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ある公爵夫人の生涯 [監督:ソウル・ディブ]

2009-06-08 01:02:19 | 映評 2009 外国映画
個人的評価: ■■■□□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

19世紀初頭ごろ、ダイアナ元妃のご先祖さまにあたるジョージアナ・デボンシャー公爵夫人の生涯を描いた本作。
ファッションリーダーとして人々から愛されていたが、その夫は浮気がちで公然の秘密の愛人がいて、ジョージアナ死後はその愛人と再婚したという。「あらあら、まるでダイアナとチャールズとカミラ夫人みたいじゃありません? 歴史はくり返すんですわねえ・・・」と思わせることが最大の企画意図だったのであろうが、その辺考えずにただのドラマとして観ると、別にどうということもない昼メロ的な、浮気に苦しみ、不倫に溺れ、子を愛した平凡なドラマとしてしか写らない。
セットと衣装の豪華さにセレブ感を味わえるところが昼メロとの決定的差だが。

そんな作り手の意図とは無関係に私がこの映画を観に行った主要な動機は「世界一エロい60代」シャーロット・ランプリング姐さんを観たいがためであった。
あの人を見下したような所作といい、感情を押し殺した芝居といい、貴族の女を演じるにこれほどハマる方は他にいないのではないか・・・そんな期待で観に行くとなんとキーラ・ナイトレイ嬢の母上という設定。いったいどんなことしてくれるのか、と期待は高まるのだが・・・ただ冷たいだけの女で、見せ場も無く、出番も少なかった。
ランプリング姐さんなら史実なんか知ったことかと、レイフ・ファインズと肉体関係もつとかそれくらいの活躍させてほしかった
この世界にランプリング姐さんを使いこなすことの出来る監督はフランソワ・オゾン唯一人なのか???と絶望的気分を味わうもったいないキャスティングであった。興味ある方はレンタル屋で「まぼろし」と「スウィミング・プール」を借りるべし

さて、そんなマニアックな期待ではなく、世間一般が期待することは若きコスプレ女王キーラ・ナイトレイ嬢の活躍であろうが、これもまた困ったことにただ叫ぶ程度の薄っぺらい胸じゃなくて薄っぺらい演技。名優っぽさを見せつけるにうってつけの演説シーンも用意されているが、演説時間はかなり短い。ブラッカイマー映画で鍛えた対術を披露するべくレイフ・ファインズに犯されそうになるのだが、襲われてもさしたる抵抗もしない。民主主義を標榜しつつも女性参政権には懐疑的な政治家と論戦する場面にかろうじて現代的ヒロインらしさが出ているが、後はどこをとっても古くさいヒロインで、魅力的と感じる部分が乏しすぎる。同じ女優を格段に魅力的に描いたジョー・ライトとかトニー・スコットといった監督たちがいかに非凡な方々だったのか改めて思い知るのである。

音楽(レイチェル・ポートマン)も曲自体はよくても無駄にこれでもかと盛り上げる。キーラの叫びのように、ただギャンギャン鳴らせばいいと思っているかのように。
こういうどストレートすぎてやかましい演出のせいで、セットや衣装の豪華さに酔いたい気分も、芸達者な俳優たちのパフォーマンスも音楽も・・・随分無駄にしている

では、この監督さんの演出に見るべきものが何も無いかと言うと、そんなこともない。
序盤における「19世紀のイギリス」という異世界に観客を自然と引き込むところは凄いと思う。
特に秀逸なのが序盤でのレイフ・ファインズとキーラ・ナイトレイの初夜のシーンである。
レイフが「女性の服はなんと複雑な作りなんだ」と述べながら、キーラの服を一枚一枚剥がしていく。
このあたり、単に見た目の豪華さ・華麗さだけを魅せるのではなく、当時の衣装のメカニズムまで見せてくれて好感が持てるのだが、何より秀逸なのはその次。
全裸になったキーラ嬢の背中のアップ。肌に食い込みみっちり残るコルセットの跡。視覚だけでなく触感的な画により、我々に19世紀の世界を疑似体感させてくれ、それにより作品世界に自然に吸い込まれていく。
胸の薄さを露出度でカバーするかのように若くて人気なのに脱ぐのも辞さないキーラの女優としての姿勢と、演出とが結びついて見事な導入部が出来上がったのである。

それから面白かったのはキーラが家に乗り込んできた愛人に決別を告げるシーンである。愛する男より我が子を選ぶ女の決断に際して、女の強さと男のガキっぽさが対照的で面白かった。

[追記]
久しぶりにレイフ・ファインズの陰気陰湿ちょっと変態演技が見れたのは儲けもの。
史実なんかどうでもいいから、最後にレイフに怒りのキーラパンチをぶちかますシーンがほしかった。それくらい観ていて気分が悪くなる小物悪人を好演。うまいんだなあ。
シンドラー、レッド・ドラゴンとあわせてレイフ陰湿悪三部作と呼ぶことにしよう。

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