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あなたの会社は海外展開ができるか

2010-08-28 01:01:33 | 日記
 IBMビジネスコンサルティング(旧プライスウォーターハウスクーパース、IBMBCと略す)が今年の7月に2年に1度行っている「Global CEO」スタディの結果を公表したが、8月になり、日本のCEOと海外のCEOの調査結果がかなり違っていたので、その部分に関する説明会を10日に開催すると聞いたので参加した。何でも、例年行っている調査では、グローバル調査と日本企業の調査結果ではそれほど大きな差異はないのだが、昨年行った調査では顕著な差が認められるとの話だ。

 まあ、本音で言うと日本にはCFO(最高財務責任者)はいないという自説を持つ僕だが、欧米的なCEOもいないだろうから至極当然では、と半ば興味本位で話を聞いた。

●日本のCEO v.s. 世界のCEO

 今回発表されたレポートの中でグローバル調査の結果と日本ローカルの結果が著しく異なっている項目は以下の5点(※)だ。

 ※http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1008/27/news060.html

 上記以外にも数多くの設問が設けられていたが、いずれもグローバル調査と日本のCEOに関する回答ではそれ程大きな違いはなかったという。

 1の違いについて、IBMビジネスコンサルティングは、日本企業は環境分野で欧米やアジア諸国の企業と違い技術的にも相当なリードを保っているのでビジネスチャンスととらえているためではないかとの分析を語った。

 2および3に関しては、伸び悩む国内市場を背景に海外へ活路を見出そうとする企業の動きが背景にあると分析している。

 4の人材に関する問題意識は世界的にも関心は高いが、日本企業は前記した海外進出に関する課題に加え、この回答の中には記さていないが、求められるリーダーの資質としてグローバル、日本ともに創造性が1位だが、それ以降の構成が全く異なっている。日本は2番目以降、グローバルな思考、熱心さ、持続可能性に対する関心、誠実さとなっているが、グローバルな調査では、誠実さ、グローバルな思考、影響力、寛大さとなっている。

 これらから、日本では既存のさまざまなしがらみにとらわれず、自由な発想で、新技術、製品、サービス、市場開発に臨み、諦めることなく熱心に持続できる人材が望まれているのに対し、海外ではクリエーティブな姿勢で且つ、何にでも誠実に取り組み、業界や自社内で影響力を発揮できる人物が求められている。

 前者は有能なサラリーマン像に通じる所があるし、後者は優秀な経営者を連想させるのは僕だけだろうか。

●かつてない環境変化

 最後のグローバルとローカル市場の取り組みに関してだが、この設問に関する回答でグローバルと日本の調査では最も大きな差異が認められた。

 IBM・BCCは、この結果に対し、海外の企業はおおむね海外市場を最初から意識して、ビジネス展開を考えるが、日本の企業は大きな国内市場に支えられている。そのため、海外に対する意識がもともと低い。1990年代以降、国内市場の停滞でも、自動車産業を中心に旺盛な海外市場中でも米国の市場拡大に支えられてきたが、リーマンショック以降はそれも怪しくなり、本格的な取り組みを余儀なくされた。その現れだというものだ。

 最後に同社は日本の経営者は「かつてない、経営環境の変化」に見舞われていると結論づけた。

 僕は同社の見解はおおむね正しいと思うが、今後については、かなり悲観的な見解を持っている。

●環境変化をなめているのか日本のCEO

 グローバル、日本両方の調査で調査項目首位となった環境と社会問題だが、これをIBM BCCは「急激で複雑なパラダイム・シフト」と断じている。今回の発表で、これへの対応でも、グローバルと日本では大きな差異が生じている。

 変化が急激であるとの認識に関し大差はない。むしろ、「従来よりも多くの要因が影響している」との変化の複雑性に関する認識について、日本企業は81%であるのに対し、グローバルは60%と高い。しかも、今回の経済環境の変化が「従来とは構造が異なる」との認識でも日本82%、グローバル53%とこちらも大きな影響を受けるという認識を持っている。だが、問題は「今後の変化に関する予測」だ。こちらに関しては、日本38%、グローバル65%と全く認識が異なっている。

 なぜ日本のCEOはこのテーマについて楽観的な見通しを示せるのだろう。確かに、エネルギーに関して、日本の企業は欧米の企業と比べ積極的に取り組んできたという自負は分かるが、問題はそれだけだろうか。

 これを僕は「根拠なき楽観主義」と呼ぶ。恐らく、日本のCEOの本音は欧米のように長期間CEO職にとどまることもないのだろうから、自分の任期の間には極端な事態に陥ることがないと判断したのだろう。それとも、本気でこれに真正面から取り組み、解決する自信があるのかもしれない。

