あたかも天の声であるかのように見せかける匿名記事の意図
世論調査で足りなければ、識者の意見もしくは読者の意見といったようなものを記載することによって、マスコミは自分らの煽動が世論と合致しているということを強く印象づけようとする。
投稿者の場合にしても、その新聞の論調におおよそ合うような文章を投稿してくる、それが現実である。
マスコミを批判するような投稿が載せられることがあるとしても、それは、マスコミが公正中立な立場で世論に接しているということを偽装するためのものである。
実際、分量としても、その種のマスコミ批判は百分の一程度にすぎないのではないだろうか。
識者とやらにしても然りである。
たとえば、真剣な言論の舞台ではとうに発言力や説得力を失っているいわゆる進歩的文化人あたりが、「識者の意見」の発表機会を多く与えられるといった次第である。
なぜなら、彼らがマスコミ迎合的な発言をしてくれるからである。 誘導もしくは捏造された世論を背景にしてマスコミ世論を作り上げるというやり方をさらに強化するのは、日本のマスコミにおける「匿名」の方式である。
つまり、新聞記事には記者の署名がないということである。
匿名は二重の効果をもつ。
一つに、それを執筆している記者が個別に責任をとらなくていい。
つまり、たとえ間違った意見を発表したとしても、それを書いたものの人格がけっして批判されることのないようマスコミは自己防衛しているわけだ。
しかしそれ以上に重要なもう一つの効果は、匿名にすることによって、その文章があたかも「天声人語」であるかのように見せかけることができるということである。
つまり、署名をもたない天の声を、ということは国民の一般の声を、国民になり代わって新聞記者が代筆したにすぎないというかたちをとるのである。
読者の方は、新聞記者が記者個人の個別の意見であるとは受けとらない。
個人の意見ではないから反論は許されず、さらには天の声であるかのように言われているために反論することが罪であるかのように思われる。
そういう漠たる印象が与えられる。
つまり匿名はマスコミの無責任の表われであると同時にマスコミの傲慢の条件でもあるのである。
この稿続く。
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