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現在の戦略的曖昧さは、台湾を攻撃すれば、台湾だけでなく米国とその同盟国の反撃を受けると中国に自覚させるのに失敗している

2022年08月18日 16時36分48秒 | 全般

以下は今しがた発見した石平太郎氏のツイートからである。
@liyonyon
豪州からの警鐘「中国が台湾を支配下におけば米国の同盟システムは終焉」(JBpress)

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豪州からの警鐘「中国が台湾を支配下におけば米国の同盟システムは終焉」(JBpress) - Yahoo!ニュース
(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)
[ロンドン発]
ナンシー・ペロシ米下院議長の訪台で台湾情勢が緊迫する中、日本を「アジアにおける最良の友」と呼ぶオーストラリアのトニー・アボット元首相(64)が16日、ロンドンでの講演会で筆者に対し、中国が台湾に侵攻する時期について「この2週間で中国が台湾にかけた圧力は、すべてを前倒ししようとしていることを表している」と指摘した。

8月9日、台湾軍は中国の上陸阻止作戦を想定した軍事演習を行った。写真は台湾南部・屏東県での155mm榴弾砲を使った実弾発射訓練の様子

アボット氏は英シンクタンク「ヘンリー・ジャクソン・ソサエティー」で「自由世界を守る/ウクライナと台湾情勢」と題して約1時間、講演した。
この際「中国が台湾に対して何らかの軍事行動を起こす可能性がある時期として今後18カ月とか、2025年また27年とか、さまざまな分析が飛び交っている。あなたはどうみるか」という筆者の問いにこう答えた。

 「私の理解では昨年、米国は、中国が台湾を攻撃する可能性はこの10年の終わりごろ(2030年)までないと分析していた。なぜなら中国は自らの水陸両用上陸作戦能力や対潜水艦能力がまだ十分ではないと判断していたからだ。台湾の人々はそれほど楽観的ではなかったと思うが、それでも中国が差し迫った軍事行動を起こすとは考えていなかったはずだ」(アボット氏)

 「この2週間ほどで、台湾を取り囲むように実施された軍事演習など介入圧力が継続され、強化されたことは、中国がこれらすべてを前倒しして実施しようと考えていることを表している。それは今日なのか、今週なのか、来月なのか、来年なのか。台湾の人々、中国の指導者を含め誰にも分からないだろう」(同)

■ 「あらゆる可能性を想定し、準備を始めることが重要だ

 「しかし明らかに中国は焦っている。彼らは機会をうかがっている。民主主義諸国、特に台湾の友人たちはあらゆる可能性を想定し、計画を立て、準備を始めることがこれまで以上に重要だ」とアボット氏は力説した。
中国が台湾に侵攻した場合、日本がどう対応するかについては「台湾は九州からボルネオ島を結ぶ第一列島線の一部だ」とした上で、こう答えた。

「安倍晋三元首相(故人)や麻生太郎自民党副総裁は、中国が台湾に侵攻した場合、安全保障関連法で集団的自衛権を行使できる存立危機事態に発展する可能性があると述べている。2人とも日本の安全保障における台湾の重要性について衝撃的な発言をしている。この発言から明らかなのは、日本は台湾防衛のために自衛隊を配備する用意があるということだ」

インドが日米豪印4カ国(クアッド)の一角をなすことについて、アボット氏は講演で「安倍氏の偉大なレガシー(遺産)だ。最も重要な戦略的発展だ。日本は自衛隊を増強し、台湾防衛に自衛隊を使うことができるとシグナルを送っている。オーストラリアの艦艇や航空機に基地を提供すると打診し、日豪協定でより緊密な潜在的戦域作戦が可能になった」と語る。

「世界と地域のリーダーシップは、相対的に衰退しつつある米国だけに任せておくわけにはいかない。日本は西太平洋の主要な民主主義国家として軍事力に独特の制限を加えることなく、正当な地位を占め、インドは第二の民主的超大国として台頭する必要がある。英国は昨年の空母クイーン・エリザベスの極東派遣を日常化しなければならない」と力説した。

■ 「戦略的曖昧さ」ではもはや台湾の安全は保障できない

ジョー・バイデン米大統領は昨年8月の米ABC番組、10月の米ボルチモアでのタウンホールイベントに続いて、今年5月、東京での岸田文雄首相との共同記者会見で「あなたはウクライナ紛争に軍事的に関与したくなかった。もし同じ状況になったら、台湾を守るために軍事的に関与する気はあるのか」と問われ、「イエス」と即答した。

