文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

白鳥 赤羽正春〈著〉法政大学出版局・3675円…11/4、朝日新聞書評欄から②

2012年11月13日 10時05分14秒 | 日記
…前章続き。

白鳥処女伝説というものがある。

複数の白鳥が衣を脱いで水浴びをしている。

それを見た青年が一枚の衣を隠す。

衣を着られない女性は青年と結婚する。

その後のストーリーの展開は様々だが、誰もが一度は聞いたことのあるこの物語は、世界中に分布する。

そこで同類の話を比較すれば、白鳥が羽衣、つまり布に変換されることが知れる。

旧本において神に捧げる布は幣帛で天の羽衣は幣帛と重なり、日常の布が持っていた特別なちからも納得できる。

著者はシベリアのブリヤート人の村で、白鳥を起源とする人々に出会った。

つまり、帰れなくなって青年と結婚した白鳥の子供たちである。

人が生きるためには自然を受け容れ、動植物と共存しなければならない。

それを知っている人々である。

私たちもそういう人間であったはずだが、そのことをどこかに置き忘れたまま生きている。

それを痛感させられる本である。

評・田中 優子 法政大学教授・近世比較文化

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