フジ「カラマーゾフの兄弟」 ドラマの構想、5年間日の目見ず
産経新聞2013年2月10日(日)10:30
ロシア文学の名作の世界を現代日本に甦らせた、フジテレビの土曜夜のドラマ「カラマーゾフの兄弟」(毎週土曜午後11時10分~)が好評だ。主人公・黒沢勲を務める市原隼人をはじめ、青年たちが演じる葛藤が、作品に言いようのない陰鬱な影を落としている。企画した佐藤未郷さん(フジテレビ編成部)と、プロデューサーの森安彩さんに話を聞いた。
■5年、日の目見ず
佐藤さんがこの作品をドラマにしようと思ったのは、実に5年前にさかのぼる。改めて作品を読み、その面白さに圧倒された。「主人公たちの葛藤は今の若い子たちのふつふつと抱えている葛藤に通じている。登場人物に毒々しいキャラクターがあるので、ドラマにしたら面白いのではないか」
構想を温めていたのかと思いきや「通らなかっただけなんですよ」と笑う。数度提出したが、断られ続けたという。
森安さんは「私が上司だったら『カラマーゾフ』のドラマの完成形が見えない。はんこが押せないと思う。順風満帆な時代には通らないでしょう。『なぜ?』っていう感じがあるし」と語り、必ずしも“連ドラ向き”の題材ではないことをうかがわせた。
しかし、ここ1年でフジテレビの編成方針は大きく舵を切っている。昨年4月、土曜夜には若者を対象にしたドラマを放送する「土ドラ」枠を設け、「主に泣いてます」「高校入試」など実験的なドラマを世に送り出した。ようやく「5年前のあれ、どうなってる?」と声がかかり、日の目を見ることになった。
「企画が通る通らないは巡り合わせ。タイミングです」(佐藤さん)
5年は経過したが、親子関係の葛藤という普遍的なテーマは5年たっても、色あせることはなかった。
■1日1個のあめで…
作品のバックボーンとなっているのがキリスト教。日本では欧米ほどになじみが深くないため、それらは西洋医学、法律と、現代の日本の規範となっているものに置き換えている。
その上で、市原隼人が演じる主人公の黒澤勲は、地元の名士の黒澤家の次男で弁護士という設定だ。父親の文蔵に支配され自分の道を選べない立場に苦悩する。勲の職業については、弁護士か、検事かで議論があったが、父親に『仕事を手伝わされる』という支配のされ方を明確に出すため、弁護士にすることでまとまった。
市原の演技のすごみは、インターネットでも話題となっている。
市原は役作りのため食事を控え、1日1個のあめと、岩盤浴で体内の水分を落とす生活。撮影開始までは現場への送迎をやめてもらった、と明かしている。私生活から役に入り込むアプローチで、佐藤さんは「抑圧を経験して、その時どういう感情が生まれるかに向き合っている」と市原の役作りを評する。
森安さんも「これまで彼はどちらかというと感情が出て、視聴者が共感しやすい役が多かった。今回は真逆のもの。彼は『芝居じゃできない』と思ったのかもしれない。孤独、追い込まれることを体験しないと、余裕のない精神状態が表現できないと思ってくれたのでしょう」と話す。
市原の気迫が伝わったかのように、スタッフのモチベーションも高いという。
佐藤さんは「人物が携帯電話を見る場面では、カメラマンが『携帯の画面の絵はいらないんじゃない?』と提案したこともあった。みんながどうしたら研ぎ澄まされた世界観を作れるか、アイデアをすごく持っている」と語る。
森安さんは美術スタッフからこんな説明を受けたという。「勲は『内面葛藤』だから、部屋には対極のものを置いている。理論の本があれば、その理論を否定する本を置く。おどろおどろしい肖像があれば、聖母の肖像を置く。必ず二面性で作っている」
黒澤家の重厚な外装は、スタッフが奔走して見つけた、イメージに沿う洋館の鎌倉文学館(神奈川県鎌倉市)を使用している。黒澤家で子供たちが過ごした辛い年月は、こうした裏方の工夫で演出された。
■実験、感性、アイデア
