逝きし世の面影

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憲法9条と自衛隊の悩ましい関係

2008年02月18日 | 憲法

護憲的な考えの人を含め『突然外国(北朝鮮)が攻めてきたらどうする』を漠然と、なんとなく信じてい日本人は案外多い。
軍事問題を、何と無く信じている『突然責めてくる』を前提に議論を進めると、とんだ間違いを犯す。
戦争は政治の延長であり、個人の喧嘩ならいざ知らず、国家が戦争を始める為には、兵器や兵員の準備に、膨大な準備と時間が絶対に必要なことは自明の理である。
北朝鮮であれ何であれ、外国は突然攻めて来ることはありません。
そして国家にとって、兵器や兵員の準備以上に大事なのが『大義名分』であるのです。
戦争で一番大事なのは『大義名分』や『正義の戦争』などの、戦争が真っ当に見える為の看板で、戦争の準備で一番必要な準備とは、看板(スローガン)の準備なのです。
小さな戦争でも、戦争を始める為には大昔から『大義名分』が絶対に必要で、此れが無いと『始められない』し『続けられない』し『勝てない』のです。
源平の昔は天皇の綸旨。
アヘン戦争では議会の承認と世論の支持。
大日本帝国の八紘一宇や大東亜共栄圏。
今は対テロ戦争や大量破壊兵器、強制民主主義などなど。
太古遊牧民の略奪行為にも正当な理由付け(大義名分)は存在し、単なる泥棒は厳しく罰せられた。
ネットウヨの与太話「突然攻めてきたら」を前提に軍事問題の議論を進めると失敗します。

『日本には現実的に自衛隊という軍隊がある』という考え方の危うさ。

小泉が、『自衛隊は軍隊』と言い切るまで、今までの自民党は『自衛隊は軍隊でない』と言ってきた。
対して護憲左派は、『自衛隊は軍隊』と主張していた。
この時、不思議なことに(意味や目的は全く違うが)護憲左派と小泉の『意見』が完全に一致する。
しかし、護憲左翼が言うように、自衛隊が世界有数の強力な武力(暴力)装置であることは事実ですが、それでは『本当に軍隊か』と言うと、必ずしもそうとも言えない幾つかの不思議がある。

『そもそも「軍隊」とはなにか。?』

日本国憲法を、どの様に読んでも小学校高学年以上の語学力が在れば、国家としての日本国には『警察力』以外の武力の保有は即違憲、違法であることは明白です。
そのためにも半世紀前の創立時には『警察予備隊』の名称は当然必要で絶対条件だったのです。
現在でも、平和憲法が存在する以上『じえいたい』は『軍隊』ではないはずで『軍隊』なら即違憲、違法の存在でありヤクザやギャング等の非合法の武装集団の1つにすぎなくなる。
それで今までは、例えば階級を軍隊用語と違わせたり駆逐艦を護衛艦と呼んだり一昔前は戦車を特車と読んだりして、『普通の軍隊』(国軍)と自衛隊との違いを強調していた。
湾岸戦争までは、日本の領海外には出さないようにしていたりと、自民党政府も色々気を使っていた。
イラク戦争派兵の時にも、『自衛隊は軍隊』と言って憚らない小泉でも『自衛隊の行く所が非戦闘地域』と超ウルトラ御馬鹿答弁で海外派兵の事実を隠蔽していた。
一番重要な事柄は、日本の陸上自衛隊部隊が、アメリカ軍によって戦闘任務から(事実上)除外されていた為に一人の戦死者も出さなかったことです。
何故アメリカ軍が、日本の自衛隊に戦闘参加を求めなかったかと言うと、『自衛隊』が『完全なる軍隊ではなかった』、からでしょう。

『命令拒否権の有無』は軍と警察を分ける重要な指摘。

日本の文民警察官は国際的にも評価され、カンボジアPKO等の実績もあり問題ないでしょう。
国際的警察力は必要性は当たり前ですが、当然警察が任に当たるべきでしょう。
治安の回復(安定)は社会生活を営む上で不可欠で、『警察』が其の役目を負っている。
世界各国、もちろんイラクでもこの事実は、変わるものではない。
それで、今度は『陸上自衛隊でもいいかな?』となると首を傾げざるおえない。
そもそも『自衛隊』とは何者か。?
外見上は軍隊そのもので、無責任男の小泉純一郎は『軍隊』と言い切っていましたが『軍隊』ならば即違憲です。
違憲であるなら日本国にとって『自衛隊』は存在を許されない違法武装集団となる。
違法なら自衛隊解体以外の選択肢はありえない。
現在、国内的には『災害救助を前面』に訴えて、軍隊らしさを打ち消しながら、対外的には『軍』と思われたいコウモリのような不思議な代物になっている。
「新しい歴史教科書を作る会」や「国民会議」等の極右国粋主義者は、自衛隊を『国軍』にして日本を『完全なる国家』にしたいのでしょう。
しかし普通の市民にとっては、『軍隊モドキ』の今の『自衛隊』を完全なる『自衛隊』?に編成しなおす作業が、果たして大切か否かは大いに疑問である。

『軍隊』の最重要目的はなにか。?

