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オバマ氏は…プーチン氏による「化学兵器の国際管理」案に救われた…こうしてオバマ政権はプーチン氏に主導権を完全に奪われた

2022年03月23日 14時28分29秒 | 全般

以下は今日の産経新聞、正論に、「プーチン的帝国主義」の背景、と題して掲載された青山学院・新潟県立大名誉教授袴田茂樹の論文からである。  
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
日本国のみならず世界中で親中国的な言動を行って来た人間達は本論文を肝に銘じて読まなければならない。
彼らの特徴は似非モラリズであり、おためごかしの頭脳であるが、今回のウクライナ侵攻、日本の電力逼迫等の災厄の全ては彼らの責任なのである。
彼らは恥を知って、言論界から消え去るべきだろう。
見出し以外の文中強調は私。
情報機関出身のプーチン大統領だが、ウクライナ侵攻決断の認識は甘過ぎた。
数日内にキエフ陥落、セレンスキー政権を「ネオナチ」として排除するとの計画は、予想外の抵抗に遭っている。
その背景には、2014年の軍事力による無血の「クリミア併合」の経験の過信および、コメディアン出身で戦争という重大問題には対処できないと軽く見ていたゼレンスキー氏の、死を賭した頑強な抵抗と雄弁な国際活動で、ウクライナ国民の士気や世界のプーチン批判・ウクライナ支援が一気に高まった事などがある。
人格急変したわけではない
非武装中立というおよそ非現実的な要求、実際には露の傀儡政権樹立に固執してウクライナに侵攻したプーチン氏の剥き出しの帝国主義的意識は、彼の考えや人格が急に変わった結果ではない。
その根はもっと深いことと、その帝国主義的行動に迎合してきた従来の欧米や日本の対露政策が今日の事態を生んだことを指摘する。
ソ連崩壊直後の旧ソ連地域の独立国家共同体に関し、プーチン氏は(露主導の)共同の軍隊と共通通貨ルーブル圏の創出と考えた。
彼は大統領になる前年の1999年に所謂「ミレニアム論文」を発表し、「民主主義という普遍的価値の堅持と、ロシア的な価値の重視」という折衷論を述べた。
しかし大統領就任直後、国際エネルギー価格急騰で露は経済復興して大国意識を取り戻した。
例えば90年代の市場化政策の責任者であった改革派のA・チュバイス元副首相や改革派指導者、V・トレチャコフ氏たちまでが、2003年~06年頃からロシア主義と帝国主義を美化し、住民投票による旧ソ連地域の露への併合を肯定し始めた(露紙『独立新聞』03年10月(『モスクワ・ニュース』06年3月)。
露改革派もプーチン氏に迎合
露の改革派はそもそも帝政ロシアやソ連的帝国主義に反対してきた人達だが、2人はプーチン大統領の意向を敏感に嗅ぎ取って迎合したのだ。
重要なのは、06年6月1日の露外務省の発表、つまり露は統治の原則・軸足を「領土保全」から「自決権」に移すと発表したのだ。
1990年代には、ソ連邦崩壊に続く露連邦自体の崩壊を懸念して「領土保全」を強調したが、大国に復活した後は「自決権」すなわち「住民投票」による周辺諸国領土の露への統合を重視する、と政策転換したのだ。
ラブロフ外相は、南オセチアなどが独立運動を起こしたグルジア(ジョージア)は、統一された主権国家ではないと述べた(『イズベスチヤ』06年6月)。
露政府が「領土保全」から「自決権」に軸足を移したことは旧ソ連諸国に危機感を生んだが、わが国でも世界でもほとんど無視された。
この政策転換の結果、08年8月に露軍のグルジア侵攻で南オセチアとアブハジアの「独立」が宣言され、露は「特殊権益圈」(影響圈)という地政学的用語を初めて使った。
しかし翌09年1月に就任したオバマ米大統領は、最初に米露関係のリセット(改善)政策を打ち出し同年10月にはノーベル平和賞を受けた。
つまり米も世界も露のグルジア侵略を事実上認めたのだ。
オバマ氏はシリア問題に関して化学兵器の使用が(軍事対応を行う)レッドラインだと12年に世界に宣言したが、翌年、化学兵器が実際に使われると、責任を議会に振り、プーチン氏による「化学兵器の国際管理」案に救われた。
こうしてオバマ政権はプーチン氏に主導権を完全に奪われた。
14年の「クリミア併合」直後、露の軍事専門家、A・フラムチュヒン氏はNATO(北大西洋条約機構)を「張り子の虎どころか石鹸の泡」だと揶揄した(『独立新聞』)。
国家主権、安保根本見直しを
バイデン大統領は昨年1月、就任時に軍拡競争を最も恐れるプーチン氏に新START(戦略兵器削減条約)の無条件5年延長を提案して彼を大いに驚かせ喜ばし、またウクライナヘの軍事侵攻の前に、「米は武力行使せず」と宣言した。
これらは全て、今回のプーチン氏のウクライナ侵攻を後押しした。
私は、武力行使を宣言せよと言っているのではない。
そこを曖昧にしておく作戦こそが抑止力になるし、オバマ、バイデン的アプローチやそれを認めたG7も、結果的にプーチン氏の決断を後押ししたと言いたいのである。
1994年のブダペスト覚書でウクライナ(当時は世界第3位の核保有国)に核放棄、核拡散防止条約加盟と引き換えに同国の独立、主権、領土保全を保証した露だけでなく米・英の責任も問われないか。
前述の露軍事専門家は、ウクライナが放棄した核の10%でも保有していたら、クリミア併合はあり得なかったと述べた。
3月21日、露は日露平和条約交渉中断、北方四島の共同経済活動非継続を発表したが、これらは事実上、既成事実を認めたにすぎない。
わが国はG7の対露制裁への単なる同調ではなく主権の被侵害国として、主導権を取るべきではないか。
日本人は中国、北朝鮮も念頭に、国家主権や安全保障問題の根本を考え直すべき時だ。

 


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