NTTドコモのFOMAネットワークで使える、手のひらサイズの無線LANルータが話題だ。同じく旬のアップル「iPad」はもちろん、PCや無線LAN搭載機器でモバイルデータ通信を行うユーザーにとっても、“これはいいかも”と思える機器がいくつか登場する。
【拡大画像やポータブル無線LANルータの比較画像】 バッファローの「ポータブルWi-Fi」(DWR-PG)もこの1台だ。5月18日に行われたNTTドコモの2010年携帯夏モデル発表会で公示され、注目を集めたのはつい先日のこと。このポータブルWi-Fiは「何ができるのか」、そして「なにがメリットか」を早速チェックしていこう。
ポータブルWi-Fiは、NTTBP(エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム)が2009年に実証実験/モニターテストとして展開した「Personal Wireless Router」の成果を受け、バッファローの無線LAN製品ブランド”AirStation”シリーズとして市販されるものだ。
携帯電話のような“NTTドコモの製品(製造メーカーが携帯キャリアに納入するスタイル)”ではなく、あくまで製造メーカーの機器として販売され、家電量販店における、いわゆる“100円PC(例えば、ミニノートPCの購入と年数縛りの通信契約をセットで行い、実質の本体価格を割り引く方法)”のような販売方法で展開する。本体の購入と2年間の利用を条件にしたNTTドコモのデータ通信契約を同時に行うことで実質の端末価格が割り引かれ、かつ「定額データプラン スタンダード バリュー」+「定額データ スタンダード割」の料金プランも選択できるようになっている(なお、NTTドコモは1年間通信料上限4410円/月で利用できる新規加入キャンペーンを2010年6月1日から始める)。
●ドコモのFOMAネットワークで利用でき、さらに公衆無線LANも共有可能
まずは3Gネットワークの接続機能を確かめよう。本機は、ワイヤレスWANとしてNTTドコモのFOMAネットワークを利用でき、本体にSIMカードスロットを搭載する。
本機は通常の2GHz帯のほか、FOMAプラスエリア(800MHz帯)にも対応しており、山間部や離島も含めたより広いエリアで利用することが可能だ。あわせて、ドコモ網では東名阪地区限定で整備されている1.7GHz帯での通信にも対応しており、整備されているエリア内では電波面での混雑(輻輳)に巻き込まれる可能性が若干減る可能性がある(あわせて、将来的にSIMロックフリーになると仮定するなら、1.7GHz帯を用いるイー・モバイル網も利用できるようになる可能性がある)。通信はFOMAハイスピード(HSPA)に対応し、同機器では下り最大7.2Mbps、上り最大5.7Mbpsで通信可能だ。
なお、ポータブルWi-Fiは3G(FOMA)ネットワークだけでなく、無線LAN(公衆および家庭内無線LANを含む)と固定通信網の有線LAN(家庭内の光ファイバーやADSLなど)も含めて、WAN側の回線をシームレスに切り替えながら運用できる点にある。使用時の状況に応じて最適な回線環境(例えば、最も高速な回線──など)で使えるほか、公衆無線LAN回線もルーティングして共有できるのがポイントだ。WAN(インターネット)側は3G網のみ──となるイー・モバイル/ソフトバンクモバイルの「Pocket WiFi」や、日本通信「b-mobileWiFi」とはここが少し違う。
●SIMロックは「あり」──FOMAカード以外のSIMカードは非対応
ポータブルWi-Fiは、出荷時状態でNTTドコモのデータ通信向けISPサービス“mopera U”の「定額データプラン」用アクセスポイントに接続するよう設定されている。もちろん、このほかの定額データプラン向けISPを利用する場合など、任意のAPN(アクセスポイントネーム)を設定することで、mopera U以外の定額データプラン用、あるいはFOMAパケット通信用の従量アクセスポイントにも接続できる。
FOMAパケット通信用のID/パスワードの認証(PDP認証)方法は「PPP認証」と「IP認証」の2種類あるが、そのうちの「IP認証」のみに対応する。比較的新しいアクセスポイントはたいていIP認証に対応している。
そして、多くのユーザーが気になる「SIMロック」の有無について、こちらは「あり(SIMロックあり)」である。ファームウェア上でSIMロックがかかっており、FOMAカード以外(例えばイー・モバイルやソフトバンクモバイル)のSIMカードを差しても利用できない。
とはいえ、NTTドコモのFOMAネットワークを用いるMVNOのサービスではどうだろう。例えば、日本通信の「b-mobile3G/SIM」やウィルコムの「WILLCOM CORE 3G」などは、サービスを利用するためのSIMカードとして、FOMAカードそのものが発行されている(2010年5月現在)。
