文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

日本は残念ながら、外交の土台となる軍事力、特に敵基地攻撃能力がまったくありません。北朝鮮からすれば、日本は怖くもなんともない

2022年03月31日 17時25分11秒 | 全般

以下は2018年6月26日に発売された月刊誌WiLLに「米朝―会談か開戦か―」「何がカヤの外だ―」「トランプの対北強硬作戦」「主参謀は安倍首相」「日本はビッグプレーヤーだ。これからも」トランプをしてそこまで言わせた日本の総理はいたか。これまでなかったことが日本外交史にきざまれようとしている事実をナゼ見ない!
と題して掲載された、現役の新聞社の論説委員としては唯一無二と言っても過言ではない阿比留瑠比の論文からである。
彼は、戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之の後輩である。
幾つものタイトルに分けて2018年7月24日~25日に発信したのだが、全て検索妨害に遭っていた。
一つに纏めて再発信する。
見出し以外の文中強調は私。
正当に評価せよ 
六月に米朝首脳会談が予定されています。その中で、日本は「バスに乗り遅れる」「蚊帳の外だ」と批判されることも。たとえば、立憲民主党の辻元清美国対委員長の発言。 
「大きな緊張緩和に向けて動き出している流れに、安倍首相だけが『蚊帳の外』、日本政府だけが置いてきぼりになっているのではないか」 
その批判はまったく妥当ではありません。 
そもそも、これまで外交らしい外交をしたことがない金正恩が、どうして対話に乗り出してきたのか。
日本が主唱した経済制裁や圧力路線を、トランプ大統領が採用し国際社会をリードしてきたからです。
オバマ前大統領の時には「戦略的忍耐」と言って何もせず、北朝鮮を好き勝手にさせてしまったのですから。 
つまり、日本の主張をアメリカが取り入れて、そのまま動いているわけだから、もうその時点で“蚊帳の外”ではない。 
もう一つ、アメリカの北朝鮮政策は、大部分がトランプ大統領と安倍首相が相談し、「こうしよう」と共通の意思を持って進めているのです。 
トランプ大統領は、米朝首脳会談を板門店で行おうとしていました。
しかし、安倍首相が「板門店だとどうしても北朝鮮のぺースになるし、日本のリエゾン(連絡調整係)も現地に派遣できないので反対だ。シンガポールはどうか」と進言。
結局、シンガポールに決定しました。つまり、開催場所まで日本が主導しているわけです。
それを「蚊帳の外だ」と言うのは、まったく意味不明ではありませんか。
メインプレーヤーの日本 
そのような批判をする人たちは、安倍憎しの感情論に囚われているのか、安倍政権の外交がうまく展開していることをどうしても認めたくないのでしょう。 
外交に関しては、常にアメリカや中国、北朝鮮がメインで、日本は従属的な位置にあると思い込んでいる人たちもいますが、それは倒錯です。 
近年は日本がメインプレーヤーです。
実際に、安倍首相とトランプ大統領の電話会談でも、トランプ大統領は「日本はビッグプレーヤーだ。これからもそうだ」と評価しました。
特に北朝鮮問題に関しては、トランプ大統領は安倍首相のアドバイスで動いている。 
これまでの日本の外交史の中であり得ないことが実際に起こっていることを、真摯に認めるべきです。 
日本にとっ最重要課題である拉致問題についても、四月の日米首脳会談で、トランプ大統領は「拉致問題解決のために全力を尽くす」ということを記者会見の場で述べました。 
にもかかわらず、テレビを見ていると「米朝会談で本当に拉致問題が提起されるかどうかわからない」なんて言っているバカもいる。 
もし提起しなかったら、約束を破って有言不実行となり、恥をかくのはトランプ大統領の方ですよ。 
とにかく、日本が負けていなければ安心できない、安倍政権がダメでないと納得できないという、ある種の病的な心理が働いているのではありませんか。 
実際に目の前で起きていることを、もっと虚心に見た方がいいのではないかと思います。
北朝鮮問題を解決したい 
日中韓サミットが行われましたが、長年、意味のないサミットだと思っていました。ですが、今回は非常に有意義だった。
なぜなら、日中韓共同声明に初めて「拉致」についての記述が加えられたからです。
中国外務省はかなり抵抗したようなのですが、李克強首相が最終的にゴーサインを出しました。 
その前段、安倍首相と習近平主席で、初の電話会談がありました。そのとき、両首脳は拉致問題の早期解決に向けての協力を確認し合ったのです。 
金正恩が二回も中国に行って、臣下の礼を取っているのにもかかわらず、中国が拉致問題の解決に向けて提起した。
日中首脳間で認識を共有したのは、これが初めてです。 
さらに安倍首相と文在寅大統領の電話会談のときは、文在寅大統領が「もしかして私のことを疑っているかもしれないが、私は国連決議に従って実施している制裁を勝手に解除するようなことはない。信じてもらいたい」と強い口調で述べ、拉致問題解決に向けてあらゆる協力をすると言ったのです。 
確かに文在寅大統領の言うことを100%信用できない面もありますが、首脳会談でここまで言いきれば、それに反する行動は取りにくいでしょう。 
こういう各国首脳の一連の発言を見ても、北朝鮮問題を何とか解決したいというのが、共通認識になっているのは間違いありません。 
もちろん、トランプ大統領が拉致問題解決を要求しても、米朝首脳会談後に、日朝首脳会談を開催しなければ、拉致問題を進展させることは難しい。
当然、北朝鮮は拉致した日本人を返す場合の見返りも求めてくるでしょう。そこはタフな交渉が必要です。 
北朝鮮の『労働新聞』が、日本について「1億年たっても(北朝鮮の)神聖な地に足を踏み入れることはできない」と批判する論評を掲載しました。 
また、北朝鮮は米朝首脳会談の中止も示唆しましたが、動じることはありません。すべては金正恩次第であり、下っ端の言葉はどうでもよいのです。
拉致被害者の安否 
そこで問題なのが、拉致被害者の安否です。
ある政府高官によると「誰が生きているのか、さらに何人生きているのかわからない」のが実態であり、日本の情報機関でも状況を正確に把握できていないとのこと。
たとえ、そうだとしても、金正恩にしたら本当に自分の命が危ないと思ったら解放するはずです。 
第一、北朝鮮が首脳会談で約束したことを、いきなり反故にし、日米をはじめ国際社会を騙したとして得るものはなんでしょうか。何もありません。 
