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ヘビー・ローテーションのピアノ・トリオ三題

2007年11月03日 | Jazz
キース・ジャレットの『マイ・フーリッシュ・ハート』(ECM)とイリアーヌの『サムシング・フォー・ビル・エバンス』(somethin'else)、そしてチック・コリアの『ドクター・ジョー』(Universal)というのが、このところ我が家でのヘビー・ローテーションとなっているピアノ・トリオ三題だ。聴いていて、とても気持ちがいい作品群で、音もとても興味深い仕上がりとなっている。
まずは、キース。なんといっても2001年のモントルー・ジャズ祭の音源ということで、その日のコンサートがしっかりと収められているのがとてもいい。曲順がよく考えられていて、聞き飽きません。その曲順なのだが、僕の推測では演る曲(板にかける曲:順不同)は最初から決まっていたはず。しかし演奏する曲順は決まっていないというのがいつもの通りだったと思う。また会場はモントルーで一番大きなホールであるストラビンスキー・オーディトリアムで収録されている。しかしながら拍手の音は、抑えめだ。前の方に座っている人達の拍手しか入っていないような音と言えばいいだろうか。また過去のスタンダーズのライブ作とは違って、かなりオンな音作りがジャズ・ファンの琴線を刺激してくれる筈。エンジニアはMartin Pearson。ヨーロッパのロック系のエンジニアで、モントルーお抱えエンジニアの一人だ。なおアルバムのインナーにもまるで書かれていないのだが、アドバンス・シートを見るとやはりヤン・エリック・コンシャウスがしっかりマスタリング・エンジニアを務めている。というわけでしっかりECMの音にはなっているのでご安心いただきたい。
成田さんのオーディオ的チェック曲は、1曲目の<フォア>だが、私は2曲目の表題曲である<マイ・フーリッシュ・ハート>。ルバートして弾き始めるキースのソロでまずは定位をチェック。それにしてもいいスタインウェイ(ハンブルグかな)を使ってますねぇ。そしてご存じ3度、6度チューニング(通常のピアノは4度、5度チューニングでこの3,6度チューニングをすると音場が広がって、響きと表情が豊かになる)。そしてベースとドラムスがインしてくる瞬間のフェーダーの動きや、各楽器のパースペクティブなど聴き所が満載なのだ。ジャックのバスドラの響きが気持ちよく決まらないと駄目駄目です、ハイ。といいつつ我が家では、ゲイリーのベースに今ひとつインパクトがない。もう少し厚めに鳴ってくれれば満点なんだけれど・・・。
さて、イリアーヌである。久々に彼女のピアノを聴いた。素晴らしい。ましてやエバンス集である。私的には言うこと無しの満点かな。各曲の演奏時間が短めというのも、言いたいことを言い切って終わるという潔さがあっていい。もちろんイリアーヌのボーカルも素敵であります。それにしても某ミュージシャンからベーシストに夫を変更するっていうのは、ボーカリストには良くあるパターンです。羨ましい限り。で、そのマーク・ジョンソンのベースがエンリコ・ピエラヌンチィなんかとやっている演奏と音的にも別人かと思うくらい違っている。ハラハラドキドキ系で弾いているように感じるのは僕だけでしょうか? (閑話休題)
とにかくエバンス・ファンが聴いても文句がでないであろう素晴らしい出来ではないかと。それにしてもイリアーヌってのは盤によってスタイルが違うというのは驚き。結構器用な人なんだろうなぁ。で、本作の白眉は、2曲目の<サムシング・フォー・ユー>。名曲です。とても素晴らしい出来です。本作は全曲とも聴き飽きません。ボーカル曲と演奏曲が絶妙に配されています。曲順を決めたプロデューサーに拍手です。さて音です。一転キースの音とは違ってスタジオの音。それも結構端正な音作りに好感度大。ピアノの音もとても良くて、きっといいピアノなのでしょう。響きも巧く録れており、難を言えばボーカルのお口が大きいことと、ベースがややオフ気味。そうそうドラムスももう少しヌケたほうが、メリハリが付くような気もしますが、この音作りは嫌いではありません。それにしてもBGMに聴いても良し、集中して聴いても良しという作品には滅多にお目にかかれないので、この盤も必聴&オススメです。
ラストは、チック・コリア。うーん、この人多作で知られますが、それにしてもトリオで5枚をリリースするというのですから、立派。今回は5枚組を購入するのがベストかと思っています。とある筋から聞いた話によれば、ボックスで発売される(単一CDではリリースされない)音源がどうやらベストな演奏だと漏れ聞きました。とはいえチック好きということでやっぱり待てないので、購入しちゃいました。普通のジャズ・ファンは、5枚組をどうぞ。え? 5枚組買うのは普通のジャズ・ファンじゃないって? まぁ、その通りですけれどね。
というわけで、バーニー・カーシュによる録音の1枚なわけですが、今回のスタジオは、東海岸に出来た新しいマッド・ハッター・イースト(フロリダ州クリアウォーター)でのレコーディングです。西のマッド・ハッターより僕はこちらの音の方が、好み。今回の方がピアノの音が伸びやかに聴こえます。まぁ、ヤマハのピアノもたぶん新しいし、機材も新しい。そんなフレッシュな音がこの盤はします。ただし、聴いた感じはこのスタジオ狭いんじゃないかと感じてしまったのですが、いかがでしょうか。
どの曲のプレイもコリア節が満載ですが、僕的には最後の3曲が素晴らしいと思いました。とてもいいバラードかと。いずれにしてもコリア渾身の曲がビッシリ入っているので、まさにコリア集の趣。最初この盤を聴いた時には正直違和感があったわけですが、いまはまさにヘビー・ローテーションのピアノ・トリオ盤となりました。そうそう、今回の5枚というのはこの作品と5枚目の若手とのもの以外は全てライブなんですね。故にどうしても音的にスタジオ収録のものが聴きたかった一枚なわけです。これまたオススメの1枚ですね。


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