新居に引っ越してからずっと気になることがあった。
それは旧居の清掃費などの諸々についてである。私が18歳から41歳になるまで過ごした1DKのアパート。23年もの年月は白い壁紙をくすませるのに十分な期間だった。タバコは吸っていないが、骨董品級のエアコンが出す空気はしっかりと壁紙を汚し続けたのである。
おまけに退去前に気づいたのだが、押入れのふすまの裏地がビリビリに破けていた。押入れに様々なものを詰め込んでいたので、それが開けしめをするために引っかかっていたのだろう。いや正直に言う。うすうす勘づいてはいた。そうなっているだろうな、と。
これは敷金程度では済まないだろうな。部屋のクリーニング代くらいは持たねばなるまい……とある程度の予算を見積もっていたのだが、昨日の昼。旧居先の管理会社から電話がかかってきた。おそるおそる電話に出ると、さっそく金の話になった。はたしていかほど取られるのか……。
えっ! ええっ! えええっ!?
なんと5千円もかからなかった。しかもそれは外し忘れていた照明機器の撤去と処理の費用だという。追求されるのが怖くて訊かなかったが、きったねぇ壁紙とボロボロのふすまについては不問にされたようである。ずうずうしく敷金は戻ってこないのかと聞いたら、最初の契約の時点で戻ってこないことになっていたそうな。まあいいや。23年前に親が払ってくれたものだし(←よくない考えだなあ)。
ここ一番の心配事が消えた。むしろけっこうな予算を考えていたので得をした気分だ。上機嫌で帰宅した最中に満月を観たのである。