手始めに日本通信の「b-mobileSIM」とウィルコムの「WILLCOM CORE 3G」(HYBRID W-ZERO3の購入時に契約したもの)用、2つの“FOMAカード”を使用してみた。これらはどちらもIP接続認証に対応している。
今回の試作機では、それぞれのAPNを正しく設定することで接続できることを確認した。同様に、ドコモのFOMA音声端末で「パケ・ホーダイ ダブル」または「パケ・ホーダイ シンプル」を契約したFOMAカードでの「128K通信」での接続も行えた。
※今回の評価は最終仕様決定前の試作機で行っております。ハードウェアおよびソフトウェアの仕様・機能は、製品版と一部異なる可能性があります。ご了承ください。
●公衆無線LANの“ルーティング”はどうか
本機は、無線LANチップを2つ(インターネット側:IEEE802.11a/b/g、LAN側:IEEE802.11b/g 双方、最大54Mbps)内蔵しており、無線LANのルーティング機能として、家庭内で使う無線LANルータやアクセスポイントはもちろん、公衆無線LANサービスも共有して利用できる。
対応する公衆無線LANサービスは、バッファロー「FREESPOT」、NTT東西の「フレッツ・スポット」、NTTドコモの「Mzone」(mopera U 公衆無線LANオプションを含む)、NTTコミュニケーションズの「HOTSPOT」など。これらの接続用設定がプリセットされている。ここに、自分が加入する公衆無線LANサービスのIDとパスワード、あるいはサービス固有の設定値を入力することで、公衆無線LANの回線を共有できるようになる。
今回はmopera Uの公衆無線LANオプション(U「公衆無線LAN」コース 315円/月)のアカウントを用いたが、ひとまずこれは非常に快適だ。Mzone(およびmopera U「公衆無線LAN」コース)はIEEE802.1x認証に対応し、(接続後にWebサイト上でIDやパスワードを入力しなくても済む)自動認証で利用できるサービスの1つ。公衆無線LAN対応エリアに入れば(例えば喫茶店や駅の構内など)、3G回線より高速である場合の多い無線LANに、インターネット側の環境がシームレスに切り替わるよう設定できる。都心部の駅構内などはMzone対応エリアが多いので、駅に着いたら自動的に──と行った感じで利用できそうだ。
ポータブルWi-Fiは、有線LANポートを備える充電クレードルも付属する。有線LANポートは100BASE-TXに対応しており、これを利用して家庭内の固定インターネット回線をルーティングする──いわゆる無線LANルータ代わりになり、PPPoEクライアントになる機能もきちんと備わっている。逆に、FOMAネットワークや別の無線LANのインターネット接続を、有線LANを経由したほかのPCで共有利用することも可能となっている。
本体のMini USB端子は、バッテリー充電のために付属するACアダプタを接続する、分岐USBケーブル(PCのUSBポートを2つ利用して充電)を用いる以外に、PCとUSB接続するとマスストレージ機器として認識される仕組みだ。認識される領域に電子マニュアルやユーティリティソフトウェアが保存されており、別途microSDリーダー代わりとしても利用できる。さらに、USBモデムとしても利用できるようだ(残念ながら今回の評価機は、USBモデムとして動作するためのデバイスドライバがなく、この機能は試せなかった。追って検証することにしたい)。
●SDカード内のデータを、LAN内で共有できる「簡易NAS」機能も
上記でも少し触れたが、本体にはmicroSD対応のSDメモリーカードスロットも用意する。メディアカードリーダー代わりとする以外に、簡易ネットワークストレージとして、接続した機器で保存したデータをWebブラウザ上よりアクセスして共有できる機能が備わっている。保存したデータをダウンロードするだけであれば、管理画面へログインしなくても利用できる。
さらに、設定したWebサイトをキャッシュデータのようにmicroSDへ自動的にダウンロードする機能やmicroSDに保存する画像データを一部の画像共有サイトへアップロードする機能もある。サイトの自動ダウンロード機能は、本機の性質とともに、本機を積極的に導入したいと思う層にはそれほど利用頻度は高くはないかもしれないが、インターネットへの接続なしに(例えば、3Gデータ通信が行えない地下鉄での移動中などにおいて)、あらかじめ自動保存しておいたサイトをチェックできる──といった利用シーンが想定されている。【井上翔(K-MAX)】
今回の前編は、まずは搭載する機能のおさらいと「SIMロック」について検証しました。後日掲載予定の後編では、より具体的な機能の検証とともに、どんな活用シーンがあるかなどを探っていく予定です。ポータブルWi-Fiについて「これを検証してほしい」という機能・部分はありませんか? PC USERのTwitterアカウント(@itm_pcuser)へどしどし要望を投げていただけるとうれしいです。
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