もし、アメリカが「騙された」と判断した段階で、北朝鮮の体制は保証されなくなります。トランプ大統領は軍事攻撃に踏み切るでしょう。 
現在の北朝鮮がノドから手が出るほど欲しいのは、経済制裁の解除と資金。それが具体的に取れるのは日本しかありません。 
日本は1965年に日韓基本条約を結んだときに、今の金額で1兆円規模という資金援助をしました。
北朝鮮もほぼ同額か、それ以上のものが取れると踏んでいるはず。
実際に日朝平壌宣言の密約の中で、1兆円規模の経済支援を約束したと言われています。 
抜け目のない北朝鮮が、日本からの資金援助を無駄にするようなことはしないはずです。
ラクダの平和 
アメリカがシリアに対して二度目のミサイル攻撃を実施し、イランとの核合意を破棄しましたが、北朝鮮への影響を考えると日本にとってはよいことです。
アメリカが本気になれば、いつでもミサイルを飛ばすと、北朝鮮への脅しになっているわけですから。 
日本は残念ながら、外交の土台となる軍事力、特に敵基地攻撃能力がまったくありません。北朝鮮からすれば、日本は怖くもなんともないわけです。 
確かに海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の空母化や、空対地ミサイルの長距離化などを進めていますが、これは画期的なことです。 
本来であれば、こういう動きがあれば、国会で大激論になるはずですが、まったく騒がれもせず、スムーズに審議されている。
なぜかといえば、国民自身が国際情勢を見て「当たり前だ」と思っているからです。 
ただ、現時点で日本が切れるカードは「金」しかありません。安倍首相もフジテレビの報道番組で「日朝国交正常化は極めて重要なピースだ」と述べている。
つまり、北朝鮮に対して暗にメッセージを送っているわけです。
もし米朝首脳会談がうまくいき「朝鮮半島の非核化」を共同宣言したら、それが意味するのは在韓米軍の撤退です。
米軍は政策上、核がどこにあるのか明言しません。 
そうなると、韓国に米軍が存在したら、そこに核がないことが他国にバレてしまいます。
しかも、トランプ大統領は商売人で、無駄な出費である在韓米車はさっさと撤退させたい。
文在寅大統領も、早く米軍は撤退してほしいと思っている。中国、北朝鮮は言わずもがなです。 
こういった要素を加味すると、段階的であれ在韓米軍の撤退は問違いありません。
その場合、二つ考えなければいけないことがあります。
一つは、撤退した米軍の半分は本国に戻ると同時に、東アジア防衛の観点から、もう半分は日本に移転するかもしれない。
そうすると、日本の負担は新たに増える可能性が出てくる。 
もう一つは、南北両国が、統一に向かっていく可能性もある。非核化された統一朝鮮が、どこの「核の傘」に入るかというと中国でしょう。
つまり、統一朝鮮は、当然、中国軍の影響下に入る。そうなると、今の38度線が、対馬海峡まで下りてくることになるわけです。 
ですから、今後1年2年で起こることは、日本にとって戦後初の安全保障上における大転換点になるかもしれないのです。 
それなのに、日本のマスコミは「木を見て、森を見ず」の状態のままです。
砂に首を突っ込んで現実を見ないラクダの平和を続けています。 
今、安倍首相という、トランプ大統領と世界一仲がいいトップがいて、外務省もやる気になっています。
6月、G7が開催されますが、そこで日米両国は緊密な連携を取るでしょう。そして、運命の米朝会談がその後に開催されます。
延期・中止の可能性はありますが、とりあえず開催する運びとなっている。 
こういう時期に“蚊帳の外”も何もない。日本はまさに当事者なんです。
不合理極まりない 
では、国会に目を転じると、一体何を審議しているのか。
相も変わらず、立憲民主党や国民民主党が、総理秘書官が学校法人の誰かと会ったか会わなかったか、ということばかり。
だいたい民間の学校法人が学部新設にあたり、内閣府や文科省の職員に面会を求めたり説明を聞きに行ったりするのは、むしろ当たり前のことではありませんか。 
むしろ、新しい獣医学部を作らせたくない日本獣医学会が政治連盟を持って、毎日のように石破茂さんや玉木雄一郎さん、福山哲郎さんなどに働きかけたり、百万円の政治献金を行ったりしている。岩盤規制を撤廃したい側ばかりが非難されて、守旧派の規制側が金までバラまいていることはどうして注目されないのでしょうか。
不合理極まりない。 
日本のマスコミも野党も、昔からそうだったと思いますが、近年さらに本末転倒ぶりが目立ちます。
今こそ「国益」を真剣に考えるべきだと思います。 
結局、NHKの世論調査では、安倍内閣の支持率が38%。この数字は歴代政権と比較してみても、低い数字では決してありません。
逆に言えば、何があろうとも、安倍内閣を支持する層が確実に三割いるという証拠です。
三選は堅い 
もちろん、支持しない層が五割いる状況は好ましいとは言えませんでも、それによって政権運営に支障が出るかと言えば何もない。
総裁選に関して、安倍首相三選の「暗雲漂う」とか、「黄信号が出ている」とマスコミで報道されますが、果たして事実を伝えているのか。 
自民党議員約400人のうち、安倍首相が所属する細田派、二階派、麻生派で195人います。
菅官房長官をはじめとした無所属で安倍首相を支持する層が30人。この時点で過半数を優に上回っています。 
竹下亘自民党総務会長が「総裁選で誰を支持するか、直前まで決めない」と発言しました。
いかに白分たちの派閥を高く売りつけるかという戦術ではありますが(笑)、石破さんに支持が流れるかといったら、青木幹雄さんあたりが支持に回ったとしても、大した数は流れないと思います。岸田文雄さんに関しては禅譲路線しかありませんから、結局、安倍首相支持に回るでしょう。 
こういった現状を踏まえれば、安倍首相三選は堅い。あえて言えば、完全に圧勝ムードだったのが、石破さんが善戦するかもしれない、という程度に変わっただけの話です。 
ところが、ある政治評論家は、「大型連休明けに安倍首相は電撃辞任するかもしれない」などとテレビでコメントしている。
「政治を本当に知っているのか」と聞きたくなります(笑)。願望を口にしているだけでしょう。 
ただ、三選したあと、三年間で安倍首相は退任します。その後の「安倍ロス」状態が本当に怖い。東京五輪終了と同時に、五輪景気も終わる。少子高齢化はますます進んでいます。
次期首相は大いなる難題に立ち向かわなければなりません。
 
