映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

映画『山猫』 - IL GATTOPARDO - (ルキノ・ヴィスコンティ 1963年 イタリア/フランス)

2012年12月05日 05時08分05秒 | ルキノ・ヴィスコンティ
『山猫』 IL GATTOPARDO
1963年 161分 イタリア/フランス

監督   ルキノ・ヴィスコンティ KUCHINO VISCONTI
製作   ゴッフリード・ロンバルド COFFREDO LOMBARDO
原作   ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ
脚本   スーゾ・チェッキ・ダミーコ SUSO CECCHI D'AMICO
     パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ PASQUALE FESTA CAMPANILE
     エンリコ・メディオーリ ENRICO MEDIOLI
     マッシモ・フランチオーザ MASSIMO FRANCIOSA
     ルキノ・ヴィスコンティ
撮影   ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽   ニーノ・ロータ NINO ROTA

出演
バート・ランカスター BURT LANCASTER
アラン・ドロン ALAIN DELON
クラウディア・カルディナーレ CLAUDIA CARDINALE
パオロ・ストッパ PAOLO STOPPA
ロモロ・ヴァリ ROMOLO VALLI
イヴォ・ガラーニ IVO GARRANI
セルジュ・レジアニ SERGE REGGIANI
リナ・モレリ
ジュリアーノ・ジェンマ
オッタヴィア・ピッコロ
ピエール・クレマンティ







- 公爵 -
戦争が始まって妻は怯えていた.けれども夫の公爵は、妻をほったらかして愛人の元へ出かけた.彼の妻は敬虔なカトリックだった.「努力して子供を何人か作ったけれど、妻のヘソを見たことがない」と、懺悔をしろと言う神父に公爵は言い訳したのだが、いくら我慢が出来ない、楽しいSEXがしたいと言っても、戦争と言う情勢を思えば、不安がる妻をほったらかしにして愛人の元へ行く行為は、自分勝手で冷たい行為だ.




公爵の情婦、どう見ても上品には見えない女
  でも、ベットでは抜群なのかもしれない


愛の営みは、上品がよいのか下品がよいのか?


貴族の上品な愛の営み


自分も美しい人間だと言いたいのだろうか?
自分だって下品な愛の営みが好きな癖に、自分達は特別な人間だと言い張る

 革命でどうなるかとお尋ねすれば
   何も変わらんよと

- 戦争 -
肉親を吊るされ、泣き叫んでいた住民たちが、形勢が逆転したら、相手の者たちを吊るしてしまった.戦争には、憎しみ、冷たい心しかない.






世の中は大きく変わって行こうとしているのに、
   人間はどの様に変わって行くのか.....
      このような残酷な人間が、このままで良い訳は無いはずだ.

- タンクレディ -
義勇軍に参加しようとする時の、彼の考えは純真なものだったと思えます.そして、その当時は、コンテェッタに対する気持ちも、純真なものだったのでしょう.彼は戦争に参加して、生き残るにはどうすればいいか、負ける側についていたら殺されてしまう、と、考える内に、自分の利益を第一に考える、そんな考え方の人間になっていってしまったのでしょうか.優しい心の持ち主が、冷たい心の持ち主に変わっていた.舞踏会でコンテェッタは、彼に、あなたは変わった、と言っているので、私は彼女の言葉に従いましたが、公爵に言わせれば彼は野心家で、元からこうした人間だったようにも思えます.
義勇軍に加わった彼は、混乱に乗じて仲間を裏切り王政派についていた.彼は常に、勝利すると思われる側に身を寄せる、そうした考えの持ち主らしい.まあ、そこまでは許せるとしても、かつて仲間だった者達が処刑される事に対して、当然な事だと言い放った.身勝手にもほどがある.許されないほどの、冷たい心の人間になっていた.



















- ドン・チッチョ -
ウサギ狩の日、どちらに投票したか、彼は公爵に聞かれた.
「生活に困ったとき、王女に手紙を送ると、必ずお金が送られて来た.新しい王様が優しいかどうか?、時代が変わって、優しい王様が居なくなるのは反対だ」




- 成金のカロージェロ -
カロージェロは、ドン・チッチョの言葉によれば、『利殖にたけ、憎らしいほど抜け目がない』『新時代向けの、利口な人間だ』った.
公爵の言葉によれば、『公共の理想を掲げて、個人の利を求める者』だった.
そして官使に言葉によると、
『思想なき者の登場は困るのです.それは旧時代への後戻りになりかねません』
時代が変わってもなにも良くなることが無い、思想無き、進歩無き人間だったらしい.