 グローバル企業は相対的にこの設問には慎重な回答を出しているようだ。会見の後に行われたQ&Aでも、このあたりに質問が集中した。IBM・BCCが例を上げて説明したのがお隣韓国の企業だ。恐らくSamsung、LG、Hyundai Motors、Pohang Steelsなどを暗示するような説明だった。

 確かにSamsungは圧倒的な投資で日本企業を凌駕している。LGはそのSamsungに対抗するため、スピード経営を標榜している。Hyundaiの乗用車も着実に製品品質が向上し、世界のシェア中でも米国市場で高いシェアを獲得している。浦項製鉄も自動車同様、品質が上がり、価格で日本製品を圧倒している。

 これら韓国勢の動きと比べると確かに日本企業の動きは遅い。松下電工、サンヨーを傘下に収めたパナソニックも完全に3社を統合するのは2012年だという。世界的に劇的な競合を繰り広げている太陽電池も、韓国台湾勢の投資規模と比較すると確かに見劣りする。

 このように日本の経営者は意思決定のスピード、度胸という点で世界の経営者に明らかに劣っている。経済環境の変化は急だ。今の時代、それらに対応するため、経営者に対しリーダーシップというより、カリスマ性が求められている。その物差しで図ると一体全体、何人程度が合格ラインをクリアできるだろう。

●社長、無理ですよ、海外展開なんて

 ここで「環境変化」という言葉の内容がいまひとつ明確ではないので、ちょっと整理する。環境変化には1)字義通り、「自然環境の変化」という意味、各国が競争政策を取り入れた結果、貧富の格差が拡大した社会環境の変化、グローバル化、地方経済の衰退に代表されるように経済の構造変化、今迄世界経済を引っ張ってきた先進諸国がBRICsの台頭に見られるように世界的な経済構造の変遷がある。

 ただし、議論を日本に限ると、まず、日本の国内市場規模は少子高齢化による人口減少で確実に規模が縮小する。次にいわゆるグローバル化の影響だ。内外の競争の激化により、会社を維持することも大変になってきている。新技術への対応や効率的な生産方式の採用も企業の存亡がかかっている。環境への対応は、今の処日本の企業にとって有利だが、これも手放しで喜んでいられる訳ではない。ドイツや韓国、中国の企業はすぐに追いついてくる。

 中でも日本の経営者にとって最も頭の痛い問題はグローバル化への対応だ。国内市場が縮小し、海外企業からの圧力が高まるなら、ちょっとくらいリスクを賭けても海外に活路を見出すしかないのは当然の選択肢だ。

 今回の調査でも、欧米、日本、アジアなどのカテゴリーで最も重視する課題で、日本だけがグローバルを2番目に挙げた。日本のCEOはグローバルという課題はほかの国より困難なテーマだ。

 ただし、これに関しては、自らが招いた結果という側面を否定できない。日本の企業は歴史的に国内を担当した人が社長になってきた。僕の知る限り、海外の事情に詳しい人たち、言い換えれば英語をしゃべれる人たちが社長になれた試しがない。

 もちろん、現地子会社出身の人が社長になるケースもまれだ。ソニーのハワード・ストリンガー氏が数少ない例外で、それ以外では日本板硝子のスチュアート・チェンバース氏が社長に就任したが、わずか1年で退任した。

 こんな状態では、日本のマネジメントにグローバライゼーションを語る資格はないと思うのだが、どうだろう。楽天の三木谷社長が社内の公用語を英語にすると発表して話題になったが、果たして言葉だけを英語にしてグローバライゼーションは解決するのだろうか。

●マネジメントはコミュニケーション

 随分昔の話だが、英語も満足に喋れない人間を社長にしてはいけないと大手コンピュータ・ベンダーの重役が僕にしみじみと語ったことがある。彼は「経営は、極論すると、コミュニケーションだ。従って、グローバルな展開を目指した企業のトップは最低限世界共通言語となった英語を喋れるのは最低限のマナーだ。英語でコミュニケーションを取れなければビジネスを進めることもできないし、大きなロスを生む可能性が高い」。つまり、損をするというのだ。

 確かに、僕の周りを見回すと英語どころか日本語もまともに喋れない経営者がゴマンといる。この状況で海外展開を口にし、情報源は自社の社員からのみでは、まるで「裸の王様」と似通っている。

 僕は決して三木谷社長のように英語を公用語にしろと言っているのではない。海外展開を今後強化しようとするなら、グローバルカンパニーでは既に常識となっていることが何か、それは自社で既に取り込まれているのかを着実に見極めてほしいのだ。その中には、海外の現地法人に出向させられ、不満を募らせている駐在員、現地法人に雇われている現地スタッフが将来自社に希望を持てる会社になってほしいと思っているだけだ。それが、グローバルカンパニーになる最初の一歩だからだ。【伴大作,ITmedia】

(ITmedia エグゼクティブ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100827-00000079-zdn_ep-sci
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