モリ・カケ問題で国会を空転させているくらいだったら、「北朝鮮」と「少子高齢化」という二つの国難を真剣に議論すべきなのです。
危うい世論誘導 
ところが、マスコミをはじめまわりの人々は、安倍首相の足を引っ張ることばかりしている。
たとえば、小泉元総理は「総裁選の三選は危うくなったんじゃないか」という発言を公の場で繰り返しています。
客観情勢はたとえそうではなくても、世間の印象は「安倍さんはもう落ち目だな」と植え付けることができる。 
小泉さんの言動は最近とみにひどいのですが、首相周辺では「安倍首相の実績に対する嫉妬だろう」という声もあがっているほどです。 
小泉さんは5年総理を務めあげて、郵政民営化などそれなりの実績も上げてきたという自負があるのでしょう。
ところが、安倍首相がどんどん自分の実績を超えていってしまっている。嫉妬する気持ちはわからないでもありませんが、もう少し自重してほしいものです。 
NHKの世論調査で「安倍首相の人柄を信用できますか」という質問に、「信用できない」と答えた人が五割いる。
多くの人たちは安倍首相に直接会っているわけではないのに(笑)。
要するに、安倍首相をネガティブに報道することが功を奏しているとも言えるのです。
確かな判断力を 
そういう意味で、日本社会で正常な判断力が失われつつあるような気がします。 
財務省の福田前事務次官のセクハラ問題にしても、立場のある大人が言う言葉ではないことは確かですが、一方で、新聞記者やテレビ局、特に民放は、女性好きの政治家に対しては、必ず女性記者を担当にしています。 
山崎拓さんという有名な女性好きな政治家がいますが、私は1ヵ月間担当したことがあります。そのとき、民放の記者は確か全員女性だった。
しかも、その中の一人は山崎拓さんとかなり親密な関係にあると記者の間で噂されていました。 
そういう人事を過去にしておきながら、今になって財務省をセクハラ発言で抗議する。
これはどういうことでしょうか。 
ことの軽重と優先順位がわからなくなっている気がします。
一つ難癖をつけたら、その人間のキャリアをすべて奪ってしまっている。
これで国が良くなればまだしも、悪い方向に流れています。それは日本にとって、もっとも恥ずべきことではありませんか。


 


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