文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

信徒は怒り、彼女を襲って牡蠣の殼で体中の肉を削ぎ取って惨殺した。基督教は他の宗教を許さない偏狭さと残忍さを特徴とした。

2019年12月06日 13時06分00秒 | 全般

以下は昨日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
この論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである事を証明している。
法王と献金
ローマ皇帝コンスタンチヌスはネロ以来ずっと邪教扱いしてきた基督教の布教を初めて許した。 
当時のローマ帝国ではギリシャ神話の神々の他、中東のミトラ神、エジプトのイシス神、ユダヤ人が目の敵にしたバアル神などが自由に信仰されていた。 
それに基督教も晴れて付け加えられたわけだ。 
しかし信徒はそれで満足しなかった。
彼らは皇帝テオドシウスを焚き付けて基督教を国教にし、他の宗教をみな禁教とさせた。 
信徒はギリシャの神々を祀る聖地デルフォイを徹底的に破壊し、バアル神殿も旧約聖書でギデオンがやったようにぶち壊した。 
信徒が声高に「難病を治し、死人を甦らせたイエスの奇跡」を語り出すと、アレクサンドリアの美貌の哲学者ヒュパティアが「迷信を真実と教えるべきではない」と批判した。 
信徒は怒り、彼女を襲って牡蠣の殼で体中の肉を削ぎ取って惨殺した。 
基督教は他の宗教を許さない偏狭さと残忍さを特徴とした。 
教会が街の中心に建てられ、人々は毎週ミサに参列し、赤ん坊が生まれれば洗礼の儀式をそこで執り行った。
そのたびに高額の献金を教会は要求した。 
カトリックはとくに罪を強調し、高値で免罪符を売り出して儲けた。 
異端審問や魔女狩りも熱心に行った。
金持ちのユダヤ人が狙われ、親指を潰し、焼けた鉄の靴を履かせる審問で、魔女であることを自白させると火炙りにしてその財産を没収した。 
教会の総本山バチカンはアーミッシュを嫌った。 
彼らは聖書に生き、教会に行かなかった。
教会に来なければ献金も洗礼代も取れなかった。
だから彼らを見つけるとすぐ殺した。 
無教会主義を唱えた内村鎰三も時代が違えば殺される運命にあった。 
16世紀の日本にも狭量で残忍な基督教を伝道するイエズス会がきた。 
織田信長は「七宗が八宗になっただけ」とコンスタンチヌスのように認めてやったが、彼らはすぐ本性を現した。
高槻城に入った切支丹大名、高山右近は城下の神社仏閣をぶち壊して坊主たちを殺した。 
その狭量を秀吉がたしなめ、それでも改めないので家光が禁教にした。 
おかげで日本だけが不毛で残忍な宗教戦争の埒外にいられた。 
欧米がそれに気づくのは今世紀に入ってからだ。
ボストン・グローブ紙が130人の少年を犯した神父を告発し、それをきっかけに英仏独などで神父の性虐待がぞろぞろ明るみに出た。
基督教は狭量で残忍なだけでなく淫乱だった。
教会離れが急速に広がった。
結果、教会への献金が減りバチカンの財政も傾いた。 
法王が訪日したのは献金に繋がる新しい信徒の獲得にあった。
特に日本の信徒数は人口比でたった0.03%でしかない。 
実はマッカーサーも日本の基督教化を図り1500人の伝道師を呼んだほどだ。 
しかしサレジオ会の神父が痴情の果てに日本女性を殺害。バチカンが彼を国外に逃がしたこともあって信徒は減っていった。 
そんな過去がある。
法王はもっと慎重に事を運ぶべきだったが、来日前に大きな失敗をやった。
隠れ切支丹への対応だ。 
明治維新を前に隠れ切支丹が大浦天主堂に現れた。
いわゆる「信徒発見」だ。 
ただ、隠れ信徒は教会に帰る派と、ひっそり信仰を続ける派に分かれていた。 
法王は献金に繋がる教会派を「潜伏切支丹」と呼んで愛で、世界文化遺産にもなったが、そうでない「隠れ」は切り捨てられた。 
日本カトリック司教団の入れ知恵らしいが、この差別でバチカンのさもしさも透けて見えてしまった。 
法王は長崎、広島を訪れて核兵器廃絶を訴えたのはよかったが、なぜか東電福島の避難民にも会って原発反対を語った。    
9条の会や支那韓国とも通じる司教団。
恐らくは献金を山と積んで法王を政治利用したのだろう。 
そんな謀りをやるから基督教は嫌われる。
法王も後味が悪かっただろう。

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