文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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テレビも新聞も、ひとえに民主主義に資する存在であるべき…加計報道は、メディアのありようを考え直すための最大の教材になる

2024年03月06日 10時52分20秒 | 全般

以下は前章の続きである

BBQ写真の真実 
この印象はどのように形成されたのでしょうか。
事の発端は、2017年6月16日の参院内閣委員会での民進党・櫻井充議員の質問です。
少し長くなりますが、当時のやり取りの概要を引用します。 
櫻井 
官房副長官にお伺いしますが、いま現在、加計学園のどういう役職をお務めでしょうか。
萩生田 
千葉科学大学の名誉客員教授を拝命しています。
櫻井 
その前は、加計学園系列でどういう役職に就かれていましたか。
萩生田 
2009年、2010年の4月から千葉科学大学で教鞭を執っておりまして、それ以外のことは何もしておりません。
櫻井 
どういう経緯で、そこで教鞭を執るようになったんでしょうか。
萩生田 
たまたま落選をして時間ができてしまったときに、複数の学校から、もし時間があるんだったらうちでそういう仕事をしないかということを声を掛けていただいて、そのなかの一つがこの学校でありました。
櫻井 
多分、何も知らないで声を掛けてくるということはほとんどないことであって、それ以前からこの加計学園の理事長とお付き合いはありましたか。
萩生田 
私、理事長とはお付き合いはございませんでした。
櫻井  
しかし、そこで働くようになったからには、それは理事長とお話しすることはありましたよね。
萩生田 
入学式など、全体行事のときに控室でお会いすることはございました。 

このやり取りを見ればわかるように、櫻井議員は私が加計学園系列の千葉科学大学で客員教授になる「以前」から、加計理事長と付き合いがあったかどうかを尋ねています。
そのため、私は「お付き合いはございませんでした」と答えたまでです。 ところが、6月20日に先のバーベキューの写真が報じられると、「理事長と付き合いがなかったなんて嘘だった! 虚偽答弁だ! やましいから理事長との関係を隠したのだ」と糾弾されることになったのです。 
しかし、よく読んでいただければわかるように、櫻井議員が尋ねたのは、私が客員教授になる2009年以前から加計理事長を知っていたかどうかです。
当然、その頃は加計理事長とのお付き合いはない。
対して、バーベキューの写真は2013年のもの。
少し情報を突き合わせればわかるものを、細部を省いて「萩生田は嘘をついている」かのように印象づけるのは、まさに印象操作そのものではないでしょうか。
また、名誉教授に関しては、7月に入ってから〈官房副長官就任時から今年6月まで、「大臣規範」で定められた兼職の届け出をしていなかったことがわかった〉(「朝日新聞」七月八日付)などと報じられました。 
これも濡れ衣です。
兼職届は職務の実態があって初めて提出すべきものだというのが内閣府の判断であり、勤務実態のない名誉職は届け出する必要はないとしています。
私は官房副長官就任時に自分の役職をすべて列記して内閣府に相談しており、「この団体は補助金が出ているから会長を辞職してくれ」と言われて退任したものもありましたが、千葉科学大学の名誉客員教授に関しては意図して兼職届を出さなかったのではなく、出す必要がなかったのです。 
しかし、六月に民進党(当時、現在は立憲民主党)の逢坂誠二衆院議員がこの件に関する質問主意書を内閣に提出したため、同日に「そういうことなら一応、出しておこう」と兼職届を出したところ、今度は「どさくさ紛れに届けを出した」と言わんばかりの記事を書かれたのです。

NHK「クロ現+」の“罪” 
そして極めつきが、2017年6月19日にNHK「クローズアップ現代+」が報じた、「10/21萩生田副長官ご発言概要」という文書です。
NHKの社会部が独自入手した極秘スクープだと息巻いていた文書ですが、これに関するNHKの取材・報道姿勢には大いに疑問が残ります。 
NHK内部では当時、社会部と政治部の間に対立があり、この文書についても社会部は「極秘スクープだ」「萩生田本人に訊く必要はない」と言っていたそうです。
一方、政治部は「当事者にもきちっと訊くべきだ」と主張していた。
このやり取りのなかで政治部は、社会部から聞き取りした文書の内容を私にファックスで送ってきた。
「この文書について答えてくれ」というわけです。 
その質問が来たのは、放送を翌日・月曜日の夜に控えた日曜の夕方。
しかも、文書そのものを見せられたわけではない。
コメントは返しはしましたが、いったいどのような性質の文書なのかも、メモなのかどうかも分からない状態では答えようがないわけです。 
しかし、NHKの「クロ現+」はその文書を「新文書入手」として大々的に報じました。
視聴者の方々は、「やっぱり萩生田は真っ黒だった」などと思ったことでしょう。
しかし、この「ご発言概要」を読んでも、私が発言した覚えがまったくない内容ばかりだったのです。

