいんだろう……


水場で喉を潤しながら見た風景。
「何を見ても何かを思いだす」


沢沿いにはコチャルメルソウや、


ハルトラノオが群生していた。


林道に出て、黒木登山口が近くなった頃、一本の大きなカツラの木に出会う。
この林道のシンボル的な木で、ここを通る誰もがこの木を見上げる。
木は、新緑をまとい、見る者を惹きつける。


反対側から見るとこんな感じ。
この木は、ここを通る登山者を、ずっと見てきたに違いない。
登山者がこの木を見て懐かしい気がするのは、この木がそうやってずっと優しい目で登山者を見てきたからだろう。
この木も、我々を見て、何かを思い出しているのかもしれない。


登山口に戻ってくると、経ヶ岳がにっこり微笑んでいた。
〈……経ヶ岳も、我々を憶えていてくれたのだ〉と思った。
多良山系の山々や植物に優しく包まれている自分を感じた。

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