文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

大江健三郎や国分某などは日本がフランスなどよりも劣った国であると考えている。だが実際のフランスはどんな国なのか?

2019年04月06日 19時15分57秒 | 日記

彼はジョルジュ・オスマンを登用しパリの三分の一を占めていた貧民街を取り壊し、凱旋門を中心に12本の大通りを走らせる都市改造を断行した、と題して2018-09-19に発信した章である。
高山正之と櫻井よしこさんの連載コラムを読むために毎週、週刊新潮を購読している事は既述のとおり。
大江健三郎や国分某などは日本がフランスなどよりも劣った国であると考えている。
だが実際のフランスはどんな国なのか?
戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之は上記の様な欧米かぶれの人間達には決して分からない実態を見事に描いている。
本日、発売された週刊新潮の掉尾を飾る名物コラム「変見自在」からである。
セーヌ川で下る
パリを流れるセーヌの汚れは年季が入っている。 
西行が手水(ちょうず)を使いながら「願わくは花のもとにて春死なむ」と詠んでいたころ、この川の畔に住む人たちは便所とか手洗いとかの概念を一切持たなかった。 
モノは手掴みで食い、糞便は生ごみと一緒にセーヌに放り込んでいた。 
ために流れは澱み、腐臭が辺りを覆った。 
おまけにシテ島の対岸には畜殺場が建ち並んで豚や牛の群れが別の悪臭と喧騒を付け加えていた。
その川岸通りをルイ6世の王子フィリップが馬を走らせていて、畜殺場から逃げ出した牝豚とぶつかった。
王子は落馬し、ぬかるんだ汚泥に顔から突っ込んで窒息死した。
カペー王朝のお世継ぎが汚泥のせいで亡くなったというのにパリ市民に反省はなかった。
糞便は川に捨て、そこらの家の壁に放尿する習慣を改めなかった。
ために建物は根腐れして傾き、ソウルの百貨店のように崩壊していった。 
それから800年経ったとき、やっと街をきれいにしようと思う政治家が出てきた。
ナポレオンの甥っ子ナポレオン3世だ。 
彼はジョルジュ・オスマンを登用しパリの三分の一を占めていた貧民街を取り壊し、凱旋門を中心に12本の大通りを走らせる都市改造を断行した。 
地下も改造して600キロに及ぶ下水道を巡らせ、市民に便所の設置を義務付け、糞便の臭いのないパリに変えていった。 
今、セーヌ川沿いの古い店に入るとトイレはすべて地下にある。
政府命令とはいえ一階の貴重なスペースを割くなどとんでもないという発想からだ。
ナポレオン3世はこの都市改造費を国債の発行ともう一つ、英国を見習って阿片貿易で賄うことにした。 
折よくインドシナで仏宣教師が殺された。
それを口実に仏軍が攻め、植民地仏印を手にした。 
阿片公社が街ごとに置かれ、住民に阿片を割り当てて販売した。 
「ゆくゆくは全ベトナム人を阿片漬けにして儲けるつもりだった」とジャーナリスト、アンドレ・ビオリスが『インドシナSOS』に書いている。 
阿片売買の収益で下水道工事費の半分くらいは稼ぐことができた。 
で、セーヌはきれいになったかというと実はそうではなかった。
糞便は下水に流されたものの、その先はセーヌに放流されていた。 
仏政府はセーヌをもっときれいにするため仏印の住民に人頭税、塩税のほかに結婚や葬式にまで課税した。
下水道は倍に伸びた。
先の大戦では日本軍が進駐して阿漕(あこぎ)な徴税を止めたが、ドゴールが「栄光あるフランスの復活のために仏印を返してくれ」(C・ゾーン『米英にとっての太平洋戦争』)とルーズベルトに掛け合い、戦後すぐ仏印の搾取が再開された。 
ただドゴールはその収益をセーヌの浄化には回さなかった。
彼は栄光の復活にまず核実験を選んだ。 
かくて植民地からの収益は核研究に注がれ、1960年以降、アルジェリアの砂漠で4度の大気圏内核実験が行われた。
しかしアフリカは欧州に近い。
とかく人目もうるさいので南太平洋で194回の核実験をやった。
97年、シラクはこれで大国になったと言った。
で、積み残しのセーヌ浄化に取り掛かったが、このころには収入源の仏印など植民地はとっくに独立していた。
フランスは再び貧乏所帯に戻っていた。
今、パリには30万本の下水管が走り、9割は汚水処理場で処理されているものの、残る3万本が未処理の汚穢をそのままセーヌに流している。
パリは東京に次いでオリンピックが開かれる。
セーヌ川ではトライアスロンなど様々なレースが予定されるが、浄化の目途は立っていない。
アジア大会では大腸菌うようよのジャカルタ湾でセーリングが行われ、日本選手は下痢に苦しんだ。
仏五輪は汚穢の中で育った仏選手が有利に見える。
こういうのは逆ドーピングにならないのか。


最新の画像もっと見る