文科省文書の“正体” 
結局、この文書は、当時、義家文科副大臣が「著しく正確性を欠く個人の備忘録的なメモ」と私に説明したのが本当のところでした。
メモを指示した本人である文科省の局長も、「複数の人から言われたことを、〈萩生田副長官ご発言概要〉と題する一つの紙にまとめてしまった」という説明でした。 
いったい何のためにそういうペーパーを作ったのかと訊くと、「省内をまとめるにあたって、文教族である萩生田さんが言ったことにすれば、みんなしょうがないと納得するから」だというのです。 
これを聞いて、私も驚きました。
「言っていないことをあたかも本人が言ったようにまとめるなんて、文科省はそういういい加減な仕事をしているのか」と叱り、今後、このような文書を作成する際には、発言者本人に確認すべきだとも言いました。 
また、松野文科大臣も会見で「不正確なメモが省内で共有されていたことで、萩生田さんにご迷惑をおかけした」と述べていますが、この映像は夕方のニュースでわずかに流れた程度で、いまだにこの文書の性格は国民の間に認識されていないのではないでしょうか。
さらに大きな問題なのは、この「萩生田副長官ご発言概要」なる文書について、私に直接取材に来たのは産経新聞ただ一社だったことです。
もちろん、官房副長官時代にはメディア各社に番記者がいますから、彼らに対しては逐一説明しています。
それどころか、「番記者だからと言って私を庇うことはない。ただ、事実について本人が説明していることをデスクに上げてほしい」と言ったほどです。 
しかし朝日新聞をはじめ、産経以外のメディアは直接取材には来なかった。
FAXでの後追い質問が送られてきた程度です。 
朝日新聞はこの文書についても、政府側のコメントや松野大臣の会見内容を報じてはいます。
しかし、同じ記事に次のように書いています。 
〈文科省が作成した「総理のご意向」などと記された文書をはじめ、加計学園をめぐる一連の文書をめぐっては、萩生田氏や内閣府、文科省でそれぞれ言い分かバラバラな状態だ。しかし、菅氏は会見で「それぞれの大臣が責任を持って答弁している」と主張。首相が状況に応じて会見などで説明するかどうか問われると、「考えていない」と否定した〉(「朝日新聞」6月20日付) 
つまり、「政府側はそう説明しているが、真偽はまだ明らかになっていない。その疑惑を払拭したければ、総理自らがきちんと説明しろ」というわけです。
朝日新聞はいまもってこの姿勢を貫き通し、「疑惑が残った」「国民は納得していない」などと書き立てている。 
たしかに文科省や内閣府の役人たちも、実際に国会答弁をする段になると保身に走って「記憶にない」などと口にするため、言い分かバラバラに見える面もあるのでしょう。
しかし、しっかりと取材すれば、おのずと事実は明らかになるはずなのです。 
にもかかわらず、新聞記者ともあろうものが、彼らの言うところの「疑惑の張本人」に取材すら申し込んでこない。
これは「問題提起」したメディアとして、実に無責任な姿勢ではないでしょうか。

抗議を圧力にすり替え 
私自身は、あまりにもひどいデタラメや印象操作に対してはとことん向かっていきたいと考えていましたが、官房副長官時代には報道に対する抗議ができませんでした。
抗議すればすぐに圧力とすり替えられ、「言論弾圧」だと新たなレッテルが貼られてしまうからです。 
また、自身に関することで抗議しても、結局は火に油を注ぐことになり騒ぎを大きくするだけだという思いもあった。
だからといって我慢していると、「逃げている」「やましいことがないなら説明できるはずだ」などと言われてしまう。
実に悔しく、不愉快な思いをしました。 
現在、私は政府を離れて党の役職に就いていますので、テレビでも新聞でも雑誌でもネット番組でも、メディアの問題点を指摘できるようになりました。
現に、政府の役職を離れてすぐの2017年8月には、テレビ朝日の『グッド・モーニング』という番組に抗議し、番組は後日、謝罪を放送しています。 
抗議したのは、8月4日に同番組で放送された田原総一朗さんの次のコメントでした。 
〈萩生田光一さんを幹事長代行にした。これで僕はぶちこわしだと思う。すべてぶちこわし。萩生田光一というのはね、加計学園問題のいわば一番の責任者ですよ〉
これまでお読みいただいた方にはわかるとおり、「萩生田は加計学園問題の一番の責任者」というのは全くの虚報です。
そこで抗議を申し入れると、8月7日に〈田原さんの見解とはいえ、「加計学園問題の一番の責任者」というコメントは、一方的で、正確性を欠く表現でした〉と番組内で謝罪したのです。

メディアは身を正せ 
本来であれば、謝罪はともかく訂正や検証が必要な報道が、テレビや新聞には他にもあるはずです。
この加計問題報道では、NHKの偏向報道は公共放送にあるまじき姿勢でしたし、朝日新聞もクオリティペーパーの名が泣く報道を続けてきました。 
冒頭にも申し上げたとおり、政治家は批判を甘んじて受けるのも仕事の一つですが、メディアの側も、偏向報道で政治家の首くらい簡単に取れることは肝に銘じてほしい。
まして、嘘や偏向、恣意的な切り取りで政治家の政治生命を断つようなことはあってはなりません。 
私は小さい頃から、親に「新聞をよく読みなさい」と言われて育ってきました。
一方、最近の若い人たちはテレビも新聞も見ず、ネットの情報を突き合わせて精査し、自分で真偽を判断するようになっているため、加計問題についても実際のところを深く理解していると思います。
「新聞を読まないほうが正しい判断ができる」などと言われるような日本であってはいけない。 
テレビも新聞も、ひとえに民主主義に資する存在であるべきです。
加計報道は、メディアのありようを考え直すための最大の教材になるのではないでしょうか。

 

2024/3/3 in Kyoto

 

 


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