1979年に米中関係が正常化された際、台湾に対する米国の立場が台湾関係法で定められた。
台湾に防衛的な武器を供与するとともに、台湾の人々の安全、社会・経済システムを危うくするような力に対抗する米国の能力を維持することが明記された。
しかし、その一方で、中国が侵攻してきた場合、必ず台湾を防衛するとは約束していない。


この「戦略的曖昧さ」を歴代米大統領が維持してきたのは、台湾を巡り米国が中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避するとともに、「武力介入しないかもしれない」と台湾独立派に思わせ抑止する狙いがあった。
しかし経済力での米中逆転が迫り、軍事力でも中国が台頭する中、「戦略的曖昧さ」では台湾の安全保障を維持できないとの危機感が強まっている。


アボット氏は「正確に言えば、現在の戦略的曖昧さは、台湾を攻撃すれば、台湾だけでなく米国とその同盟国の反撃を受けると中国に自覚させるのに失敗している。レトリックを変えるだけでは危険だ。ましてや何も変えないとなると、米国は世界秩序を維持しようという意志を失ったと中国に結論付けることを促してしまう」との強い懸念を示す。


新しい2つの戦争

バイデン発言について、アボット氏は筆者に「言ったことと意味することはしばしば異なる。興味深いのは、バイデン氏は3度、米国は台湾防衛を支援し、台湾への攻撃に抵抗すると明言したことだ。いずれも政府高官が発言を後退させた。おそらくバイデン氏は公式には政策を変えず、北京に少し強いシグナルを発したのだろう。そう思いたい」とだけ語った。

講演でアボット氏は「ウクライナでは独裁と民主主義の新しい熱い戦争が起きている。中国と民主主義の新しい冷戦も進行中だ。米国は経済、軍事大国として中国に勝てるとは信じられなくなっているため、新冷戦に打ち勝つのは旧冷戦に比べずっと困難になる。中国の指導者は西側の民主主義国家は終わりに向かって衰退していると考えている」と話した。

「ウラジーミル・プーチン露大統領があきらめさえすればいいのだが、彼はあきらめない。何一つ正当化できないロシアのウクライナ侵攻から教訓を学ぶなら、弱さは誘惑であり、小国は一国ではのみ込まれてしまうリスクに直面しているということだ。最善策は民主主義国家がウクライナにもっと強力な武器を与え、失われた領土をウクライナが取り戻すことだ」

8月9日のサキ軍用空港の攻撃に続き、16日も、ロシアが併合したクリミア半島の弾薬庫が爆発した。
ウクライナ軍の反撃で窮地に追い込まれたプーチン氏が戦術核兵器を使用すれば、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、ロシア軍は米国などNATO加盟国の軍隊と戦うことになると米欧はプーチン氏を牽制しているとアボット氏は解説する。

■ 「私たちの玄関先にある危険」

中国は世界最大の海軍と海警、軍の命令を受けた膨大な漁船群からなる海上民兵を構築している。
「世界はウクライナ戦争よりひどい状況下にある。中国が米国の抵抗のあるなしにかかわらず、台湾を支配下に置いた場合、米国の同盟システムの終わりを意味する。米国が主導してきた世界秩序は終焉する」とアボット氏は警鐘を鳴らす。


元オーストラリア陸軍少将で現在、豪上院議員のジム・モラン氏は著書『私たちの玄関先にある危険』の中で「戦争はあまりに恐ろしいので起こるはずがない、あるいはその可能性は無視できるほど小さいと結論づけるのは危険な幻想だ」と指摘した上で、可能性として中国が第二次大戦で連合軍が行ったノルマンディー上陸作戦スタイルの侵略を実行することも想定する。

海上民兵による台湾封鎖、台湾の政治指導者を攻撃する「斬首作戦」といった可能性をも挙げながら、モラン氏が最も可能性が高いと睨んでいるのは、日本の真珠湾攻撃スタイルの奇襲攻撃だ。
たとえば、中国人民解放軍がロケット軍を使って西太平洋のすべての米軍基地とすべての空母打撃群を破壊する――これは中国が目的を達成する最も論理的な方法だという。
「中国が世界一の大国となり、米国が反撃を断念すれば、台湾は香港のように中国に協力せざるを得なくなる。日本、韓国、オーストラリアは圧倒的に不利な戦争を戦うか、中国の従属国になるかという悲惨な選択を迫られる。壊滅的な戦争を回避するには、どんな攻撃も価値がない、大規模な報復を招くと中国に確信させなければならない」とアボット氏は言う。




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