佐藤さんは「今は何がドラマ作りの安全パイか分からない。これをやったら必ず当たるっていうのが分からない。『家政婦のミタ』(日本テレビ系)だって、ほんとにみんなあんなに跳ねる(視聴率が上がる)と思ったかは分からないでしょう。だから面白い。誰かがやりたいものをやるのは、大事なこと」。
森安さんは「(実験的なことが)許される時間帯で、資金が潤沢じゃないが、それがまたいいんです。感性、アイデアでみんなが臨むから、いいんです」と強調する。
2月9日の放送では、これまでの3兄弟の父への殺意の芽生えを経て、いよいよ「事件」当日にさしかかる。(織田淳嗣)
現在、亀山郁夫の新訳『カラマーゾフの兄弟』第3巻の「事件」の場面まで読み終えたところだ。
学生時代の頃に一度、ドストエフスキーの『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』『白痴』は読んでみたが、正直言って、何が面白いのかさっぱりわからなかった。
最近になって亀山郁夫版で『罪と罰』を読み直して、そのおもしろさに今更ながらに気づかされた。
ドストエフスキーの創造したキャラクターは、老若男女を問わず、いずれも「濃い」。
そして会話文も、長い。
一人の人物のせりふが2ページぐらい続くのはざらである。
だからたいていの人は途中で投げ出してしまうのだが、
そこを何とか乗り切ると、不思議なもので、
あれだけウザかったせりふが、妙に心地よく思えてくる。
さて、ドラマの『カラマーゾフの兄弟』だが、けっこう好評だという。
とはいえ、フジテレビのドラマで、上記の記事は産経新聞なので、
手前味噌といえば手前味噌なのだが、
それはそうとして、やっぱり気になる。
なぜ主人公一家が黒澤家なのか。
「カラマーゾフ」という言葉は、ロシア語で「黒塗り」という意味だという。
だから、主人公一家が黒○家または○黒家なのはわかるが、
なぜよりにもよって黒澤なのか。
映画ファンなら気にならないか?
黒澤明がドストエフスキーに心酔していたのは有名な話だぞ。
もしも黒澤明がこのドラマを見たら、どんな感想を寄せるだろう。
自分の名前を主人公一家の名前にした、ドストエフスキーのドラマを見たら・・・
産経新聞2013年2月10日(日)10:30
ロシア文学の名作の世界を現代日本に甦らせた、フジテレビの土曜夜のドラマ「カラマーゾフの兄弟」(毎週土曜午後11時10分~)が好評だ。主人公・黒沢勲を務める市原隼人をはじめ、青年たちが演じる葛藤が、作品に言いようのない陰鬱な影を落としている。企画した佐藤未郷さん(フジテレビ編成部)と、プロデューサーの森安彩さんに話を聞いた。
■5年、日の目見ず
佐藤さんがこの作品をドラマにしようと思ったのは、実に5年前にさかのぼる。改めて作品を読み、その面白さに圧倒された。「主人公たちの葛藤は今の若い子たちのふつふつと抱えている葛藤に通じている。登場人物に毒々しいキャラクターがあるので、ドラマにしたら面白いのではないか」
構想を温めていたのかと思いきや「通らなかっただけなんですよ」と笑う。数度提出したが、断られ続けたという。
森安さんは「私が上司だったら『カラマーゾフ』のドラマの完成形が見えない。はんこが押せないと思う。順風満帆な時代には通らないでしょう。『なぜ?』っていう感じがあるし」と語り、必ずしも“連ドラ向き”の題材ではないことをうかがわせた。
しかし、ここ1年でフジテレビの編成方針は大きく舵を切っている。昨年4月、土曜夜には若者を対象にしたドラマを放送する「土ドラ」枠を設け、「主に泣いてます」「高校入試」など実験的なドラマを世に送り出した。ようやく「5年前のあれ、どうなってる?」と声がかかり、日の目を見ることになった。
「企画が通る通らないは巡り合わせ。タイミングです」(佐藤さん)
5年は経過したが、親子関係の葛藤という普遍的なテーマは5年たっても、色あせることはなかった。
■1日1個のあめで…
作品のバックボーンとなっているのがキリスト教。日本では欧米ほどになじみが深くないため、それらは西洋医学、法律と、現代の日本の規範となっているものに置き換えている。