彼の妻は、読み書きはもちろん話もろくにできない人間だった.けれども、すごい美人で、しかもベットでは抜群だと言う.カロージェロの妻は公爵の妻とは全く逆だった.
一方はベットでは下品で抜群の新興成金の夫婦の娘、他方はベットでは上品で妻のヘソも見たことがない没落しつつある貴族の夫婦の甥、あほくさい筋書きの結婚話である.
カロージェロは金を稼ぐためか、あるいは金を稼いだ自分への評価なのか、由緒ある名門家の家名を欲したようだ.タンクレディは野心を実現するために金を必要とした.アンジェリカとタンクレディ、二人が互いに好き合った結果ではあるが、欲望と欲望の絡み合った政略結婚だった.

カロージェロの妻は、ペッペと言う貧しい農民の娘だった

読み書きはもちろん、話もろくにできない
  自分の娘をかわいがりもしない
    ベットでは素晴らしい
      他の事は一切できない


2人が駆け落ちしてから2年後に
  12発の弾を背中に受けたペッペの死体が
カロージェロ選挙結果を自分の都合に合わせて改竄する人間.
  妻の生まれをごまかすために、父親を殺したのだろうか.


- 政府の使者 -
中央政府の使者は、政府の推薦によって公爵が議員になり、シチリアの住民の声を政府に伝える役目をするように勧めたのだった.けれども公爵は、その要請を断った.
獅子と山猫は、王様と貴族.「山猫は山猫だ」とは、貴族は貴族だ、変わらないと侯爵は言い張った.
議員になって住民の声を政府に伝える事は、住民の代表として住民に奉仕することなのだが、けれども公爵は、現在の住民に奉仕させる貴族から、変わるつもりはないと言い張った.



『トリノの政府はシチリアの名士数名を』
  『上院議員に推薦しようと考えたのです』





けれども公爵の答えは、明るい未来への希望ではなかった.
  『我らが身を委ねている甘い怠惰な時の流れも』
    『官能的な死への欲求なのだ』



公爵は、このようなシチリアの貧困の現実に、何も想うことはなかったのか.....

『獅子と山猫』
獅子の方が、気品のある呼び方なのでしょうか.分かりやすく、ライオンと山猫.
どちらも、自分で獲物を捕まえて食べる、動物です.
『ハイエナとジャッカル』
ハイエナは、ライオンの捕まえた獲物を横取りしたり、食べ残した獲物を食べる動物です.
ジャッカルも、他の動物の、食べ残しを食べるらしい.

自分たちは自分で獲物を捕まえて食べてきた.そうした時代が、やがて、自分たちの食べ残しを食べる者たちの時代に変わるだろう.
公爵は、高貴な者が支配した時代が、下品な者が支配する時代に変わる、と、時代が変わることを蔑んで表現した.
言葉の通り成金のカロージェロ、そしてその娘は下品だったが、その自分が蔑んだ下品な者達との婚姻によって、下品な者達の金の力によって、上品であり続けようとするこの公爵の考えは、愚劣そのものと言わねばならない.


使者は、こんな貧困の状態を新しい政治が全て変えて行くだろうと言ったのだった.
けれども公爵は、
  『続くべきでないものが永遠に続く』
  『人間の永遠など知れたものだが』
  『変わったところで良くなるはずもない』
そして

『ジャッカルやハイエナが取って代わる』
  『そして山猫も獅子も、またジャッカルやハイエナすらも』
      『自らの地を塩と信じ続ける』


- 延々と続く舞踏会 -
誰でも嫌になるほど、ヴィスコンティは舞踏会のシーンを続けました.いい加減に終わったら、と、言うほどに続けた.つまり、こんな社会を終わらせなければいけないのだ、と.

優しい心を失ってはならない.
支配し服従させる貴族の時代は、冷たい心の時代であった.けれども、貴族の時代が終わり新しい時代に変わっても、残念ながら冷たい心は、成金たちの時代に引き継がれて行く事になった.
けれども人々は優しい心を失わず、優しい心によって冷たい心の時代を終わらせて、新しい時代を築いて行かなければならないのだ.


貧しい農民の暮らしからは信じられない、
     別世界がそこにあった.















そりゃ、まあ、これだけお金が有れば、不幸では無いはず.




公爵は死んだ人間にはひざまづくが、生きた人間、貧しい農民には下品と蔑む人間だった.
『我らの願望は、忘却だ.忘れ去られたいのだ』
眠りを求め、何も変わろうとしない.公爵の考えは生きた人間ではなく、死んだ人間の考えであった.




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。