以下は今週号の週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
この論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
*~*の注は私。
彼らは正義漢か
GHQは治安と防疫を与る内務省を解体し、警察庁と厚生省にした。
力を失った厚生省は霞が関養老院と呼ばれ、今回の武漢コロナ騒ぎではその名に相応しい働きだった。
GHQはもう一つ役所を解体した。
司法省だ。
ここは裁判所と検察庁を一括りに管掌していた。
三権分立から言えばおかしかったが、日本には古き良き伝統があった。
江戸の町奉行所では与力が検事と判事、時には弁護士も兼ねて事件を裁いた。
それで大方が納得する判決を下した。
大したものだとスウェーデンからきた植物学者カール・ツュンベリ
ーが感心していた。
しかしGHQは馬鹿だからツュンベリーを知らない。
司法省は解体され、最高裁が司法を与り、検察は法務省の下に置かれた。
ただ両者は戦後も判検交流とか言って行き来を続け、馴れ合い睦みあった。
検事が起訴すれば判事は無下に無罪にはしなかった。
それが昂じて今では検事求刑の八掛けが判決の相場になった。
ただ困ったことに検察は戦後、与力の心根を忘れて好きに権力を振り回した。
昭和25年、闇米屋が殺される財田川事件が起きると検察は近所の不良を捕まえて、自白とズボンの血痕を証拠に起訴した。
裁判官は検察の言うまま、死刑判決を下した。
しかし34年後の再審で自白もズボンの血も検察が捏造したものと判明した。
同時に血痕鑑定では東大法医学教室の古畑種基を抱き込んだ疑いも出て、古畑鑑定で死刑とされた他の二人も再審で冤罪と分かった。
角栄をお縄にしたロッキード事件も検事と判事の馴れ合いが生んだ許しがたい誤判だった。
発端は米上院小委員会が口社のピーナツ領収書を出した。
ただ出所不明だから証拠にもならない。
しかし地検特捜は「口社が角栄に5億円を贈って全日空に口社製エアバスを買わせた」という筋書きを創り、それに合わせて関係者を逮捕し自供を迫った。
全日空の若狭得治は「半日壁に向かって立たされた」と思い上がった法匪の横暴を語っていた。
しかしエアバスを売っても儲けは知れている。
対して口社の対潜哨戒機P3C取引は1兆円の儲けだ。
新聞が地検特捜の筋書きを怪しむと副部長吉永祐介は「P3Cと書いた新聞は出入り禁止だ」と脅した。
特捜は角栄逮捕の決め手として口社幹部に特捜の筋書きを供述させたいと最高裁に頼み込んだ。
しかし反対尋問なしの証言は証拠にならない。
そこを無理に曲げさせて最高裁は「口社幹部がどんなに嘘を言っても証拠とする」宣明書を出した。
後世まで残る最高裁・検察の不法談合だった。
吉永は記者に反対尋問なしの証言を証拠採用するいかがわしさを衝かれると「米国人は聖書に誓って証言する。米国人、嘘つかない」と真顔で答えた。
そんなインチキまでして角栄を逮捕して名を揚げたのが堀田力とか松尾邦弘とか。
堀田はのちに法務省官房長に、松尾は検事総長に登り詰めた。
大阪の地検特捜もそういう筋書きありきの手法で厚労省の村木厚子を逮捕した。
筋書きに合わない押収フロッピーディスクは当たり前に改竄した。
それがバレて特捜部長も副部長も逮捕された。
則定衛は無理に事件を捏造しなかったが、代わりに銀座遊興費をパチンコ屋につけ回し、ホステスと公費出張したり孕ませたりした。
検察は黙認したが『噂の真相』が暴いた。
検察官は仕事をしても閑居しても悪さをしてきた。
東京高検の黒川弘務の定年延長人事に堀田ら口事件検察OBが大反対した。
彼らを踊らせた朝日新聞は「三権分立否定につながる」と書く。
*この朝日新聞の意図も朝日と同調しているNHKのNHKのを支配している連中の意図も知らずに私達は彼らを正義の使者の様にして放映された報道を視聴していたわけである*
意味が分からない。
行政府が管掌する検察人事に介入するのは当たり前だろが。
検察は傲慢、放縦だけでなくここまで無知とは知らなかった。
日本の司法に泥を塗りまくった彼らが今さら正義漢ぶる姿は十分笑える。
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