以下は前章の続きである。
北朝鮮の工作に加担する言説に惑わされるな
現在の安倍政権は「被害者の『死亡』を裏付けるものが一切存在しないため、被害者が生存しているという前提に立って被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うよう求め(る)」という基本的立場を堅持している(政府拉致問題対策本部)。
北朝鮮は2002年から「拉致したのは13人だけでそのうち5人は帰国させ8人は死亡しているのでその証拠を出したから拉致は解決済み」と言い続けている。
しかし、彼らは死亡と通報してきた8人のうち誰についても死亡の客観的証拠を出せなかった。
2人分提供された遺骨も他人のものだったし、死亡診断書や交通事故調書も偽造されていた。
この点の詳細は政府拉致問題対策本部作成の「北朝鮮側主張の問題点」というパンフレットが写真入りで分かりやすくまとめている。
同本部のホームページにも全文アップされているから、ぜひ一度熟読して欲しい。
2002年の時点で死亡の証拠を出せなかったということは、その時点で生きていた可能性が高いことを意味する。
その上、北朝鮮内部から多くの生存情報が出てきている。
救う会のような民間団体でも横田めぐみさん、田口八重子さん、有本恵子さんらについてはかなり詳細な情報を入手できている。
それ以外の拉致被害者らについても生存情報は多数ある。
政府は救う会などとは比べられない豊富な予算と人材を使って情報収集にあたってきた。
すでに多くの生存情報が政府にあることは間違いない。
ただ、それが事前に漏れると北朝鮮が逆利用してくる恐れがあるから、絶対に秘密は守らなければならない。
政府は被害者を助けることを最優先にしているので、家族に対してさえ多くの情報を開示しない。
以上見たように米朝首脳会談前後から様々な謀略情報が出てきたし、それと呼応するような形で拉致被害者死亡とする北朝鮮側の謀略にのる合同調査や連絡事務所設置提案が浮上し、国交正常化後の拉致解決をとなえる議員らの活動も活発化している。
これらの背後には、日本から100億ドル以上のカネを取ろうと動き始めた北朝鮮の工作があることは間違いない。
彼らもこのチャンスにかけている。
しかし、現在までのところは2002年に死亡としてニセ証拠を提出した8人を含む全拉致被害者を返す決断はなされていない。
それなしにカネだけ取ろうとしている。
全被害者の即時一括帰国を実現するためには、まずこの謀略や工作との戦いに勝たなければならない。