文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

中国人にはもともと古き良きものを大事にするという観念はこれっぽっちもない。  

2022年01月24日 22時19分30秒 | 全般

以下は、2021/1/15に出版された高山正之の著作、変見自在 コロナが教えてくれた大悪党、からである。
この本もまた、彼の前著作同様、世界最高の本である。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
日本国民全員は、今すぐに最寄りの書店に購入に向かわなければならない。
世界中の人たちには、私が、可能な限り知らしめる。
本論もまた、彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである事を証明している。
見出し以外の文中強調は私。
口は出すがカネは出さない 

産経新聞が北京政府に支局を出してと頼まれたのはホンの一昔前のことだ。 
産経は朝日新聞と違って林彪の死も文革の酷さも正直に書いてきた。 
北京にとっては腹立たしい。
それで30年も支局は閉鎖されたままだった。 
それを世界が知る。
中国の脅しに屈しない産経の立派さに比べ、北京の狭量さと朝日の北京盲従ぶりがとかくの噂になって、北京もこれじゃあ具合が悪いと判断した結果だと思われる。 
産経の記者というだけで観光ビザも出なかった我が身も、晴れて北京辺りで物見遊山ができることになった。 
ただ中国語は話せない。
せいぜいマイタン(勘定)とプーヤオ(要らない)だけだ。    
だいたい中国語には品詞も時制もない。
昼飯が食いたかったら、我と食と欲と昼飯を適当に並べれば通じる。
歴史あるピジン語と思えばいい。 
石平氏によれば王維の「君に勧む更に尽くせ一杯の酒/西の方陽関を肝ずれば故人なからん」も日本語読みした方がずっと情感豊かになるという。 
それにそんな未熟語を覚えなくても北京には日本語を話せるガイドがやまといる。 
仮にそのガイドを江沢庵と呼ぼう。
江氏の話には結構な生活臭があって、例えば小皇帝の話題になると「我が子は苺牛乳です」と語る。 
江家の朝の食卓では息子が高い苺牛乳を、両親が普通の牛乳を飲む。
それほどわが子には贅沢をさせている、と。 
江氏は名のある家柄の出だった。
だから文革のときは子供心にも「大変だった」記憶がある。 
文革は毛沢東が劉少奇を妬んで若者をけしかけてやらせた公開粛清劇だ。 
劉少奇は拷問の末に殺され、彰徳懐は足を切り落とされ、鄒小平は下放され……と毛が憎んだ相手は悉く葬られたが、その副作用がひどかった。 
四旧、つまり旧(ふる)い思想や文化、風俗なども紅衛兵の攻撃の対象にされた。
毛は彼らに鉄道の無賃乗車の権利と食事と旅館を提供するように命じ、彼らは全国を旅して寺や史跡をぶち壊して歩いた。  
この中には空海が学んだ西安の青龍寺もある。
青龍寺は今、伽藍の一つも残っていない。  
楚の項羽が阿房宮を燃したように、唐の太宗が王義之の真筆をすべて墓に持っていったように、中国人にはもともと古き良きものを大事にするという観念はこれっぽっちもない。  
だから四旧打破も歯止めはない。
盧溝橋の欄干も壊され、敦惶の莫高窟(ばっこうくつ)にも、北京の故宮にも紅衛兵が雪崩れ込んだ。  
さすがに周恩来が彼らを宥(なだ)めて莫高窟の破壊を止めさせた。
朝日新聞特派員の秋岡家栄が礼讃し続けた紅衛兵の、これが偽らざる実態だ。  
四旧打破は市井にも及び、古書や書面を持っているだけで反革命と見倣され、下手したら殺された。  
江家も例外ではなかった。
「庭で親が泣きながら書画を焼き、景徳鎮の器を砕いて埋めていた」という。
そんな折、どうせ壊すならと海外の華僑が二束三文で買い取っていった。
在留外国人、例えば秋岡家栄やどこかの大使館員なども右に倣った。  
1990年代に上海に博物館ができた。
各フロアには文革で消滅したはずの貴重な陶器や書面が溢れていた。  
いずれも寄贈品で、陳列室の入口には寄贈者の名が記されている。  
事情通は言う。
彼らは海外在住の華僑で文革時にただ同然で多くの書画骨董を収集した。
それを今回は政府に寄贈した。
もちろんただじゃない。
見返りにはたとえば高速道路敷設とかの利権を得ている、と。  
19世紀、英船籍の海賊船が臨検されたのに英仏が因縁をつけ、2万人の軍隊が天津に上陸、項羽と同じように贅を尽くした離宮円明園を略奪して火を放った。  
このとき奪われたブロンズ製十二支の「子」と「卯」がパリで競売に出された。  
中国の反応が面白い。
奪われずに残っていたところで紅衛兵にやられて何も残らなかったはずだ。
「保存してもらって有難う」というのかと思ったら、俺のものだから返せと訴訟を起こした。
それが蹴られると別の中国人が最高額で落札して「でも、中国のものだからカネは払わない」。
折しも米国で売りに出たガンジーの遺品をインド人富豪が落札し、国に寄贈すると語った。 
日本でも米国のオークションに出た運慶の木彫を真如苑が買い戻した。 
毒餃子まで売ってカネ儲けする中国人は、こと文化財となると出すのは口だけ。カネは出さない。分かりやすい国民性だ。                              (2009年3月19日号)

 


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