文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

捕えれば鼻を削ぎ、耳を削ぎ、目をくり抜き、男性器を切り取って喉に詰めて殺し、なお四肢をバラバラに切り落としてそれを道筋の軒先にぶら下げた。

2019年03月15日 20時47分00秒 | 日記

読書家の友人から新潮文庫、変見自在、ロシアとアメリカ、どちらが本当の悪(ワル)か(490円)を薦められ購読している。
これは彼の本の中でも最高レベルに凄い本である。
戦前、戦中、戦後の嘘を暴き、戦後の世界で唯一無二のジャーナリストとしての人生を送っただけではなく、今や日本のみならず世界の近現代史の最高の研究者、検証者としての彼の世界一と言っても全く過言ではない真の博覧強記に対してこそノーベル賞は与えられるべきものだと私は確信する。
勿論、彼はノーベル賞など全く望みもせずに生ある限り世の嘘を暴き事実を日本と世界に知らしめるという、人類にとって、これ以上ない尊い仕事を続けているのだが。
はじめに 
-平気でウソを書く新聞に騙されるな-
日清戦争は明治27年7月に始まった。
日本軍はソウルの南に上陸して支那軍を蹴散らし、9月にはもう平壌に迫っていた。日本軍にとって久しぶりの外敵との戦いになるが、相手の支那人は強くはないものの、その残虐さは日本軍を十分に驚かせた。彼らは「捕虜」の意味を知らない。捕えれば鼻を削ぎ、耳を削ぎ、目をくり抜き、男性器を切り取って喉に詰めて殺し、なお四肢をバラバラに切り落としてそれを道筋の軒先にぶら下げた。 
山懸有朋は「敵国は古きより極めて残忍の性を有す。生擒(生け捕り)に遭わば必ず残虐にして死に勝る苦痛を受け、ついには野蛮惨毒の所為をもって殺害せらるる」から潔く自決せよとの訓示を上陸早々に出している。錦州城下では日本軍にやられた支那兵に原住民が群がり、瀕死の彼らを殺して身ぐるみ剥ぐ姿が目撃されている。 
冬を前に日本軍は難攻不落と言われる旅順要塞を攻め、1日でここを落としてしまう。眼下の旅順の街は戦火を避けてほとんどの市民は避難したあとで、そこに逃げ込んだ残敵の掃討もすぐ終わった。 
しかしその2週間後、ニューヨーク・ワールド紙にジェームズ・クリルマン記者の「日本軍大虐殺報道」が載る。日本軍は女子供を追い、強姦し、殺した。「水辺を逃げる子供たちを追って兵士は容赦なく銃弾を叩きこんで切り刻んだ」今に「旅順6万人大虐殺」と伝えられる噂の素がこれだ。
日本政府はあらぬ誹謗に驚く。
ワールド紙はピューリッツァーの経営で、いわゆるイェローペーパーの一つだった。過去にもUFOに連れ去られ、宇宙人に強姦されたとかのエログロを専門とした新聞だが、それにしてもその描写。空想で書いたとは思えぬ真に迫った凄さがあった。 
この誹謗は幸いベルギー駐日公使アルベール・ダネタンがフランスの観戦武官らを取材し、日本軍の無実を立証してくれた。
クリルマンの創作した嘘と分かったが、ではあの迫真の描写は何がヒントだったか。ハワード・ジンの『若者のための米国史』に日清戦争と同じころまで続いた米国のインディアン戦争の虐殺の形が載っていて、調べてみたらコロラド州サンドクリークであったシャイアン族の虐殺場面がそっくり同じだった。報告者はシャイアン混血のロバート・ベントで、夜明け方、男の戦士が出払った集落を800人の騎兵隊が襲うところから始まる。
騎兵隊は丸腰の女を撃ち殺してその頭皮を剥いだ。別の女が子供を連れて逃げる。「水辺に逃げた母は土手の砂を掘って我が子を隠そうとしたが、背中から撃たれた。母が持たせた白旗を振る6歳の女の子も容赦なく撃ち殺された。妊婦は腹を割かれ、傍に引きずり出された胎児が捨てられていた」クリルマンの記事と同じ描写だ。
日本軍は支那軍の残虐な仕打ちに報復もしなかった。投降する者に危害も加えない。それが気に食わなかったのだろう。
非白人で非キリスト教徒の野蛮な日本人はこう振る舞えと書いたつもりだったが、それで思いつく残虐さは自分たち白人種がやってきたものだったところが笑える。 
同じ嘘でも、「僕は浮気していない」といった単純な嘘と違う、嘘を承知で書いている。
日本人には真似できない嘘だと思っていたら、世の中は変わった。
オレは社会派だと気張る「美昧しんぼ」の作者、雁屋哲が反原発に乗って福島で主人公に鼻血を出させていた。 
中原ひとみが主演した原爆映画「純愛物語」を真似ただけの幼稚さだが、それが問題になったときのビッグコミックスピリッツ編集部のコメントがひどい。
「低放射線の影響や行政や報道の在り方について議論を深める一助になればと思う作者の意思を尊重し」(朝日新聞)てのことだと。  
嘘と知ってついた嘘だ。そんな嘘をベースにしてどう議論を深めるのか。
そういう猥雑な嘘を排除して初めて本当の原発論議が始まる。
この作者も編集者も嘘を息のように吐く支那人と変わらない。  
先日、沖縄返還に絡む日米密約問題で、最高裁は原告の元毎日記者西山太吉の訴えを棄却した。40年かかった密約事件もやっとけりがついたが、この事件報道もおかしかった。 
西山は密約を入手するために外務省事務官の女性に言い寄り、情交を交わした。三日にあげず寝た。そんなに記者は暇かと言われそうだが、それはいい。ただ折角、女からネタを取りながら、彼はそれを記事にしなかった。  
半年後、彼はそれを社会党の横路孝弘と楢崎弥之助に持ち込んだ。
楢崎は解同の中央委員を務める男だ。
そして国会議場で横路が得意げに密約を示す場面に続く。
西山のこの振る舞いには「密約で倒聞に持ち込む」意図を普通は感じるだろう。
彼は記者の仮面を被った社会党活動家でしかなかった。  
そんな薄汚い事件の幕引きとなる最高裁判断に新聞各紙は何と書いたか。
当の毎日新聞は「日米の密約を報じた西山氏」と、朝日新聞も「西山さんは初めて密約の存在を暴いた」と書いている。 
西山が新聞で「報じ」るか「暴く」かしていればこの事件はなかった。報じないで政局にしようとしたからこんな騒ぎになった。 
朝日新聞で言えば南京大虐殺の嘘を創った一人で支那軍に武器調達をしていたシーメンス社のジョン・ラーベを「普通の会社員」と書いた。
「憲法9条にノーベル平和賞を」と言い出した社会党系活動家のおばさんも朝日は「普通の主婦」と書いた。 
支那や米国だけじゃあない。
新聞も実は嘘を承知で騙しの嘘をちりばめている。 
本書がそういう陰険な墟をどう見抜くかの助けになれば、と思う。
2014年 夏      高山正之


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