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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

ペイルライダー

2006-01-22 10:38:08 | ビデオ・DVD・テレビ放映での鑑賞
クリント・イーストウッドの「許されざる者」以前の映画は、結構好きだったりもするけど、許され・・以降と比べれば評価は低くなりがち。評価されようなどと全く考えないで作ってるフシがあるので、それでいいんだろうけど、許され・・以降の「スペース・カウボーイ」だって「トゥルー・クライム」だって評価されたくて作ってるとは全く思えないのに自然と大傑作になっちゃうわけである。

ところで、「ペイルライダー」
許され・・以前の1985年の映画だが、これはめちゃくちゃ面白かった!!
ただし、評価されたくて作ってるような、無理して崇高な映画にしようとしてる感じを受けなくもない(同時期の「バード」と同様)。背伸びを止めたというか、ふっと達観しちゃったのが「許されざる者」なのかなぁ

でも、イーストウッド流の遊び心も満載。
イーストウッドの牧師が、悪党どもをぶちのめすシーン
化け物みたいにでかい奴が、岩を砕くシーンの面白さ(敵だったはずのそいつと、後に友情まで芽生えて)
父と孫娘くらい年のはなれた女(15歳の設定!!)に熱烈に求愛される、自信過剰な演出(セックスは結婚してからだよみたいな説教を淡々とする面白さも)
クライマックスの対決シーンも最高にかっこいい

娯楽時代劇としてはこれ以上ないほどの出来上がりで、深夜1時から見始めたのに全く眠くならなかった。

イーストウッド監督の娯楽系作品から漂う無邪気さが好きだ。
「ブラッドワーク」「トゥルー・クライム」「スペースカウボーイ」「目撃」「ルーキー」「ハートブレイクリッジ」・・・
イーストウッド監督のシリアスドラマから漂う気品が好きだ
「ミリオンダラーベイビー」「ミスティックリバー」「真夜中のサバナ」「マディソン郡の橋」「許されざる者」

「ペイルライダー」は両者の要素が絶妙なバランスでミックスされた映画のように感じる。

ところで、イーストウッドが演じる「牧師」。イーストウッドが牧師ってところが笑えるし、牧師が喧嘩にめっぽう強くて、銃さばきが華麗で、女にもてまくる、というところが爆笑ものだが、ま、それはいい。
この「牧師」だが、明らかに死者あるいは亡霊のイメージで演出される。
・誰かが「牧師」を遠巻きに見るショットでは、牧師はすっと現れ、すっと消える
・飼い犬を殺された少女が墓で神に祈っていると、シーンが代わり牧師が初登場する(墓・神・)
・ライバル保安官が「もし、あいつなら・・・いや、人違いか・・・あいつは殺した」とか言う。(ラストの対決で2人はほとんど無言で撃ち合うので、2人の関係性はわからずじまい)
「許されざる者」以降、贖罪のため残りの人生を惨めに行き続ける男を描いていくイーストウッドであるが、85年のペイルライダーの時点でもう死んでいた。

デビュー作「恐怖のメロディ」なんかは、"普通に死を恐れている男"だった。
80年代くらいまでは"死が怖くない男、死んでもいいやって男"だった。
「ペイルライダー」が例外的に、"死を覚悟した男"だった。
「許されざる者」以降は、"生きる覚悟をした男"になったように思う。

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