しをんちゃんの『
まほろ駅前番外地』(文春文庫)読了。
予想通り面白くて、すぐに読み終わってしまった。
なんだろう、この若干30代にして、人生の機微のひだまで心得たような、
人と人との関係の描き方。
ほろ苦いけど暖かいです。
子どもが巣立った後の老夫婦の日常やお互いの愛情のあり方なんぞは
アナタは経験者ですかってくらいの細やかさ。
多田と行天も絶好調。
でも最後はそれぞれの孤独とか隔世感を再登場させていて、
二人がもともと持っていた危うさなどを匂わせたまま終わりました。
コレ、続きが出そうな雲行き。嬉しいな。
しをんちゃん、楽しんで書いているような気がします。
(特に行天)
「自分VS自分以外の(幸せそうな)世間一般」みたいな対立構造は
誰の中にもあるものなのだと思うので、
最後の章の彼らの、どーにも所謂「世間一般の幸せ」とされていることには
入っていけない的な取り残され方は、誰しも既視感みたいなものを持って
共感できるんじゃないかなあと思いました。
やっぱりこの作家さん、好きだなあ。
因みに、多田と行天の関係は、さすが腐女子漫画好きの「しをんちゃん」だと
思います。
流石に世間一般の皆様が目にするような小説で絡ませるようなことはないけれど(失礼)
プラトニックな(そしてもちろん本人たちも意識していない)お互いへの愛情、と
深読みできないこともない。
『
仏果を得ず』(双葉文庫)の、文楽に情熱を注ぐお兄さんたちの関係も
何となく女子が入っていきにくいようなアツさとお互いへの愛情が見られます。
爆裂エッセイで、腐女子っぷりをカミングアウトしている「しをんちゃん」の
嗜好というか裏意図みたいなものが透けて見えるようで、ニヤニヤします。
まあ、お年ごろの女子には、男子がつるんで何か企んでおもしろがったりしている
様子は、入っていけない分マバユく映るもんではありますよね。
(な、懐かしい感じだ。)
少し前に読み終わった、佐野洋子さんもよかったです。
整形することについての違和感を先日ここで紹介しましたが、
佐野さんはこの本を書いていた頃北軽井沢の辺りにお住まいだったよう。
地元に住む友人知人たちが、畑で採れた梨や森に採りに行ったきのこなど
地産のものを佐野さんにお土産として持ってきてくれるのだが
(因みに「お土産とはまさに『土から産まれたもの』なんだな、と佐野さんは
言っている)
佐野さんは彼らに対して返す品物を「金で買う」。
「私は、梨のお礼にじゃがいもを送った。土地の産物ではあるが、
私がもらうもの、私が人にあげるものは全て、金で買うものである。そして
金を得るために私は一生を費やして来た。
ほとんどの人間は、ことに都市生活者は似たりよったりだろう。この村で
生活していても私は金でしか生きられない。」
(『
神も仏もありませぬ』ちくま文庫 「金で買う」より抜粋)
この人のエッセイは、日常で見落としていることとか目を向けないでいることに
ついて改めて「あ、そうか」と共感を持って気づかせてくれるところがいいなと
思います。
飾っていないし、すごく人間くさい。
かっこつけなくても別にいいんだよな、と力が抜けます。
「金で買う」ことでしか生きられない佐野さんは、
それでも自分はそうやって生きてきたし、そうやってでしか生きられなかった。
「私だって、私なりに一生懸命だったわけ。仕方ないわよね。」
「オウ、何か文句あっか。私はアライさん夫婦(註・お土産をくれる土地の人)に
めぐり逢うように神様がとりはからってくれたんよ。神様にえこひーきされてるのよ。
オウ、文句あっか。
しかし、私はその恩恵をどうやって返したらよいのかわかんない。
神様、ありがとうございます。」
《前出「金で買う」より》
拗ねてるようでいて、純粋で素直な感性に、なんだか泣けてくる。
この人も好きだなぁと思う。
改めて自分の生活を考えると、
あれが足りないこれもないっていっつも言っているような気がするけど、
雨風凌げる屋根がある自分の家があって、
毎日食いっぱぐれない食べ物に恵まれて、
なんにもできない私でも雇ってくれたりお金を出してくれる会社や団体があるって
だけで、他に何が不足なんでしょうね。
「人生は大いなる暇つぶし」と豪語し、
暇つぶしなんだから、大きなことをしなくちゃ楽しくない、と、
安定感のある出版社を辞めて自分で会社を興し、今、散々苦労をしている
先輩を思い出した。
もともと連絡が取りにくい人ではありましたが、最近ますます連絡が取れない。
元気かなあ。
或いは、どこかのお坊さんの言と記憶してますが、
駅の人ごみでぶつかって謝りもしないおじさんも、
街で見かけるマナーの悪い人たちも、
さまざまな理由で「許せない」と思うような人たちも、
最後は自分と同じように、必ずみんな死んでいくと考えると
誰に対しても愛しみを感じ優しくなれる・・・
とかね。
そんなものかなあ、と、その境地に到る自信は今んとこ全くないが、
佐野さんの本を読むと、そのお坊さんのおっしゃったことが
10%くらい腑に落ちたような気になりました。
それでもたった一割。
まったくもって修行が足りん。
・・・と、やっぱり読書は秋に限りますね。
日に日に冷え込んでいく陽気は、外に出よう!というよりは
中で本を読もう、という気持ちにさせられる。
『風は山河より』(宮城谷昌光 著 新潮文庫)も3巻に突入。
定則さまが既に剃髪してらっしゃるわっ!!どゆこと

新潮文庫の
Yonda?CLUBは妹に教えてもらって、応募マークをかき集めて、
以前はYondaPANDAちゃんのエコバッグをもらったけど、
今のグッズは・・・・
なんかそそられない。
でも一応集めといた方がいいかな、応募マーク。
今日は晩秋らしい曇りがちなお天気でした。
本の話題に終始するのがふさわしい感じの1日。