その上で、市原隼人が演じる主人公の黒澤勲は、地元の名士の黒澤家の次男で弁護士という設定だ。父親の文蔵に支配され自分の道を選べない立場に苦悩する。勲の職業については、弁護士か、検事かで議論があったが、父親に『仕事を手伝わされる』という支配のされ方を明確に出すため、弁護士にすることでまとまった。
市原の演技のすごみは、インターネットでも話題となっている。
市原は役作りのため食事を控え、1日1個のあめと、岩盤浴で体内の水分を落とす生活。撮影開始までは現場への送迎をやめてもらった、と明かしている。私生活から役に入り込むアプローチで、佐藤さんは「抑圧を経験して、その時どういう感情が生まれるかに向き合っている」と市原の役作りを評する。
森安さんも「これまで彼はどちらかというと感情が出て、視聴者が共感しやすい役が多かった。今回は真逆のもの。彼は『芝居じゃできない』と思ったのかもしれない。孤独、追い込まれることを体験しないと、余裕のない精神状態が表現できないと思ってくれたのでしょう」と話す。
市原の気迫が伝わったかのように、スタッフのモチベーションも高いという。
佐藤さんは「人物が携帯電話を見る場面では、カメラマンが『携帯の画面の絵はいらないんじゃない?』と提案したこともあった。みんながどうしたら研ぎ澄まされた世界観を作れるか、アイデアをすごく持っている」と語る。
森安さんは美術スタッフからこんな説明を受けたという。「勲は『内面葛藤』だから、部屋には対極のものを置いている。理論の本があれば、その理論を否定する本を置く。おどろおどろしい肖像があれば、聖母の肖像を置く。必ず二面性で作っている」
黒澤家の重厚な外装は、スタッフが奔走して見つけた、イメージに沿う洋館の鎌倉文学館(神奈川県鎌倉市)を使用している。黒澤家で子供たちが過ごした辛い年月は、こうした裏方の工夫で演出された。
■実験、感性、アイデア
佐藤さんは「今は何がドラマ作りの安全パイか分からない。これをやったら必ず当たるっていうのが分からない。『家政婦のミタ』(日本テレビ系)だって、ほんとにみんなあんなに跳ねる(視聴率が上がる)と思ったかは分からないでしょう。だから面白い。誰かがやりたいものをやるのは、大事なこと」。
森安さんは「(実験的なことが)許される時間帯で、資金が潤沢じゃないが、それがまたいいんです。感性、アイデアでみんなが臨むから、いいんです」と強調する。
2月9日の放送では、これまでの3兄弟の父への殺意の芽生えを経て、いよいよ「事件」当日にさしかかる。(織田淳嗣)
現在、亀山郁夫の新訳『カラマーゾフの兄弟』第3巻の「事件」の場面まで読み終えたところだ。
学生時代の頃に一度、ドストエフスキーの『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』『白痴』は読んでみたが、正直言って、何が面白いのかさっぱりわからなかった。
最近になって亀山郁夫版で『罪と罰』を読み直して、そのおもしろさに今更ながらに気づかされた。
ドストエフスキーの創造したキャラクターは、老若男女を問わず、いずれも「濃い」。
そして会話文も、長い。
一人の人物のせりふが2ページぐらい続くのはざらである。
だからたいていの人は途中で投げ出してしまうのだが、
そこを何とか乗り切ると、不思議なもので、
あれだけウザかったせりふが、妙に心地よく思えてくる。
さて、ドラマの『カラマーゾフの兄弟』だが、けっこう好評だという。
とはいえ、フジテレビのドラマで、上記の記事は産経新聞なので、
手前味噌といえば手前味噌なのだが、
それはそうとして、やっぱり気になる。
なぜ主人公一家が黒澤家なのか。
「カラマーゾフ」という言葉は、ロシア語で「黒塗り」という意味だという。
だから、主人公一家が黒○家または○黒家なのはわかるが、
なぜよりにもよって黒澤なのか。
映画ファンなら気にならないか?
黒澤明がドストエフスキーに心酔していたのは有名な話だぞ。
もしも黒澤明がこのドラマを見たら、どんな感想を寄せるだろう。
自分の名前を主人公一家の名前にした、ドストエフスキーのドラマを見たら・・・