『軍隊』にしか出来ない役目(仕事)は「破壊と殺戮」以外にありえない。
他の組織には絶対に出来なくて『軍隊』にしか出来ない役目(最重要目的)とは、「破壊と殺戮」で、戦争をするのが軍隊の仕事です。
戦争をするのが軍隊の仕事で、今の日本の『自衛隊』には『普通の軍隊』とは違う色々な不思議が存在する。
『軍』では敵前逃亡は最高刑(死刑)、自衛隊は懲役7年。此のへんは『軍隊』の特徴よりも『警察』の類似団体と似ている。
上官への反抗罪や命令拒否、敵前逃亡を死刑にしないと『本物の戦争』はやり難い。
今の日本で若者達(自衛隊側も)は、自衛隊任官は国家公務員としての就職活動の一環として捉えているが、此れでは戦争は無理です。
『愛国心』論議とも関連するが、国家に一つしかない自分の「心」と「命」とを捧げる必要があるのが『軍隊』で、ここが『警察』とは全く違うところでしょう。
今の日本に、本物の『戦争をする軍隊』は必要ないし、本物の『戦争をする軍隊』に誰が志願するでしょうか。?

自民党(日本会議)は自衛隊を『完全なる軍隊』にしたがっているが、今の日本に『本物の軍隊』は「百害あって一利なし」で、平和憲法がある限り許されるものではない。
あったとしても誰も(ネットウヨでも)志願するものは殆どいないでしょう。

『憲法9条は人類の英知の最高峰』

“自衛隊が軍隊のように見えて軍隊ではない”“本物の戦争はできない”ということがある種の安全装置になっている。!
其の拠り所が憲法9条。
現状のような、平和憲法が瀕死の状態の今でも、9条には、これだけの『偉大な力』がある、といえます。
現実と合っていないとの意見も有るが、理想は高くなければ、理想とは呼べない。
現実を理想に近づける努力こそ、私達みんなにとって一番重要で、意味がある。
理想を現実に合わせることほど、哀れで情け無い事はない。
●国際貢献
海外派兵は日本の恥。
自国の憲法(9条)もまともに守れない国が、海外で何が守れるだろうか。?
敗戦(終戦)の講和条約の条件の一つが現憲法の平和条項。約束や決まりを守らないものは、誰からも信用されない。
●自衛隊の縮小
マスコミが天まで持ち上げた小泉流新自由主義『構造改革』を自衛隊にも適用する。
自衛隊の徴兵制か志願制かの議論が、ブログ界であったが、今の正規雇用の自衛隊員を、非正規雇用(パート、派遣社員)に置き換える。
本当の『聖域なき構造改革』なら当然で、半世紀以上の間、働かなかった自衛隊が非正規雇用化されるのは自然な流れで、外国にもアメリカの州兵の様な例がある。
また、非正規雇用の自衛隊員なら、大幅な経費削減が図れる。
市民と自衛隊の垣根が無くなり、災害救助の迅速化や、自衛隊の民主化等良い事づくめ。
●過去の戦争について
特高警察や憲兵隊は怖かった。しかし一般市民にとって怖かったのは郵便配達や消防団、町内会役員など身近な人々。本当に怖かったのは隣組だった。
日本型ファシズムと戦争の積極的な支持者は、小工場主、現場の親方、棟梁、土建請負業者、小売店店主、小地主、自作農上層、小学校等教員、村役場等一般下級官吏、僧侶神官などの中間社会層だった。
此れに対する中間層のもう一つのグループがジャーナリスト、教授、弁護士、学生層の一部等の文化人(インテリ)グループ。
インテリ層も多くは、積極的に協力し、其の他は消極的に協力し、永井荷風のように非協力だったのは極少数。
積極的に反対したのは、共産主義者だけだった。
結果的に全員が真実に目をつぶり戦争に積極的に参加したが、インテリ層の罪は、其の他の階層の罪より大きいのではないか。?
なぜなら他の階層と違い、インテリ層には調べるつもりなら幾らでも真実は見つけられた。
しかし、そうしなかった。
このことは戦後彼らインテリの良心に負担にならないはずが無い。
戦争に積極的に協力した知識層の半分は戦後に反戦平和を唱えるようになった。一億総懺悔と言ったのは、このグループに属する連中です。
残りの消極的協力グループも殆どすべて反戦平和勢力になる。
戦後にインテリ文化人グループは反戦平和の一大勢力になったわけです。
しかし戦争を遂行したもう一つの中間層。此れが問題で、自分が加害者である自覚が薄い。だまされたとの自覚しかない。
敗戦直後は困ったことに、今度戦争が起こったら『今度は、うまく立ち回って大儲けする』なんて連中も大勢いました。
しかし社会や文化は知識層がリードする。
戦後長い間、知識層=護憲左翼の状態が続き、反戦平和のインテリ文化人グループが日本を一定の方向に導いてきていました。
現在の右翼改憲派知識人は言語矛盾で、知識があれば右翼にはなれないはずなんですがねえ。
決して二度と繰り返してはいけない、血で購った過去の貴重な経験が、歴史の闇の中に埋没して、忘れ去られようとしているのでしょう。

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