文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

すなわち、良き伝統があるからこそ、日本では「女性の権利」を過度に主張するような過激な「女権運動」は端から不要である

2024年01月13日 07時56分54秒 | 全般

以下は発売中の月刊誌Hanadaの巻頭に掲載されている石平さんの連載コラムからである。
月刊誌HanadaとWiLLは活字が読める日本国民全員が必読の書である事は何度も言及している通り。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。

「保守とは何か」を再考する
日本保守党の結党は、戦後の政治史に新たな1ページを加えた。
これを機に、「保守とは何か」をもう一度考えてみたい。 
政治的、社会的、文化的な意味における「保守」は、第一義的に「一つの国、あるいは民族共同体の伝統を大事にし、その本質的な部分をきちんと守っていくこと」と私自身は理解している。どの世界も、「伝統」を蔑ろにする考え方や文化は決して「保守」とは言えまい。 
日本は現存する世界最古の皇室を崇敬し、天皇を中心とした日本古来の国体を守り、神道や日本仏教や武士道が長い歴史のなかで培ってきた「大和の心」を大事にし継承している。
これこそ真正「保守」の心構えの基本ではなかろうか。 
伝統を大事にするからこそ、保守は常に革新との対極において語られ、時に革新派からは「守旧」のレッテルを貼られる。
いわば「保守VS革新」の対立構造が作り出されてきた。 
しかし、はたして「保守」は、「革新」の対極なのか、「保守」はいつ何時も「革新しない」のか。
実は、日本の歴史を見れば、必ずしもそうではない。 
たとえば明治維新は、政治的にも文化的にも革新そのものであって、江戸時代の幕藩体制を覆し、斬新な近代国家を作り上げようとした一種の「革命」である。
しかし周知のように、明治維新は王政復古というスローガンの下で推し進められ、悠久の歴史を有する日本伝統の天皇と皇室を頂点とした近代的国民国家を構築した。
これはいわば近代化のための革新であると同時に、日本の伝統を活かした復古でもあった。
明治維新では「保守」と「革新」が見事に融合していたと言えよう。 
あるいは戦後の高度経済成長期、日本企業が様々な技術革新を行い、VHS(ビデオ・ホーム・システム)、ウォークマン、インスタントラーメンなどの画期的な商品を世に送り、世界の消費文化を一変させた。
あの時代の日本企業の強さを根底から支えたのは、終身雇用や年功序列といった江戸時代の丁稚奉公制度を起源とする組織の原理だった。
高度経済成長期の日本企業は、「保守」を土台に「革新」を成し遂げたと言えよう。 
日本では保守と革新はむしろ助け合うような友好関係であって、両者の相性は実はよいことがわかる。 
その理由の一つは、日本の伝統が時代を超越した普遍性を持ち、時代を先取りする先進性を兼ね備えているからである。 
たとえば世界を見ると、「女性の権利の尊重」は近代的かつ革新的観念であって、この考え方の定着は「社会の進歩」だとみなされている。     
他方、天照大神を「皇祖神」とし女性天皇を戴いた神道と天皇の国、日本においては「女性の尊重」はもともと伝統文化の一部である。
本欄2023年3月号でも取り上げたように、江戸時代の日本女性となると、離婚も再婚も自由で、長旅も自由、教育を受ける機会にも恵まれていた。 
このような良き伝統があるからこそ、近代になってからの日本社会において、「女性の権利」の保障と向上はむしろ自然の流れとして定着した。
すなわち、良き伝統があるからこそ、日本では「女性の権利」を過度に主張するような過激な「女権運動」は端から不要である。 
最近のLGBT法の問題も然り。
LGBTを敵視し極力排斥するような宗教的伝統を有する国々においてこそ、LGBTの人々の権利を守る法律づくりが求められる一方、日本には最初からLGBTを差別する伝統文化はない。
「草木成仏」という独特の仏教用語を生み出した日本の伝統文化は、一草一木にも仏性があると考えるほどで、ましてや性的少数者を差別などしないし、現にそのような差別の歴史は存在しない。
いまもLGBTの人々の多くが、テレビや芸能界などで大活躍して人気を博している。 
日本の伝統を完全に無視し、問題だらけのLGBT法の成立を拙速に進めた日本の「革新勢力」の所業は言語道断である。
法案成立に対しては、LGBT当事者の多くも反対の声を上げている。
古き良き伝統のあるこの日本においてはこんな法案は不要であり、逆に法案成立によって社会の分断を招く虞(おそ)れすらある。 
そうした意味で、拙速なLGBT法の成立に異議を呈したことが一つのきっかけとなった日本保守党の誕生は、まさに日本人の心底から湧き出る保守意識の発露であって、保守の本筋を貫いた称賛されるぺき政治行動であろう。 
私たち保守は、これからも革新をその都度成し遂げていきながら、恒久の価値ある日本の伝統をいつまでも守っていきたい。
せきへい
評論家


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